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【お仕事図鑑 vol.15】 法務の仕事について〜業務内容からキャリアパスまで解説!

企業活動を法律の面から支える法務。法治国家でのビジネスには欠かせない存在です。
契約や業務上のトラブルが起きた時に「法務に相談(報告)!」と上司から言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。

今回は法律の面から自社を守り、支える法務の仕事について解説します。食品業界に関わらず、職種に興味のある方はぜひご一読ください。

法務の仕事とは?

法務の仕事は、一言で言えば「法律を用いてトラブルの予防と解決を図る」ことです。

法務の仕事は、「予防法務」、「臨床法務」、「戦略法務」の3つに分かれます。
予防法務は、企業活動における法的なトラブルを未然に防ぐための仕事で、契約書の作成・確認や、社内規定の整備、コンプライアンスチェックなどがあります。
臨床法務は起こってしまったトラブルへの対応で、紛争・裁判対応や、ハラスメント通報への対応、クレーム対応などがあります。
最後の戦略法務は、経営戦略を実現するための法務で、M&Aに関わる契約・法的対応や、海外進出に伴う各国の法規制の把握と対応などがあります。

具体的な法務の仕事としては、以下のようなものがあります。

  • 契約書の起案・チェック

  • コンプライアンス・社内規程の周知

  • 株主総会や取締役会への対応

  • 知的財産権の管理・保護

  • 紛争や訴訟の対応

  • 労務サポート

  • 法律相談の対応

  • 法令調査・法改正への対応

なお、冒頭の分け方とは別に、法務業務を領域に分け、コンプライアンスや株主総会への対応などの社内に関わる法務を「商事法務」ともいいます。

契約書の起案・チェック

法務の仕事として最もイメージしやすい業務ではないでしょうか。
企業活動を行なう上では、秘密保持契約(NDA)や、取引先との取引内容を規定する売買契約書(基本契約書・個別契約書)、ライセンス契約書、労働者と交わす雇用契約書などさまざまな契約書を締結します。

契約書のチェックでは、法律違反になるような項目や、自社に不利益をもたらす項目が無いかを確認します。

契約業務に携わる場合は、契約書の内容確認から経験を積んだ後、個別の契約書の起案や自社の契約書の雛型の起案など、徐々に重要な契約書を1から作るようになっていきます。

コンプライアンス・社内規定の周知

従業員向けの仕事で、会社法や労働法などに基づき、社内規定の作成や研修の実施、相談窓口の設置・運営などおこないます。
法律は頻繁に改正されるため、最新の法律に則った事業運営ができるよう、必要に応じて社内規則への反映や従業員への周知をすることで、法令と企業倫理の遵守を徹底させます。

株主総会や取締役会への対応

機関法務や組織法務とも言われ、株主総会や取締役会の実施に関する仕事です。

これらの会議体は、会社法で招集手続きや実施期限、議事録の方式などが決まっています。
法令とは異なる手続きをとってしまうと、決議の取り消し・無効になることがあるため、自社だけでなく株主などのステークホルダーにも損害を与えてしまうリスクがあります。
特に上場企業や上場を考えている企業にとっては、重要な法務の仕事になります。

会議隊の運営は総務の仕事でも紹介しましたが、総務が事前の招集や当日の司会といった実運営を担うのに対し、法務では法律に則った開催ができるよう、仕組みや業務フローの部分で支援します。

知的財産権の管理・保護

知的財産は、企業が独自に持つ無形の資産で、特許、意匠、商標、実用新案の4つがあります。
メーカーやSIerなど技術開発に積極的な業種では知財部がありますが、そうでない場合は法務部で知的財産権の取得や管理を行い、権利の活用において他社とライセンス契約を締結することもあります。

近年は海外などからの模倣品や、元従業員の技術情報の漏洩などの問題が発生しており、こうした問題を予防するためにも重要な業務です。

紛争や訴訟の対応

社内外で起こったトラブルに対し、法務は顧問弁護士や社内弁護士と連携しながら紛争や訴訟の解決に取り組みます。

紛争の内容としては、権利侵害や損害賠償請求といった他社との問題や、ハラスメントなどの従業員同士のトラブル、顧客のクレーム対応など、幅広い種類があります。
いわゆる新聞やニュースになることもある、過労死や商品による健康被害、模倣品の流通などがわかりやすいかと思います。

