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Vtuberケリン氏はなぜヘイトスピーチをやめられないのか

 まずはこんなタイトルのnoteを書かなければならないことに心底ガッカリしている。

Vtuberケリン氏といえば自身の動画内で新型コロナウイルスを「中国ウィルス」「武官肺炎」と呼んだことで知られる。

しかし一方で複数のVtuberが出演していたテレビ番組(あれをアニメとは呼びたくない)「バーチャルさんはみている」にレギュラー出演するなど界隈内での人気の高さと知名度も誇る。


そんなケリン氏だが、先日YouTubeに投稿した動画内でまたしてもヘイトスピーチを行った。

なおヘイトスピーチに関しては以下のリンクを参考にする。


「コロナウイルス感染者をバラまき何十万人も死者を出しやがって」

以下のスクリーンショットを見ていただきたい。

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このあと

「何十万人も死者を出しやがって」

と続く。(字幕ナシ)

引用-https://youtu.be/6Nwt-t_Z1MA

もはやあきれ果てるばかりである。

・「オンラインゲームでチートを使う」のは中国人だけではない。日本人のチーターも多い。

・「領海侵犯」「ウイグル人虐待」。これは非難されても仕方がない。しかし、これらを非難するのなら個別に扱うべきである。少なくとも以下の陰謀論と並列に扱っていいい話ではない。

問題はここから。

・「台湾を国として認めない」のは日本もである。というか台湾を国として認めているのはわずか15か国にすぎない
これを突っ込むとかなりの国に刺さるし日本にもブーメランが返ってくる。いや、ブーメランを覚悟してでも台湾に寄り添い中国の弾圧に抵抗するくらいの覚悟を持って言っているのなら構わないかもしれないが、中国の人権軽視を糾弾しておきながら一方で中国を十把一絡げにし差別するのはちゃんちゃらおかしい。言ってることとやってることが真逆である。

・「WHOに圧力を掛け」ている証拠はない。「中国がWHOに圧力を掛けている」「WHOは中国寄りである」という言説は今年の3月4月あたり、日本国内で新型コロナウイルス患者が増えだしたタイミングで広く言われるようになった。
しかしそもそも「WHOは中国寄りだ」と言い続けナショナリズムを煽り分断と対立を煽ったのはドナルド・トランプ大統領である。仮想敵を生みナショナリズムを煽れば国内の結束が高まり支持率を上げることができるというのは人類の歴史が証明している。エボラ出血熱が流行した際オバマ大統領(当時)が即座に各国と連携し、CDCスタッフを現地派遣し解決に導いたことは記憶に新しく、比較すると大統領選を控えたトランプ大統領が新型コロナウイルスを利用し自身の支持率を上げようとしたのは明白である。
 そんな猿でも分かる理屈があるにも関わらず「WHOに(中国が)圧力を掛け」などとのたまうVtuberケリン氏は残念ながら「アノニマスポスト」や「ShareNewsJapan」、「保守速報」などのネット右翼系デマサイトを鵜呑みにするネット民と同レベルであり、このテロップに違和感を覚えず、逆にはやし立てるファンも含め最早地獄の様相を呈している。

・「自国を封鎖せずに」。え、急に安倍首相(当時)を叩き始めたのかと思っちゃた(笑)だって1月24日から一週間、北京の日本大使館のHPに安倍首相(当時)による多数の中国人観光客の来日を期待する内容の祝辞を掲載してたのは昨日のことのように思い出せるし。その後も春節に合わせ来日予定だった習近平国家主席に忖度して湖北省以外の中国人観光客の渡航制限をしなかったのは日本ひいては安倍政権である。

・「コロナウイルスをバラまき」。言うまでもないがウイルスを運ぶのは国でなく人である。お前はへずまりゅうと日本を同一視して叩くのか。勘弁してくれ。映画「コンテイジョン」で最初の感染者として描かれたのはグウィネス・パルトロウ演じる中国からアメリカに帰国した女性だが、彼女が責められる描写や中国が責められる描写はない。まぁ、ジュード・ロウ演じる活動家がデマサイトを作って多くの人間を間接的に殺す描写は描かれていたが。良識があれば何故そのような映画を作ったのか理解できるだろう。

