どうしたんだキャメロン
あんまり映画の悪口は言いたくないのですが、ジェームズ・キャメロンの『アバター・ウェイ・オブ・ウォーター』に関しては、あまりにガッカリし、こんな映画があと3本『アバター3』『アバター4』『アバター5』と続くなんて悲しみでしかないな…と思ったので記しておきます。
まず初めに、私はキャメロンが大好きです。
『エイリアン2』は生涯ベストワンと言ってもいいくらいの映画ですし、『ターミネーター2』も大好き、淀長さんがケチョンケチョンにけなしていた『タイタニック』も好きですし、キャメロンが海に魅せられていることがよくわかる映画『アビス』も大好きです。ついでに言うと脚本を担当している『ランボー2/怒りの脱出』も大好きです。そんな大好きなキャメロンだからこそ、『アバター2』に大いにガッカリしたのです…。
以下、『アバター・ウェイ・オブ・ウォーター』の残念ポイント
【ネタバレ大いにあり】です。
①脚本とストーリーがあまりにヒドい!
「アバター1」で倒したはずの敵が簡単にクローン技術で生き返ってるのはどういうことでしょうか。ここでまずズッコケます。生き返りが可能なら、倒してもまた簡単に蘇ることができてしまいます。それだと敵を倒すカタルシスがないですし、逆に主人公が死んだとしても蘇ることができます。つまり、戦う意味がないのです。なのに、今回はこの敵の大佐と主人公ジェイクの戦い、追いかけっこをひたすらずっと見せます。おそらく『アバター3』『4』『5』とこの鬼ごっこは続くでしょう。その途中でクオリッチ大佐の死!(たぶん『4』あたりでモンキーボーイをかばって死にます)とか主人公ジェイクの死!なんて展開になっても驚きません。クローンで蘇らせて舞台を砂漠に変え、また森に、今度は宇宙空間に、と変えていけばいくらでも続編が作れてしまうのです。そして、そんなひたすら戦い続ける話はいつか飽きられるでしょうし、画面が綺麗なだけの鬼ごっこに今後も付き合う気はありません。家族がなぜか分かり合えない(夫婦がかみ合わない、親子がすれ違う、血がつながっていない子をうまく愛せない)みたいなキャラ設定にも、終始イライラしました。
②あからさまな捕鯨批判
映画の中であきらかにクジラと思われる生物を人類が乱獲しているシーンが出てきますが、そこで捕鯨船の操舵士にアジア人の俳優を使い、捕鯨の武器にはなんと「日浦」や「鯨」という漢字や日の丸っぽい印がマーキングされています。あきらかに捕鯨=悪=日本というレッテル貼りをこんな世界的な映画でしているのです。これにはガッカリしました。
キャメロンは海の環境保護活動も積極的にしている人ですから、世界の捕鯨の歴史については知っているはずです。小説「白鯨」などで描かれた頃の、主に欧米諸国が鯨油目的で乱獲し、油を採った後は捨てていたことなど。〔一応、映画の中でも欧米人(に見える俳優)が鯨を獲り脳髄液だけ採って不老長寿薬につかう、と説明していますが〕日本人は獲った鯨を捨てることなどせず、その肉は余すことなく使い、ヒゲや歯なども工芸品とし、そしてその鯨を供養し糧としたことに感謝し、鯨塚や鯨神社まで建てる文化があることを。それらを知っていて、映画の中で鯨を殺すシーンにわざわざアジア人を使ったり日本をイメージする漢字を使っているとしたら、なんとタチの悪い人でしょうか。ガッカリというより、怒りすらこみ上げてきます。まさかシーシェパードのような過激武闘派を支持しているのでしょうか。世界的な映画監督にしては、思慮が浅すぎます。
③イルカショーのイベント
そして日本でちょっとした問題が起きます。
日本での映画公開プレミアで、日本の映画会社が企画したのでしょうか、水族館のイルカショーでもてなすというイベントがありました。そのイベント内ではキャメロンは「イルカは大好きだよ。知性があって社会性があって人とコミュニケーションが取れて」とコメントし、和やかにイベントは終わりますが、後に様々な動物愛護団体から批判されると、「イルカショーをやるなんて聞いてなかった。イルカを見世物にするのは反対だし、内心怒っていた。」とコメントしたのです。ただ、これも切り取りで、キャメロンはそのあとに「その場で怒ってファンイベントを台無しにすべきだったのかもしれない。だけど私の本能は常にその土地の人達に向き合うことなんだ。そして、それこそが「アバター2」で言いたいことでもある。意識を変えるとはそういうことなんだ。」とコメントし大人の対応をしたそうですが……、
んんんんんんん?!?!?!?!?!
