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雨と傘とレインコート

傘というものがあまり好きではない。誤解のないように言うと、傘自体は嫌いではない。言うなればおしゃれアイテムの一つだし、デザイン性の高いものは目にするだけでテンションがあがる。傘そのもの、というよりも「傘を差す」という行為が苦手なのである。差すことで、片手が塞がってしまうのがどうも気に入らない。

一昨年頃、傘を差す生活に休止符を打つためにレインコートを購入した。袖のないポンチョ式のものを選んだ。しっかりした生地で撥水性も優れている。夏場は多少ムレるけれど、リュックを背負ったまま着用できるし、見た目もおしゃれだし、いい買い物をしたと思う。

知人には「何もそこまで雨を毛嫌いしなくても」と言われたが、それは大きな誤解である。そもそも、濡れること自体は嫌ではない、むしろ好きな方だ。幼い頃、雨に打たれたい衝動を抑えきれなかった私は、激しい雨が降るなか外に飛び出し、びしょ濡れになりながら両手を天に掲げるという奇行に走ったことがある。そしてその現場はめでたく近所のおばさんに目撃され、雨よりも冷たい視線を浴びせられた。今となってはいい思い出である。しかし、大人の社会ではなかなか難しい。毎度雨が降るたびに、びしょ濡れ状態で出社するわけにはいかない。そこで致し方なく、レインコートの出番、ということである。

そうして新たな“雨ライフ”を歩み始めたのだが、思わぬ落とし穴にはまることとなる。電車に乗る際のレインコートの扱いである。小雨ならまだしも、しっかり雨がしみ込んだレインコートを着たまま電車に乗るわけにはいかない。一旦脱いで小さくたたみ、それを片手に抱えておく必要がある。そう、結局わたしの片手は埋まる運命なのだ。というか、むしろ折り畳み傘よりかさばるし重い。

雨の日に両手を塞ぐことなく過ごせる方法をどなたかご教示願いたい。

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