DURDN 〜古典的、その先のモダン〜
生まれもルーツも個性も全てがバラバラ。シンガーにトラックメイカーとトップライナー。そんな異色のユニットが織りなす音楽は、ポップス、ヒップホップ、ロック、オルタナ、R&B、テクノに至るまで実に多彩。しかし、聴けば聴くほど染み渡るのは、日本音楽のオリエンタルでどこか懐かしい部分。謎多き"DURDN"の音楽性に迫ります。
1.DURDNとは
バンド紹介と銘打ちましたが、彼らは正確に言うならユニット。ボーカルは韓国にルーツを持つシンガー、Baku(中央)。そしてトラックメイカーで楽曲提供等も行うSHINTA(右)と作詞を担当するトップライナーのyacco(左)の2人によるプロジェクト"tea tea"が合わさったのがDURDN(敬称略)。読み方は"ダーダン"で、映画"ファイトクラブ"の主人公、"タイラー・ダーデン"から来ているとの事。
DURDN結成の2年ほど前、同じ専門学校で出会ったyaccoさんとSHNTAくんによってプロデュースデュオ"tea tea"が結成されます。しかし、活動は思うように行かず伸び悩んでいた頃にBakuくんと出会い、DURDNが結成されます。「すぐに結果が出ることは無いと思うけど信じて着いてきてほしい」とBakuくんを説得した2人でしたが、言葉とは裏腹に凄まじい成長曲線を描くことになります。
2021年にリリースされた初のシングル、"Conflict"が界隈を中心に高い評価を得ると、そこからの12ヶ月連続でのシングルリリース企画により一気に名を上げます。また、その年の年末には、乃木坂46のアンダー楽曲"Hard to say"への楽曲提供が話題を呼ぶと、2022年にダイハツのCMソングに"何年後も"が起用。2023年にはアニメ"Buddy Daddies"のEDとして"My Plan"が起用。今、日本音楽界のスターダムへの階段を一段飛ばしで駆け上がっていく、新世代ポップス・スターの筆頭候補です。
2.306-EP
必聴曲として挙げたいのが、4枚目のEPの表題"306"。巧みなサウンドワークに下町東京を感じられるエモーショナルな歌詞。どこか懐かしさを感じられるメロディは、80年代に日本を席巻したシティポップの趣。落ち着きと情感を併せ持ったBakuくんの声も非常に推しポイントです。こういった古き良きメロディラインと現代的な若者ウケする歌詞に、アンニュイなBakuくんの声を用いた曲作りはまさにDURDNの骨頂です。
また、このEPに収録されている"ミアネ"も同じような世界観で非常に完成度の高い楽曲です。タイトルの"ミアネ"は韓国語で"미안해"、"ごめんね"を意味する言葉です。彼女に頼りっぱなしの男性像を描いたあたたかい楽曲となっています。MVを手がけたのは映像作家のRen Gomiさん。何気ないカップルの日常を、繊細なアニメーションに落とし込んでいます。
3.忘れたいね
もう一曲だけ僕の大好きな曲、4枚目のシングル"忘れたいね"を紹介させてください。この曲の根底にあるのは米国のクラブミュージックのニュアンス。80年代に日本中をバブルと共に狂騒の渦に巻き込んだ"シティポップ"の雰囲気を全面に出して仕上げています。ユーロビート調のシンセにハングルで織りなすラスサビ前は、誰でもノリノリになってしまう事でしょう。誰もが虜になってしまう、一度聴いたら忘れられない抜群のダンスナンバーです。
ちなみにMVは"ローラーブギ"という1979年のアメリカの映画の一節をそのままMVにしています。映像の一昔前のオールドな雰囲気や、ローラースケートで走り回る人々が音楽にピッタリと合っています。
4.DURDNが開拓する、J-POPの新たな源流点
実はDURDNのリスナーの大半は海外のリスナー。アジア圏はもちろんアメリカなどでも聴かれています。その理由として本人たちが挙げるのは、先ほどからも言っている"日本らしさ"という部分。まさに"古き良きJ-POP"といった曲作りが、海外にごまんといる耳の肥えたジャパニーズシティポップファンを虜にしたのでしょう。
また今の時代、DURDNの作る"あの頃のJ-POP"の様な音楽は、若者の耳には新鮮に届き、大人の耳には懐かしく届いている気がします。しかし彼らのサウンドが"懐かしい音"で終わらないのは、老若男女に愛される透明感ある歌声、抜群のトラックメイクセンス、若者に寄り添う叙情的なリリックがあるからでしょう。それこそ彼らが世界的に有名なアーティストにでもなる頃には、"J-POP"という音楽ジャンルが世界に認められていることでしょう。
5.目指すは、世界のジャパニーズ・ポップス・スター
DURDN結成時からの"ポップスをやる"という明確なテーマは今も一貫しているようですが、最近では反響の大きさからか、目指す場所に変化が現れ始めているようです。日本のメインストリームを飛び越えて、より世界中で愛されるワールドワイドなポップミュージックを指向しているとのこと。
Bakuくんの歌声、SHNTAくんのトラックメイクセンス、yaccoさんのリリック、まさに適材適所で全員が補完し合うことでバランスを保っている彼ら。実際に現在進行形で、国内外でファンを増やし続けていることからも、彼らが日の目を浴びる日もそう遠くはないと言えそうです。