文化の盗用
近年「文化の盗用」ということが
言わているが、言葉は無くとも
以前から似たような現象は
指摘され批判されてきた。
「文化の盗用」という言葉に
拒否感を示す人もいるが、
世の中には「文化の盗用」としか言えない
ろくでもない事例が多数存在する。
例えばハウスという音楽は
アメリカの黒人ゲイクラブ で誕生した。
当然ハウスダンスも黒人ゲイクラブが
発祥である。ハウスは音楽もダンスも
ゲイカルチャーと密接な繋がりを持つ。
そもそも何故ストリート(路上)ではなく
ハウス(屋内)か?
アメリカでは同性愛行為は
単に差別され嫌悪されるだけではなく
殺される可能性があったからだ。
ハウスダンスが誕生するのは
1970年代後半だが1978年には
米国初の選挙で選ばれたゲイの市議、
ハーヴェイ・ミルクが暗殺されている。
他のストリートダンスのように
おおっぴらに路上で踊れない
同性愛者たちの受けた差別と抑圧の歴史が
ハウスという言葉と音楽とビート、
そしてダンスには刻まれている。
ところが日本のハウスDJや
ハウサー(ハウスダンサー)には
「ゲイとかレズとかキモい」とかと
平気でいう奴らがいる。
しかもダンス仲間が自分の性自認や
性的指向についてカミングアウトした時に
そういうことを言い
「人間には男と女しかいない。
お前みたいなやつと付き合えない」
と言ってストリートダンスの
グループみんなでカミングアウトした人を
無視し交友も連絡も絶ったのである。
昨日まで仲良く踊っていたのに、である。
これはそう昔の話ではなく
10年ぐらい前だったと思うが
熊本のストリートダンス界隈で
実際に起きた事件だ。
ハウサーではなく、確かブレイキンが
メインのグループだったと思うが
中にはハウスを踊る奴もいた。
ハウスを聴き、
ハウスのDJをし、
ハウスを踊りながら
「ゲイとかレズとかキモい」とか言う奴らは
「文化の盗用」も甚だしい。
そんなに「ゲイとかレズとかキモい」のなら
今すぐハウスを聴いたり、DJしたり、
踊るのをやめればいい。
ゲイカルチャーをリスペクトできない奴が
ハウスを踊っても、その歴史や文化は決して
継承できまい。せいぜいカタチを上手に
猿真似するのがオチだ。