B級映画も好きだ
世の中には名作と呼ばれたり、少数の映画館でしか上映されないものであったり、広くは公開されなかった映画など、様々なものがある。
当時の恋人は、特に多数には支持されなかったけれど特定の層にずばっと刺さる、最早ホラーではなくエンタメなB級C級と呼ばれる映画を好んでみていた。私も隣にいたかったから、くっついてよく一緒に観ていた。世界が寝静まった深夜1時に、近くのスーパーで安く調達してきた塩とキャラメルのポップコーンを置いちゃったりして。
私は映画館のキャラメルポップコーンが大好きで、映画館と言えばと、毎回それを頼む。逆に映画館の外でキャラメルポップコーンを食べることはなかった。甘さとしょっぱさが混じって、その香ばしい匂いにつられてふらふらと映画館に入ってしまいそうになる。スーパーで売っているキャラメルポップコーンはそこまで味としてキャラメルが濃くなく、砂糖でかなり甘ったるかったがにちじょうで食べるならこれくらいがいいのかもしれない。だって同じくらい美味しかったら映画館に行かなくなっちゃう。
まぁ大画面で見たい程心惹かれる何かがあれば、きっと行っちゃうのだけれど。シンゴジラとか。
ポップコーンとサイダーを買って、ポップコーンを準備して、部屋を真っ暗にして映画を観る。家なのだから、途中でトイレにたてるのだけれど、途中で中断したくなくて君は事前に済ませておく。
まめだね。そういう私も前もって行っておく。一応ね。B級でもC級でも怖いものは怖い、というかびっくりしちゃうからね。一応ね。
もろもろの準備を済ませて、私と君は今日もマイナーな映画を観る。
今日観るのは「キラージーンズ」。
ジーンズが人を殺しまくる映画だ。
なんとも言えない設定であるが、世の中にある「キラー○○」の中でもなかなかに可愛らしかった。特にダンスするシーンが。
映画が始まった。
君はまめだから、エンドロールも最後まで観る。
そうしている君の横顔が、どうにも愛らしかったことを覚えている。