ドイツ史の「最良の伝統」の一つとなったフリードリヒ大王
『フリードリヒ2世と芸術』 全二部 1986年 ポツダム刊
Generaldirektion der Staatlichen Schlösser und Gärten Potsdam-Sannsouci, Friedrich II. Und die Kunst, Ausstellung zum 200. Todestag. 2 Teile, 1986.
28.5x20cm, 1-144pp, 147-264pp, original soft bound
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本書はフリードリヒ2世の没後200周年を記念してポツダム・サンスーシー宮殿で開催された展覧会のカタログです。本展覧会開催時はまだドイツ民主共和国(DDR/東ドイツ)時代、「反ファシズム」を国是としていたDDRの歴史観ではフリードリヒ2世は軍国主義や封建主義の象徴であるとともに、ヒトラーとファシズムの前座として忌み嫌われる存在でした。
1970年代から80年代に入ると建国当初の国是「反ファシズム」がドイツ連邦共和国(BRD/西ドイツ)で抵抗の闘士ヴィリー・ブラントの登場や「過去の克服」の進展により通用しなくなりました。そのため、DDRは新たに「ドイツ史の最良の伝統を体現した」国家であるという主張が行われ、ソ連の占領の結果ではなく、ドイツ史の伝統の中から誕生した正当な独自の国民国家であるというアイデンティティーが打ち出されました(二国家二国民、社会主義的国民)。
その結果、従来の労働運動史から分野を広げた「最良の伝統」を汲み取る歴史研究が推進され、ドイツ農民戦争、啓蒙主義、プロイセン史、1848年3月革命、帝政期などこれまでとは異なる研究での取り組みが行われました。フリードリヒ2世やプロイセンからは啓蒙主義、宗教難民ユグノーを受け入れた「プロイセンの寛容」や外国侵略からの守護者としての面が打ち出されるなど、従来からの歴史観の転換が行われました。
本書とその展覧会は、1980年のウンター・デン・リンデンでのフリードリヒ大王騎馬像再設置に象徴されるように、DDRの歴史観の転換、(失敗には終わるが)BRDとはことなるドイツ民主共和国国民創設の試みを物語る資料です。
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