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【お仕事図鑑 vol.4-2】 食品業界の品質保証職〜食の安全を守る立役者〜後編

食べる人の健康を守るため、衛生管理を徹底することは、食を扱うすべての企業で要と言えます。

そんな食品の安全を守る「品質保証」の仕事、後編。
ユーザー・消費者向けの業務について解説した前回に続き、今回は、工場や製造に関わる衛生管理業務について解説します!


品質保証はどんな仕事?〜4つの主業務〜

品質保証の仕事は、一言で言えば、専門知識を持って、食品の安全衛生を守ることといえます。

技術職の1つではありますが、国内外の関連法案も把握しておく必要があり、特に学ぶべきことが必要な仕事です。
食の輸出入の活発化や、消費者の間での安全意識の高まりなどから、品質保証職の重要性は高まっており、安定的に求人が出ている印象です(2024年上期)。

<品質保証の基本業務>
1)規格書・一括表示作成
2)申し出・ご指摘受付と対応
3)工場監査
4)品質保証の体制作り、認証取得等

この内、前回はユーザー・消費者に近い、1と2の仕事について解説しました。
後編では、製造現場に近い、3と4の業務について解説します。

※参考※ 1と2を解説した前編はこちら。

3)監査実施・監査対応

監査業務では、主に食品製造や原料・在庫保管等において、適切な仕組み作りと運用が行われているかをチェックします。

監査には大きく3種類の監査があります。
一次監査:社内で自社工場に対して行う監査(本社→工場など)
二次監査:顧客が製造委託先や仕入れ先に行う監査
三次監査:認証団体や保健所などが行う監査

いずれの監査でも、目的に応じた項目をチェックし、出来ている点や改善点をレポートとしてまとめます。
その後、時には工場長や品質保証・品質管理の方などともすり合わせながら、改善策を作っていきます。

通常、年1〜2回の定期監査に加え、「ご指摘(トラブル)」発生時には緊急監査を行ないます。
定期監査とはいえ、仕入れ先や社内外の工場を含めると、大手メーカーや商社等では年に数百件の監査が発生します。
また、新しい工場と取引先を始める際は、運営状況や設備を確認し取引の可否を判断するための監査があります。

4) 品質保証の体制作り、認証取得等

品質保証の基本業務の最後は、製造現場(工場)での仕組み作りです。
例えば、工場での衛生管理(設備の清掃頻度・方法の決定、ネズミや虫の混入防止(防鼠防虫)など)や、食品原料の温度管理、製造時の加熱滅菌処理の方法・時間、飲食店の場合は各店舗の厨房での衛生管理方法などを決めていきます。

衛生管理は企業独自の基準もありますが、国内外の法律で定められた衛生管理の方法・基準があります。

例えば日本では、2020年にHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point:通称ハサップ)の導入が義務化されました。
HACCPとは、国際的な衛生管理手法で、NASAが宇宙食を製造する際に用いたのが始まりと言われています。

厚生労働省では下記のように定義づけています。

食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html

簡単にいうと、仕入〜製造〜販売・納品の全工程の中で、特に危害要因が発生しそうな工程を分析し、重点的に管理・記録しましょう、という話です。

危害要因が発生しそうな工程とは、例えば
 ・原料輸送時の温度(温度変化が激しいと傷みやすくなる等)
 ・製造時の加熱温度と加熱時間(生焼けだと食中毒の原因になる)
 ・パッキングの方法(異物混入の防止)
などをイメージすると良いかと思います。

他にも以下のような認証規格があり、こうした認証を受けるために、工程などの分析をしたり、製造・物流など関係各所を動かして体制を整えていきます。

<国際規格例>  ISO22000、FSSC22000 など
<国内規格例>  JFS-A、JFS-B、JFS-C など

品質保証のやりがいと大変さ

今回解説した、品質保証の2つの業務について、やりがいと大変さを整理すると以下のようになります。
製造過程を中心として食の安全を守っており、責任が重い分、やりがいも大変さも大きな業務です。

<やりがい>
・法律知識が身につき、専門性が高まる
・いろんな製造現場を見ることができる
 ※特に二次監査では多くの取引先の工場に行くため、様々な製造環境やそこでの品質管理体制の仕組み作りの事例に触れられます。
・ものづくりの過程において、消費者の健康を守っている、というミッションに自体に誇りを持てる。

<大変さ>
・様々な立場の人に理解や協力、対応を求めないといけない
・監査業務は工場に足を運ぶため、国内外の出張が多い
・異物混入が発生した際の緊急監査や仕組みの見直しなど、スピード感のある適切な対応を求められることがある

品質保証職で必要なスキル・キャリアパス

品質保証職で必要とされる(身につけられる)スキル

品質保証の仕事は多岐に渡りますが、今回解説した業務において求められるスキルは、以下の4つです。
 1)法令知識(食品衛生法、認証基準、海外の関連法など)
 2)調整力やリーダーシップ
 3)論理性
 4)柔軟性

製造には、取引先の経営者・工場長から、アルバイトの製造スタッフ、日本とは衛生観念の異なる海外スタッフなど、様々な人が携わっています。
背景知識やモチベーション、視点が違う人々に働きかけ、品質を守るよう理解と対応を求めていくには、高い調整力とリーダーシップが求められます。

また、問題が発生時や監査の指摘事項を改善する際は、原因の追求と対応策を考えるにあたり、論理的な思考も求められます。
大小のトラブルや問い合わせもあるため、優先順位をつけて着手する冷静さも必要です。

商品の品質を守るためには、時に厳しいことも伝えないといけません。
しかし一方で、現場は理屈だけでは動かないため、現場の状況や意見を踏まえた柔軟性も必要です。

品質保証のキャリアパス

品質保証の方は、技術職の配属先として位置付けられ、前編で紹介した規格書等の作成と同様、エキスパートになっていく方が多いです。

転職市場においても、監査の実施経験を求める企業が多いです。
特に最近は、食材の輸入や海外工場への製造委託が増えており、海外出張に対応できたり、現地の方と話せる英語力を持っている方は人気があります。

品質保証のその後のキャリアとしては、品質保証のスペシャリストや、メーカーであれば工場長へのキャリアパスも多いです。
また、専門の企業で監査代行衛生管理コンサルタントとして専門性を活かしたり、認証機関での審査員という道もあります。
認証機関の審査員は、65歳以上でも働ける企業もあり、定年前後のセカンドキャリアとして目指す方もいらっしゃいます。

まとめ

今回は、品質保証の仕事について、2回に渡り解説しました。
ユーザーに近いポジションから、製造関連まで、関わる工程や関係者はかなり幅広いです。

消費者にとって品質保証の仕事を意識する機会は少ないですが、私たちの健康を守り、企業の信頼を築く根幹を担う重要な業務です。
求人数が多いというのもありますが、個人的には、その重要性から注目している職種です。
ぜひ一度、品質保証の仕事について想いを馳せてもらえたら嬉しいです。

次回は、品質保証に似た「品質管理」を解説予定です。
更新は7月23日予定です。お楽しみに!

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