グリコレーティングの基礎知識(2)
期待勝率の算出に相手のレーティング偏差を使う理由は?
Glicko rating systemで期待勝率を計算する際に相手のレーティング偏差を利用する理由は、相手の実力がどれだけ信頼できるかを考慮するためです。
レーティング偏差が小さいプレイヤーは、自分のレーティングに対する信頼度が高いことを示します。そのため、そのプレイヤーの実力は、レーティングが表す実力により近いと考えられます。
一方、レーティング偏差が大きいプレイヤーは、自分のレーティングに対する信頼度が低いことを示します。そのため、そのプレイヤーの実力は、レーティングが表す実力よりも不確かな要素が含まれる可能性が高くなります。相手のレーティング偏差が大きい場合、期待勝率の計算において、より保守的な重みがかけられることになります。これにより、レーティングが不確定なプレイヤーに対して、レーティングの変動が抑えられ、より正確なレーティングが算出されることになります。
グリコレーティングの期待勝率(We)を求める時に、イロレーティングと唯一違うところが、g(RDi)というものをかけている部分です。RDiは対戦相手のレーティング偏差のことで、それを使って重み(g)をつけていることになります。

(Rcは相手の、Roは自分のレーティング)
このgは0から1の範囲に収まるように計算され、相手のレーティング偏差が小さい場合は1に近づき、大きい場合は0に近づくようになります。
その値を相手とのレーティングの差にかけることで、期待勝率があまり大きくならないように(保守的に)計算されるようになります。
具体的には、
相手のレーティング偏差が50の場合、gは約0.988、
相手のレーティング偏差が200の場合、gは約0.844、
相手のレーティング偏差が350の場合、gは約0.669、
となります。
例えばレーティング差が100の相手との対戦の場合、
偏差が50の場合、計算上のレーティング差は98.8、
偏差が200の場合、計算上のレーティング差は84.4、
偏差が350の場合、計算上のレーティング差は66.9、
と偏差が大きくなるにつれて、控えめな差になっていき、期待勝率としては、0.5 (50%) に近づいていきます。
次のグラフは、自分のレーティングが1500の時に、相手のレーティングとレーティング偏差によって、期待勝率がどう変わるかを示したものです。

相手のレーティング偏差が大きくなるにつれて(青い線)、期待勝率が0.5に近づいていくのがわかります。相手のレーティングが信用できないということは、期待する勝率も信用できないという意味で、控えめになっているわけです。
ちなみに、イロレーティングの期待勝率は、上記の破線で示したライン(ほぼ赤い線と同じ)で、これは相手のレーティング偏差が0であることと一致しています。