なんかズルくない?
怒ってたけど言わなかった。言わないでその場を丸く収める、つまりそれが相手を受け入れること、意識をかえること?え?なにその説明…
ちなみにキャメロンは10年ほど前からヴィーガン(菜食主義者)になったそうでして、それ自体は別にいいのです。ですが、なんと映画の現場クルーにもヴィーガンを強要しているというのです。
鯨やイルカは知性があるから殺してはいけない、食べてもいけない。ましてやショーの見世物にするなんて許せない。でも僕は、鯨を食べたりイルカをショーにする文化があることも理解しているし、尊重しているよ、向き合ってるよ、と言いたいのでしょうか。そんな男がなぜ現場でヴィーガンという自分の主義主張を強要するのでしょうか。
そして「相手の民族の文化を理解して向き合い、意識を変える」、そんなことを「アバター2」が描いていたでしょうか。むしろ相手を受け入れることができず、ひたすらぶつかり、戦い、殺し合うシーンを延々と見せられていたような気がします。いつか理解し合う日が来るシーンが 「アバター4」か「5」あたりで 観られるとするなら、あと何年待ち、何時間、映画館の椅子に座っていなければならないのでしょうか。
④3時間超えの映画に休憩なし
そしてもう一つ腹立たしかったキャメロンのコメントは、記者が鑑賞時いつトイレに行けばいいかと質問したら、「いつでも好きなときに行っていいよ。見逃したシーンはもう一度見に行ったときに見ることができるから。」と返答したこと。ふざけるな!と言いたい。
通常料金でも1900円、それにIMAXだドルビーシネマだ3Dだハイフレームレートだのを追加したら一本3000円近くになってしまう映画をそう簡単に何回も観に行けるわけがないのです。
「マッドマックス 怒りのデスロード」や「トップガン マーヴェリック」のような本当に面白い名作だったら何度でも映画館に足を運びますが、アバター2はもう一度観たいとは思いませんでした。
⑤高額パンフレット
そしてもう一つこれは日本だけの問題。最近、映画のパンフレットが異様に高い、もしくはパンフレットが無い、ということが起きています。アバターWoWのパンフは、何と1650円です。映画を観る前に勢いで買ってしまいましたが、なんと中身はただの設定資料集でした。監督やキャストのインタビューや撮影のウラ話なら読んでみたかったのに、ほんとにただのアートブックでした。惑星パンドラの世界観やストーリーに全く入り込めなかったのに、設定資料など1㎜も興味がありません…知ってたら買いませんでした。
一昨年前の「マトリックスレザレクションズ」のあたりから、この高額パンフレットの傾向が始まり、スピルバーグの「ウエスト・サイド・ストーリー」の時も高額アートブックしか販売されませんでした。結局、映画配給会社に冊子体のパンフレットを作る体力がなくなってしまい、一部のマニアだけが買いそうな高額本がパンフレットと称して売られることになってしまったのです。このように、映画パンフレットという文化もなくなりつつあります。寂しいですが、仕方ありません。
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そんな訳で「アバター2」に関する様々な事象には、怒りと悲しみと、キャメロンのエゴしか感じられませんでした。
もし本当に、海のこと、魚や生き物のこと、人と自然のこと、家族のことなどを真剣に考え、そして感じたかったなら、「のん」さんが演じた、さかなクンの映画「さかなのこ」を観た方がよかったんじゃないかと、ふと思いました。
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と、いうわけで2022年の年末は、
映画とエンターテインメントの未来にがっくり悲観していたのですが、
2023年に希望が全くないわけではありません。
きっと、誰も観たことのない、面白い映画がきっとやってくるはず。
キーパーソンは、「ミシェル・ヨー」です。
そんな訳で、次回は、2023年の映画の希望の光を語ります。