コント『自販機ソムリエ田中さん』
温泉、気持ち良かったなぁ〜。
あとは…帰りに《レトロ自販機》に寄ってみよう。楽しみだ!
ここかぁ。TVで見たのとおんなじ。
良い雰囲気じゃないか。昭和っぽい。
“ウィ〜ン”扉が開く。
「いらっしゃいませ。」
お店の方ですか?
はい。わたくし、ここの『自販機ソムリエ』をしている田中と申します。
お客様、小銭はお持ちですか?
あ。はい。
新紙幣の両替が、まだ機械では出来ませんので、私に申し出て頂けると助かりますので、宜しくお願い致します。
はい。分かりました。
では、ごゆっくりお楽しみ下さい。
あっ。これは、「うどんと蕎麦の自販機だ!」レトロだなぁ。
え〜っと。一杯350円と。
〈小銭を手に取る〉
「お客様〜お待ちくださ〜い!」
はい?
こちらの自販機、大変壊れやすくなっておりますので、わたくしが、お金を投入させて頂きます。宜しいでしょうか?
あっ。はい。
じゃあ、350円ね。
うどんと蕎麦はどちらが宜しいですか?
じゃあ、「うどん」で。
はい。かしこまりました。
〈お金を入れる〉
チャリン………チャリン……チャリン…チャリン
では、ボタンは僕が…
いや。お客様、ボタンも私の方で押しますので、お待ち下さい。
え〜そうなの?
田中は、やさ〜しく、ゆっくり押した。
タイマーの表示が出た。
60…59…58…出来上がるまでの時間なのね。
作用でございます。
出来上がるまで1分程でございますので、少々お待ち下さい。
〈二人でタイマーを見つめる〉
なんか、気まずいんだけど…
自販機って自分でお金入れてボタン押すのがメインじゃない?
なんか、ワクワクの半分を取られちゃったみたいだよ。
男は、口にはださずに心の中で思った。
では、うどんが出来上がりましたので取っ手口を開けて、そちらのテーブルで、お召し上がり下さい。
はい。わかりました。
男は、テーブルでうどんを食べ始めた。
田中さん、『自販機ソムリエって何ですか?』
お客様、少々遅いでございますよ。
変だなぁとは思ったんですけど、流しておきました。
ここの自販機、全て古いでしょう。丁寧に、扱わないと直ぐ壊れてしまうんです。
大変なんですねぇ。まだお若いのに、お店開かれて長いんですか?
いえ。僕、バイトです。
へ?
“ソムリエ”も自称です。あるわけ無いじゃないですか〜。
そうなの?
はい。でも僕、ここに置いてある機械、全てのお金を入れる速さ、ボタンを押す強さを把握しているんです。
時々、お客さんで目を離した隙にパチンコのスロットにメダルを入れるような速さで入れてしまって、壊れてしまった事がありました。
だから、それを無くしたいと思って“ソムリエ”になりました。
でも自称でしょ?
はい!
変わった人だ。
じゃあ、次は何にしようかな〜?
かき氷があるじゃないか。
田中さん、これも?
はい。200円お預かりします。
じゃあ、お願いします。
シロップは何にしますか?
じゃあ、イチゴで。
はい。
チャリン…………チャリン…ポチッ。
「あ〜やりたい。ここのボタン押す所やりたい。押したいよ〜」
で。また一緒に待つんですよね?
はい。
出来上がりましたので、お取り下さい。
「いただきま〜す。」う〜ん。冷たくて美味しい!
じゃあ、最後は…『おみくじ』にします。
これ、やりたいです。
はい。これは100円入れるだけで出て来ますので、ご自分でどうぞ。
いんですか〜。
〈100円を投入〉
丸まった『おみくじ』がポトンと落ちてきた。
やった〜田中さん!大吉ですよ!!
あら。良かったですね。
それ、僕が作った『おみくじ』です。
全部“大吉”となっております。
〈終わり〉
コントになったか分かりませんが、お読み下さり有難うございました。