労務サポート

労働や雇用問題への法的対応も法務の仕事です。
例えば雇用契約書の内容や就業規則が労働基準法等に沿っているか、労務管理のあり方が労働基準法に違反していないか、などのチェック業務を行ないます。

また、残業代未払いや、過労やハラスメントによる健康被害に関する問題、ハラスメント相談窓口に相談が来た時の対応なども担います。

法律相談

法務部では、経営層や事業部からの法律相談も受けています。
新規事業を始めるにあたり、独占禁止法違反や他社の特許権侵害の恐れがないか、海外事業において現地の法律をどう解釈したら良いか、など事業に関わる法律相談に応じます。
細かなところでは、紛争の種になりそうな取引上のトラブルや、労働問題など多岐にわたります。

そういえば人材業界にいたときは、就業先・転職先と求職者が揉めて退職した際に、仲介者として派遣会社・紹介会社が負うべき責任範囲を法務に確認したり、求職者から法的措置として何ができるかを相談されたときに法務に回答を確認したりする光景を見た記憶があります。

法令調査・法改正への対応

法令調査は、自社の事業に関わる法令を調べたり、法改正の情報を得ることです。
用途によって予防法務、臨床法務、戦略法務いずれにも当てはまります。

例えば人材紹介業では、労働基準法が変わり求人票に記載すべき事項が変わると、法務がその情報をキャッチして勉強し、勉強会などを開いて人材紹介部のメンバーに周知したり、関連部署と連携して業務フローを変えたりします。

海外進出をしている企業であれば、海外の法改正なども確認が必要ですし、食品業界は食品衛生法や使用可能な物質のポジティブリスト、食品ラベルに記載すべき内容など、毎年大小の改正があるので、そうしたチェックも行います。
また、紛争が起こったときには過去の判例を調べたりすることもあります。

法務のやりがいと大変さ

法務は社内の法律の専門家として、経営判断や社内の統制、取引先との付き合いなどさまざまな事業運営に影響を与えます。
そのため、常にアンテナを張りながら、正確な情報を知っておく必要があります。

<やりがい>
・法律の専門知識を活かし、専門家としてのキャリアが作れる
・専門家として、経営や事業責任者から頼られる存在になる
・経営層と近い距離で仕事ができる
・自社の「攻め」にも「守り」にも貢献できる

<大変さ>
・知識やスキルを身につけないと契約書チェックなどのルーティン業務ばかりで飽きる
・事業部からの不満が上がったり、逆に法律的な部分を丸投げされる
・訴訟が続くと心身ともに擦り減る
・法改正などの最新動向を追い続け、学び続けるのが辛い

法務に必要なスキル・キャリアパス

法務で必要とされる(身につけられる)スキル

法務に必要な主なスキルは以下の通りです。

  • 法律の知識

  • 交渉力

  • 課題抽出と問題解決力

  • 情報収集力

  • 文章力

法務は経営層から各事業部、人事部、経営企画部など様々な部署とのコミュニケーションが発生します。
最新の法律動向を把握しながら、法律に詳しくない人に向けた説明や指摘、調整が必要になり、高いコミュニケーション能力も必要とされます。
また契約書作成や通達を行なうことから、高い文章力も求められています。

法務に関する資格一覧

法務業務で役に立つ資格は以下の通りです。

  • 弁護士(国家資格)

  • 司法書士

  • ビジネス実務法務検定

  • ビジネスコンプライアンス検定

  • 弁理士

  • 知的財産管理技能士

法務職のキャリアパス

法務の仕事は専門性が高いため、長く同じ部署に居続ける傾向が強くなります。
大手になるほど業務が細分化され、契約法務と商事法務に分かれたり、契約法務の中でも国内外で担当を分けたりします。

最近は企業のグローバル化が加速し、特にメーカーではここ数年、英文契約書が作れる中堅〜ベテランの英語×法務人材が強く求められていました。
また専門性の高さから法務経験者は転職市場に少なく、若手であれば業務未経験でも、法学部出身者やロースクール出身者も企業から人気があります。

まとめ

今回は、管理部門の中でも高い専門性を持つ法務の仕事について解説しました。

高度な専門性からチャレンジのハードルが高く見えますが、学ぶ姿勢を持ち続けることで法学部出身者でなくても法務の仕事をすることは可能です。
法律に精通した経営のパートナーとして、企業の課題解決や、トラブル予防に取り組めることは、大きな責任が伴いますが、同時にやりがいもあります。

法務にチャレンジしたい方、法務でキャリアを作っていきたい方の参考になりましたら幸いです。

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