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二級建築士は一級建築士より劣っている?: 住宅の設計

[シリーズ エッセイ]
建築を知っていても建築士が何者であるかを知らない

一般の方々の建築士に対する思い込みと誤解について、記事にしていこうと思います。

建築や建物のことを語っていらっしゃる方は多いと思います。
でも建築士については、あまり語られていないと思いますので、このシリーズでは、建築士がどういった仕事をしているかを、記事にしていきます。
世間の方々が考えていらっしゃる建築士の姿と、実際の姿に、開きがあるのを感じています。
これから建築士を目指す方々のためにも、乖離を少しでも埋めていきたいと思っています。
※私個人の偏見も入っています。ご了承ください

今回は住宅設計について、一級建築士と二級建築士の立ち位置などの観点から、ざっくり、お話をさせていただいます。


一般の方が建築士とかかわるのは、ほとんどの場合、ご自身の住宅を建てる時では無いでしょうか?

先日、こんな話をお聞きしました。

「以前、家を建てようとして、知り合いの設計事務所へお願いしたけど。その時の担当者は、二級建築士さんだったんですよね」
その方は、担当が二級建築士だったからという理由で、残念そうにおっしゃっていました。

計画されていたのは、木造二階建ての専用住宅です。

多分、世の中の建築士さんの頭には、?マークが浮かんでいるところだと思います。
ですが、一般の方の建築士に対するイメージは、こんな感じだと思います。

二級建築士だから、一級建築士より劣っているに違いない。
自分の家は、一級建築士に設計してもらいたい。
(あくまでも、一般の方々の思い込みを推測した上での、私が考えるイメージです)


二級建築士は都道府県知事が交付、一級建築士は国土交通大臣が交付するという違いはありますが、どちらも国家資格です。


一級建築士と二級建築士の違いは、設計できる建物、そして規模です。

建築士法で明確に定めがあります。

一級建築士でなければできない設計
(面積は延べ床面積)
・学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーデイトリアムを有しないものを除く。)又は百貨店の用途に供する建築物で、500平米を超えるもの
・木造で、高さ13m超え、又は軒高9mを超えるもの
・鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、レンガ造、コンクリートブロツク造、無筋コンクリート造で、300平米超えるもの、高さ13m超え、又は軒高9mを超えるもの
・1000平米超え、かつ、二階建て以上の建物

高さ13m、又は軒高9mはだいたい三階建てが収まる高さになります。

つまり、住宅の新築で一級建築士の資格が必要になるのは、四階建て以上や、木造以外で延べ面積90坪を超える住宅です。


国土交通省が定める「住生活基本計画」による、人々が豊かに暮らすために、必要な居住面積というものがあります。

四人家族の生活には、95~125平米。
坪数に換算すると、約29~38坪です。
※一人増える毎に +20~25平米(6~7.5坪)くらいになります。

あくまでも、公的機関の指針ですので、必要な広さの感覚は人それぞれですが、一級建築士の資格が必要になる規模の90坪超えの住宅は、一般的に言えば豪邸です。


『自分の家は、一級建築士に設計してもらいたい。』
一般的な規模の住宅を計画しているなら、この思いは、全く意味のない願望なんです。


では、こちらはどうでしょう。
『二級建築士だから、一級建築士より劣っているに違いない。』

二級、一級と、どちらも、建築士試験を受験した私の感覚では、確かに二級のほうが試験そのものは、格段に易しかったと思います。
(二級を受験した時は年齢も若く、受験勉強に割く時間も取れていました。一級の時はその逆でしたので、難関さが増していたという背景もあります)

難しい試験に合格できた人にだったら、間違い無く、希望の家が設計してもらえるのでしょうか。

一級建築士も二級建築士も、どちらでも、住宅を建てるのに必要な知識は持っています。

私は資格よりも、その建築士さんが、それまでどんな設計をされてきたかのほうが、重要だと思います。
また、住む人の意見や要望を、ちゃんと設計に反映できる建築士さんを選ぶことのほうが、肩書きより大事だと思います。


実際、私の友人で、公共建築ばかり設計してきた一級建築士さんは、一級の資格を持っていても、自分の住む家ですら、設計することができないと言って嘆いています。

私自身の話ですと、二級建築士を取得してからハウスメーカーに入り、住宅ばかり設計していた頃は、一級建築士の資格が無いからと言って、業務に差し支えたことはありませんでした。

一級建築士の資格を取ろうと思ったのは、共同住宅(アパートなど)の設計職へ転職してからです。

正直、住宅を設計する上で一番大切なスキルは、建築士の資格より、お客様の想いに寄り添うことだったと思います。
それは、その建築士個人の、仕事に対する向き合い方に表れることだと感じます。


住宅設計の仕事をしたいと考えている方ただ、がむしゃらに一級建築士を目指すのでは無く、ご自分の目的に合った努力をされるのが良いと思います。
ですが、住宅設計の業界内でも、二級建築士は軽く扱われているのも事実です。
住宅設計の実務では、一級建築士の資格は、ほとんど必要無いと、皆、分かっているのにです。

この先も住宅しか設計するつもりが無い設計士さんで、二級建築士の資格を持っているにもかかわらず、一級建築士の資格が欲しいと思っている方は、ご自身のポテンシャルを証明したいためだけで、試験勉強に取り組まれていませんか?
(大豪邸を設計するのを目指している方の目に触れてしまっていたら、すみません)

ご自身の人生に必要なことと思われるなら、無駄なことは何も無いと思います。

会社で一級を取得しろと言われている場合や、昇格の条件だったり、まあ、いろいろ立場もありますよね。

ただ、受験勉強にばかり意識がいって、普段の業務が疎かになっている方も、何人か見てきましたので。((( ^ _ ^ ; )
そうなってしまったら、本末転倒だと思います。


これから住宅を建てようとお考えの方
ご自分の大切なお家の設計を任せる建築士です。
肩書きに惑わされず、人柄と設計に対する誠実さを見極めて、建築士を選ばれることをお勧めします。


冒頭の方は結局、別の理由で、新築を諦めました。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、お会いしましょう!

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橋尾 京果
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