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ブラックの世界
深く濃ゆいダークな世界。
この世界に来て間もない者たちには少し刺激が強くて好かれない存在として日常に存在している。
しかし一定数にとっては僕はかけがえのない存在らしい。というのも、その刺激がその者たちには有難いと言われるのだ。
はてさて。
そんなもの、僕にあったのだろうか。
リラックス効果もあるらしく、この世界に慣れすぎた住人には特別なんだそう。
質、温度、種類、時間…。
様々な要素が奇跡的にバランスのよく揃った時、極上のひと時を届けられる。
勝手に幸せな存在なんだと知らされる。
でも僕にとってそんなの大切じゃない。
僕は紅茶になりたかった。
あの気品高く、華やかな香りと褐色の世界。
消費量No.1になれなくとも、僕の好きな自分で人々に愛されたかった。それだけだったのに。
憧れは叶わない。別の世界の存在だから。
それに近づく唯一の方法は真似ること。
ほんの少し華やかな香りで刺激を弱くした淡いブラックな世界。それが一番僕が僕らしくいられるんだ。
だけども僕は少し勘違いしていたようだ。砂糖が溶けた甘ったるい世界。そんなもの、存在しない。
世の中なんて、知らなきゃよかった。
絶望感という漆黒と共に奈落の底へと堕ちてゆく。
ブラックな世界。それが僕の生きる場所。