合併消滅会社における決算や監査報告等

 決算日の翌日(決算日が3月末であれば4月1日。以下決算日は3月末前提)を効力発生日とする吸収合併を行うことよくあります。この時に消滅会社側では3月末まで会社は存在しているので、その際の3月決算や関連する監査報告等の取り扱いがどうなるのかを調べて整理してみました。

 まず決算に関してですが、こちらは3月末まで会社は存在するので、消滅会社としては税務申告との関連もあり、計算書類は作成義務があるとの理解です。
そして、計算書類を株主総会で報告・承認するのかどうか、という論点が出てきます。この点に関しては、以下の司法書士さんのブログが非常に参考になるので転載しています。

3月31日に事業年度が終わった会社が4月1日に合併しますと、消滅会社の1事業年度分の事業報告や計算書類の承認を行わないことになってしまいます。
(中略)
存続会社の定時株主総会では、基本的に合併前の事業年度について報告することになります。計算書類もまた同様です。つまり、合併によって消滅会社の権利義務の一切を承継しているのに、消滅会社の事業報告は作成しなくて良いし、定時総会で報告することはできません。計算書類も実質的には作成が必要ですが、承認はされません。
では、存続会社の翌年の定時総会はどうなの?というと、それは合併後の事業報告であり、合併後の計算書類なだけですから、やはり合併直前期の消滅会社の計算書類の承認等は行えない、という結論になります。

https://blog.goo.ne.jp/chararineko/e/51c613f60acb9786a400f903a113573a

 消滅会社側では株主総会が開催できないので、決算報告も承認もできない、という整理のようです。この点特に違和感はないです。
  また、決算公告をどうするのか、という論点もあろうかと思います。この点、決算公告自体は総会の終結後遅滞なく実施とのことですので、総会自体が開催できない消滅会社側では不要となるとの理解です。
 決算公告に関して、消滅会社側での義務はないけれども、存続会社は消滅会社の権利義務を引き継ぐので、存続会社側で決算公告義務があるのでは?との話も一部ありますが、実務上、多くの会社では存続会社側も実施していないようです。(電子公告としてHPで開示されている会社さんを調べての体感です。)どのように整理しているのかはよくわかりませんが、総会承認がなされていないため決算公告義務がないので、当然に存続会社でも行わない、という整理なのでしょうかね。なお、消滅会社の効力発生日直前の事業年度は公告されていませんが、それ以前の事業年度は、存続会社側のHPから電子公告で確認できる事例は多いので、その点注意は必要かと思います。

 監査役の監査報告が必要か、という論点に関しては、監査役監査実施要領が参考になります。これによると、合併により監査役の任期は満了するため、監査報告を作成することはできず、作成する義務もないとのこと。なので、直前の3月決算の計算書類に対しては監査報告は不要(作成することができない)となります。
 一方、以下の合併した上場会社の事例では、監査役会による監査報告が添付されています。

https://www.nipponpapergroup.com/common/pdf/nipponpapergroup/200199755.pdf

 ただし、こちらを内容をよく読んでみると、あくまで存続会社の監査役会(全員が消滅会社の監査役を兼任)が、消滅会社の取締役の職務の執行に関して報告しているようです。
 そもそも監査報告を付ける必要があるのか等、疑問が湧いてきますが、この辺りはまたどこかの機会で整理しようと思います。


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