小説【自販機ソムリエ田中さんと少年の夏の思い出】
「お母さん、今日は夕方まで仕事だから、お昼は、あそこのレトロ自販機で食べてちょうだいね。」
「はいこれ。1000円あげるから、残ったらゲームしていいわよ。」
うん。わかった~。
田中さんにも宜しく言ってちょうだい。
うん。
「いらっしゃいませ」
今日は、お母さんは?
夕方までお仕事だから、お昼はここで食べなさいって。田中さんにも宜しく言ってたよ。
そうでしたか。
じゃあ、今日は何食べますか?
う〜ん。ラーメンにしようかな。
はい。じゃあ、お金お預かりしますね。
取り出し口、熱いからテーブルまで持っていってあげますよ。椅子に座ってて下さい。
うん。ありがとう。
日焼けして真っ黒ですね。プールに沢山通いましたか?
うん。僕、泳ぐの大好きなんだ!
でね、この前、市民大会があって出たんだよ。
それは凄い!
でも最下位だったんだ…。
それは残念でしたね…でも大会に出れた事が凄いし、練習も沢山したんだから偉いですよ。
私なんて泳げないんですから。
え〜そうなの?
はい。
何の種目で出たんですか?
それが…僕の得意な平泳ぎじゃなかったんだ。
どうして?
皆んな、クロール、平泳ぎ、背泳ぎまでは出来る子が多いんだけど、バタフライは出来る子が少なくて…
でね、僕、スイミング行ってるから先生に、バタフライで大会に出て欲しいって言われちゃって。
断れなかったんだね?
うん。でも本当は、平泳ぎで出たかったんだ。
でも、大会で平泳ぎの選手見てたら、皆んな僕より速く泳げる子ばっかりで…出たとしても順位は下だと思っちゃったんだよね。
で、納得したの?
ん〜何かよく分かんない。
ゆっくり、考えたら良いさ。
また来年、大会に出るとしたら自分の得意な方で出たいです!って先生に言ってもいいし。もしかしたら、違う好きな事が出来るかもしれないし。
今日は楽しんで行ってよ。
ほら。ラーメン冷めちゃいますよ。
うん。いただきま〜す。
〈終わり〉
最後まで読んで下さり有難うございました。
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