厚藤四郎に会いにいく。
私は短刀が好きだ。
刀剣鑑賞を趣味にして日が浅く、まだ、沼の淵にいる状態だが、いくつかの刀剣を見てきた。
長船の華やかな丁子乱れ、古青江のスラッとした刀身、大包平の優美さなど心を奪われたものは数多くある。
中でも、粟田口の短刀は小ぶりの可愛らしさの中に「凛」とした美しさがあり、とても気に入っている。
さて、この粟田藤四郎吉光、短刀の名手と呼ばれ、多くの短刀が残っている人物。
刀の本を読むと出てこない事がない、貴重な人物ではなかろうか。
私もいくつか自分の目で見る機会に恵まれている。
後藤藤四郎、前田藤四郎、五虎退などどれも各々に魅力溢れる刀であった。
今回、見に行く事ができた厚藤四郎も違わないものである。
厚藤四郎は寸法は常だが、地鉄と刃文は抜群であると評される事もある。
鎧通しということなので、他の粟田口よりはゴツめのものだろうかとイメージをしていたが、パッと見は他と違わず小振りであった。
しかし、少し視点を変えてみると厚みが他とは全く違っていた。
展示も厚さを確認しやすくなっていたのではなかろうか?
そして、評判どおりの地鉄と刃文の綺麗さが目につく。
板目がよく詰んで中直刃の「これぞ、刃物!!!」と思わせるような感じがした。
全体的に爽やかな印象と、重ねの厚さのギャップがステキな短刀であった。