農業現場お役(に立ちたい)人カイギ#5『久松農園 久松さんと地方農政&お役人カイギについて語ろう』 レポート
イベントの趣旨、概要
年度変わりの初開催でもあり、第0回開催の6月から約一周年でもある第5回。
今回は、「新人さん、いらっしゃ~い!」の意味も込めて、外部からスペシャルゲストをお呼びしました。
久松農園代表、そして、「農家はもっと減っていい」の著者でもある久松達央さんです!日曜夜の開催ではありましたが、なんと130名以上の申込み!開催前から熱気に溢れておりました。
今回は、久松さんとお役人代表3名でディスカッションを行いました。日頃の業務を進める上での悩みや、これからの農政・行政職員のあり方など、行政側の課題感を農家側からの視点で率直に切り込んでいきます。農業現場の課題解決に向けた、熱い夜となりました。
イベントの主な内容
(1)お役人カイギ1年間の振り返り
まずは佐川氏と、これまでの一年間を振り返りました。「行政課題マップ作成」「農産物ブランディング」「現場コミュニケーション」「新規就農支援」等、様々なテーマで事例共有し、話し合いました。(詳細は過去noteをご覧ください!)
食糧増産に向け、国から降りてきた生産技術を横展開していた昔と違い、今はニーズが多様化・複雑化しており、現場と戦略決定の場の距離感は否めません。だからこそ、手先である現場で考え、行動していく場の一つとして、「お役人カイギ」の意義があるのだと思います。
(2)ゲストセッション(久松さんとのディスカッション)
ゲストセッション久松さんと県の技術職3名の方を中心に、ディスカッションの時間です。
農業者の高齢化と耕作放棄地の急増を前に、同じくマンパワーも予算も限られたお役人でどう現場を動かすのか。「農家側からのニーズ」と「選択と集中」の視点を軸に壁打ちを行いました。
「この支援は農業経営者にとって本当に必要か。引いては、納税者からどう見えるのか」といったコスパ意識を持った対応や、「そもそもこの問題の所有者は誰なのか(農家?行政?住民?)」と立ち返る重要性について、改めて見つめ直すきっかけとなりました。
久松さんからは、「行政にはインフラ整備を求めたい。経済の縮小局面で、どのように選択と集中を行なって支援するかという行政の立ち回りは、極めて知的なゲームだと思う」とのお言葉もいただきました。今後も精進いたします。
(3)グループディスカッション(ブレイクアウトルーム)&感想共有
トークセッション終了後は毎回恒例のブレイクアウトルームに分かれてのグループディスカッションになります。
今回のイベントでも、久松さんが、バウンダリー・スパナー(境界連結者)の話をされ、タバコ部屋のような、ある意味関係性の薄い人達のゆるいつながりの重要性を強調していましたが、まさに、ブレイクアウトルームでの話し合いがその取組の一つになるのではないでしょうか。
実際に、今回のディスカッションでも、女性の農業組織の話から行政に過度に依存する生産者への対応、縮小局面での行政における施策の目標設定のあり方など、様々な年齢層の人達が、幅広いテーマで、ポジショントークなしの本音での密度の濃い議論を行っていたことが印象的でした。
(4)延長戦・座談会
夜10時、2時間の議論も終わりを迎えましたが、まだまだ話は尽きません。一旦会を締め、久松さんにも残っていただき1時間の延長戦・座談会を開催しました。
本会では発言のタイミングがなかった参加者の皆さんも久松さんと議論を交わしました。農地集約化の必要性や農業の大規模化、中山間地域の支援や飼料の調達など、農業に関連する様々な課題が取り上げられました。また、人材育成の話では、若手職員にはロールモデルが不足していると感じられ、成長路線も明確ではない現在の社会では求める答えが見つかりにくく、自らビジョンを見つけて生きていく必要があるのではとの話もありました。
この延長戦・座談会でも議論は盛り上がり、あっという間に1時間が経過しました。翌日の仕事に影響が出てしまうことから、惜しまれながら終了となりました。
(5)再延長戦・座談会
大変盛り上がった第5回。もやもやして夜も眠れず……という人もいたようで、有志による呼びかけで翌日20時から再延長戦が開かれました。
まずは前日の振り返りから始まり、行政の立場でないとできないこと、行政だからこそできることとは? という話題に。
農業インフラ整備の他、農業者と事業者の間に立って消費者・流通業者のニーズの合うひとたちとつなげることや、お金にならないけれども地域に価値のあることに取り組むこと、その対象の見極めなどが行政だからできることとして挙げられました。
そのほか、自立した取り組みになるためには誰とやるかが非常に重要、ということ、地域の経営や栽培のデータに広くアクセスできるのも行政だからこそで、もっと活用できるというアドバイスを久松さんと佐川さんからいただきました。
農業現場のお役に立ちたい人カイギは今回で一年になりますが、コンセプトを検討中に久松さんに相談に行き、紹介してもらったメンバーが賛同してくれたから実際にこの会の立ち上げにつながったという裏話も。
これまでの感想や2年目に入るお役人カイギでどんなことをしたいか、などもシェアすることができ、アツい再延長戦でした。
参加者のご感想やアンケート結果
今回参加した方々の感想やアンケート結果の一部を紹介します。次回のイベント参加のきっかけになればと思います。
少々重めのテーマにチャレンジした今回。必ずしもきれいに答えが出るわけではないトピックなだけに、アンケートには「考えさせられました」という感想が多く寄せられました(以下アンケートのコメントの一部抜粋になります)。
行政関係者以外の視点があると議論が広がって面白いですね。
行政関係者以外の視点があると議論が広がって面白いですね。
農業は「産業」「環境保全」「地域存続」「食糧保障」と色々な要素が混沌としていて整理が難しいなと改めて思いました。
課題の整理、その課題に対する主体の整理など、一般的な問題の抽象化を改めて行い、構造物として捉える大切さを改めて感じました!
「HowでなくWhyを考えなさい」、「政策というのは、個人レベルまで粒度を落として立案するもの」等々、久松さんからのいろいろな発言にも心を動かされました。
もう一度じっくり、噛みしめながら、自分が「なぜ、それをするのか」を改めて考えて、一歩を踏み出したいと思います。
もやもやが残る会ってのもよかったなと思います。
なお、アンケートは54名から回答があり、満足度は5段階評価で平均4.5でした。回答者のうち満足度5と回答した人は57%、満足度4と回答した人は35%と高い評価をいただきました。
次回のご案内
お役人カイギは2か月に1回、オンラインイベントを開催しています。次回のイベントは9月24日(日)、テーマは『事業承継支援についてみんなで考えよう 「後編」〜行政の立場から世代交代をどう進めればよいか〜』です。聞くだけの参加、途中からの参加、途中での退出もOKです。皆さんのご参加をお待ちしています!
次回のイベントページを作成はこれからのため、PeatixかFacebookでファームサイド社をフォローしていただければ、準備ができ次第ご案内差し上げます。
https://www.facebook.com/farmside.jp
主催者、本件に関する連絡先
主催者:ファームサイド株式会社
FARMSIDE Inc.|佐川友彦|農業界の課題解決ファームサイド株式会社は農家の経営改善と農業界の課題解決に貢献します
farmside.co.jp