・「何十万人も死者を出しやがって」と言うが政治的判断と医療体制で救える命もある。ニュージーランドではオークランドの4人家族に陽性反応が出たとして同市でロックダウンを決行。アーダーン首相は厳しい外出制限を設けたが、結果的にニュージーランドは封じ込めに成功している。当然法律や人権問題が絡むので一概にニュージーランドのようにしろとは言えないが、その国の感染者数や死者数はその国の政治判断の結果であり、ネタだとしても感染症発症国を責めるような発言は不適切だ。とりあえず「コンテイジョン」でも観なさい。


以上からケリン氏がデマやフェイクニュースを基にヘイトスピーチを行っていることは明白であり、いちバーチャルYouTuberファンとして到底看過できる問題ではない。


「全方面にケンカを売る」という妄想

 ケリン氏の過激な動画に対し、「全方面にケンカを売っている」という感想はしばしば見受けられる。

一部を抜粋しただけでこれである。

ある程度の知性を持つ人間がくだんの動画を見れば理解できるが、「全方面」に喧嘩など売っていない。前述の通りネット右翼系フェイクニュースサイトレベルの陰謀論に基づいて中国を誹謗しているだけである。
 所詮はオタク、ひいてはVtuberオタクとも親和性の高さを指摘されるネット右翼(通称ネトウヨ)のご機嫌取りをしつつ炎上狙いで再生回数を増やそうという魂胆だろう。以下のツイートがそれを如実に表している。

これがケリン氏の動画を普段から好んで視聴しているユーザーレベルである。もはや憐憫の情すら湧いてくる。


ケリン氏は何故ヘイトスピーチをやめられないのか

 結論から言うと注目されるからだろう

  私はかつて、2ちゃんねるまとめサイトを運営していた。
「ふぁっきゅふぁっきゅー」以前のことであり、VIPPERな俺、ゆめみがちサロン、無題のドキュメント等のまとめサイトが全盛期を迎えていたころの話だ。当時2ちゃんねるではすでにネット右翼的思考の下地が醸成されつつあり、栄華を誇ったニュー速VIP板やニュー速+板等、専門版以外の板にもそのような言葉が見られた。
 当時2ちゃんねるまとめサイトというのは個人運営のインターネットブログの中でも大きなシェアを占めており、アルファブロガー大賞を受賞したり、ライブドアブログ運営の人気ブロガーのみが参加できるBBQの参加者の大半は2ちゃんねるまとめサイトの管理人だったりした。

 そのような流れの中で、例えばニュー速VIP板のネタスレをまとめるサイトや短レス・コピペをまとめるサイト、SSをまとめるサイトなどまとめサイト自体も分化していき、「嫌中・嫌韓系まとめサイト」も誕生するに至ったのである。はっきり言ってしまえばこのようなネトウヨ向けまとめサイト(あえてネトウヨ、と呼称させていただく)の管理人の多くはネトウヨではなかった。数が増え多様化する2ちゃんまとめサイトの中で生き残る手段としてその道を選んだのであり、今思えば「ビジネス右翼」の走りだったように思える。
当時は管理人同士の交流も密にあり、その中でネトウヨ向けまとめサイトの管理人が言っていたのは「儲かるから」とのことだった。当然だ。「もう中国製品なんて買わない!!!」と息巻いているレスを寄せ集めたまとめに貼っているAmazonのアソシエイトリンクの先はMade in China。そも、パソコンだってオール日本製なんてほぼ存在しないに等しい。「ロッテは韓国企業だからロッテ製品は食べない」と言いつつロッテリアには行く層を相手にアフィリエイトで儲けをだすのだからこんなに楽な商売はないだろう。

 私が思うにケリン氏の動画も同じである。鳴神裁との件などを経て徐々に人気が低迷しつつあったケリン氏の起死回生の一手が、彼のファン層の中でも特に厚みのあるネット右翼向け動画だったのである。これが功を奏し、今回の彼の動画は(ファンからは)絶賛の嵐。何度も言うが、こんな楽な商売は無い

つーか事実陳列罪ってなんだよ。いつから陰謀論を事実と呼ぶようになったんだよ。QAnonかよ。

 程度の低い陰謀論を利用し中国を叩く。視聴者の多くにとって中国とは「叩いていいもの」であり、動画の内容が嘘だろうがデマだろうがどうでもいい。ただケリン氏の動画を通して自身の中の加虐欲が満たされればそれでよいのである。言わばケリン氏とその視聴者による壮大な相互オナニーであり、それによって傷つく人々を顧みないその姿勢は歪んだナルシズムや承認欲求すら感じさせる。


