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世界は本当に金融危機を回避できたのか?

2023年3月から5月にかけて、
全米で3つの銀行が相次いで破綻しました。
当初は金融危機が心配されたものの杞憂に終わり、
あれから1年余りが経ちました。

一見、平静に見えるアメリカの金融業界ですが、
米主要20地銀の2024年1月-3月期決算は、
純利益の合計が前年同期比-62%の大幅減となっています。
主な要因は、預金流出を防ぐために、
金利の引き上げ競争が起きていることです。

なぜ、大手ほど体力のない地銀が
金利競争をしているのかというと、
預金の流出が続くと銀行は潰れてしまうからです。

2023年3月に破綻したシリコンバレー銀行は、
当時、全米16位の地銀で、破綻1ヶ月前には
米フォーブス誌によってベスト銀行の一行にも
選ばれていました。

ところが、同行が保有していた
住宅ローン担保証券等の評価損に対応するために
資本増強を発表するや、
市場に経営危機と判断され、預金者が殺到。
次々と預金が引き出され、
わずか48時間で破綻してしまいました。

住宅ローン担保証券は、2008年9月に発生した
リーマン・ショックと呼ばれる世界金融危機の
引き金になったことでも有名です。

リーマン・ショックの前触れと言われているのが、
前年の6月から7月にかけて、全米第5位の
投資銀行ベア・スターンズ傘下の3つのファンドが
危機に陥り、うち2つが破綻したことです。
翌月には、フランス銀行大手のBNPパリバが、
ファンド3本の解約を停止。
これは、後にパリバ・ショックと呼ばれるようになりました。

ベア・スターンズやBNPパリバのファンド危機には、
ある共通点がありました。
ファンドの中に、アメリカの住宅ローン担保証券が
含まれていたことです。
アメリカの不動産バブルが弾けたことで
大量の住宅ローンが焦げつき、返済が滞ったことから、
住宅ローン担保証券が組み込まれていたファンドも
破綻したのです。

しかし当時、ベア・スターンズやBNPパリバの
ファンド破綻はそこまで注目されず、
その後のリーマン・ショックを予見できる人は
ほとんどいませんでした。

振り返って現在、高インフレでも
好調を維持していると言われるアメリカ経済ですが、
人知れず危機は忍び寄っているのかも知れません。

【参考文献】
REUTERS:2007年8月27日、日経新聞Web版:2023年3月21日、2024年5月7日、他


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