ケリン氏が活動できる歪な環境

 度々炎上するVtuber界隈だが、意外にもド直球なヘイトスピーチが問題になることは少ない。(もっとも無いわけではない。つい先日もホロライブ所属のVtuberが配信中に清掃員を笑いものにし職業差別だと騒がれた)
今回のケリン氏の動画も絶賛するコメントが多く、非難する声はほぼ聞こえない。同業者であるVtuberからはなおさらだ。

 再生回数が少ないため目に留まることなく炎上しないのではないかとも考えたが、くだんの動画は約4万2千再生(2020年11月18日現在)。これは”Vtuber四天王”のうちのひとりであるミライアカリの最新動画の再生回数とほぼ同じだ。

つまりそれなりに再生回数はあるのである。そもそも地上波のテレビ番組でレギュラーを持っていた数少ないVtuberのひとりであるケリン氏。注目度だって低くはない。

 では何故炎上しないのか。理由はふたつ考えられる。

ひとつはVtuberファンの体質。他のコンテンツと比べVtuberのファンには全肯定体質がある。そのVtuberのやることなすこと全てを脳死して肯定し、少しでも異を唱えるファンがいたら寄ってたかって叩く。今回もそうだろう。「ケリンだから過激でもOK」「ケリンだから許される」「中国を叩くのは良い」といった考え方がファンの中で蔓延し、「これはダメでしょ」なんて言わせない空気を作る。Vtuberのファンというのは個ではなく集であり、その思考・行動は基本的に一定方向にしか向かない。ネモ・マリーンとネモ・プロフェッサーで思考を切り分けられているキャプテン・ネモのほうがほよど多様な意見を述べられるだろう。

ふたつめはVtuber自体の体質。端的に言ってしまえば、同業者である他のVtuberを非難できないのである。今回のケリン氏の動画はVtuberそのものの品位を貶めていると言っても過言ではない。自らVtuberを名乗り、テレビに出演し、Vtuberチップスをはじめとした商品に素材提供している。そのようなVtuberがVtuberとして隣国に対しド直球のヘイトスピーチを行ったのである。ケリン氏は現在どこにも所属していないので、組織として誰かが彼に謝罪を促すことはできない。それならば近しい同業者や、動画でフリー素材として使われている会社の社長らが公然と非難するのが筋であろう。仮にそこでケリン氏が反論しても、少なくとも「公然と非難した」事実は残る。そうすることで界隈として健全化を図る動きがゼロではないことを内外に証明でき、少々言い方は悪いがケリン氏の動画で傷ついた人々の溜飲も下がるというものだ。

ファンも同業者もダンマリというこの状況は、極論ではあるがVtuber界隈全体としてやんわりと彼の行ったヘイトスピーチを肯定しているに等しいと言える。Vtuber関係のライターやブロガーも誰一人として触れてない。そんなんなら筆を折ってしまえ。


最後に

 怒りにまかせて文字を綴ったので多少の粗さには目を瞑ってほしい。
私は今でもVtuberの持つ可能性というものを肯定したい。キズナアイやミライアカリ、輝夜月、電脳少女シロ、ときのそら、富士葵といったVtuberを生み出した人々は動画を見て楽しんでもらおうと思ったのではないか。YouTubeというプラットフォームは接続できれば世界中どこでも誰でも動画を楽しむことができる。そこで公開するということは、楽しませるのと同じ手軽さで人を傷つけられるということだ。すべてのVtuberよ、原点に還れ。

 登録者の多いVtuberは自身がコンテンツホルダーであることを自覚しなければならない。コンテンツホルダーに求められるものは、ファンの管理だ。ファンの質はコンテンツホルダーの質。差別表現は笑いに昇華してはならない。その程度、言われなくても分かってくれ。


5000字を越えたので本日はここで筆を置く。もしVtuberが、Vtuberのファンがこのnoteを読んでいたら、今日寝る前に一度、胸に手を当て我が身を振り返ってほしい。


書いた人:FAQちゃん

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