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カラーダイヤモンドの選び方。(クラリティのお話)

フォロワー様やお客様より、カラーダイヤモンドのクラリティについてのお問い合わせを数多くいただきます。今後カラーダイヤをご検討される皆様にとり一つの指針となれば幸いと、今回は「クラリティ」の見方、評価についてお話しさせて頂きます。

結論を申し上げますと、カラーダイヤモンドのクラリティは「Iクラス(肉眼で傷が見られる)」がスタンダードです。
何故なら、カラーダイヤに於けるクラリティ評価は、無色ダイヤのそれとは異なるからです。

そもそも色の美しいカラーダイヤは、無色のダイヤよりずっと稀少性が高く、なかなか採掘されないことは皆さんもご存知のとおり。絶対数が少ないがため「カラー(の美しさ)」が、最重要評価項目であり、カット、クラリティ評価は二の次、三の次とされます。

稀少であるがゆえ、カットを極めるとその分石目は減り、かつ色が悪くなる可能性があります。そのため、色が最優先事項なカラーダイヤモンドは、無色ほどにカットは重要視されず、色ノリ良く見えるファンシーカットが多いのです。

そして、ここから本題ですが、カラーダイヤモンドの美しいカラーの着色要因は、それぞれ異なり、また明確な原因が不明な点も多いのですが、一般的には、不純物の混入による着色が多いとされています。そのため、内包物のあるものも多いです。

ここで、一つの例を挙げます。

仮に、fancy pinkで以下のような石AとBが二つあります。

A)細かいカーボンが多数散っている。肉眼でカーボンが散見され、見た目あまり美しくない。

B)ホクロのようなカーボンが石の端側に一点あり。しかし石の中央部分、テーブル面はとてもクリアで美しい輝きを放つ。カーボンは、石の輝きに紛れてさほど目立たない。

上記、どちらもクラリティは「Iクラス(肉眼で傷が見られる)」です。

しかし、AとBでは「傷が石に与える美観」が全く異なることを、おわかり頂けますでしょうか。Aは、明らかに肉眼で傷が石の輝きを妨げ、見た目に難のある石。Bは、端側にホクロのようなカーボンがぽつんとあるのみで石の美観にほぼ影響がありません。

このように、同じ「Iクラス」にも、石それぞれの傷、美観の個体差は、大袈裟に言えば「天と地」ほどあるのが実情です。
このBのような美観を損ねぬIクラスは「程度の良いIクラス」、「SI寄りのIクラス」であり、鑑別機関によってはSIがつく可能性もあります。

よって、私は「Iクラス」という理由だけで、色の良いカラーダイヤモンドを「良くない」と切り捨ててしまう考えは、全力で「NO」と申し上げたいです。その考えかたは、本当に勿体ない。ただでさえ稀少なカラーダイヤで、このクラリティ至上主義は選択肢を確実に狭めます。

確かに同じfancy pink でIクラスとVVSクラスのふたつがあったら、VVSのほうが良いと思う方は多いでしょう。しかし、この場合、価格が圧倒的に異なることを先ず理解して下さい。例えば同じ石目、fancy pinkのIクラスが10万円であったとし、同程度のVVSは極端な話、その5倍10倍してもおかしくないのです。

勿論、先の例のように肉眼でカーボンやクラックだらけで、輝かない粗悪石は論外です。しかし、石の端に僅かなカーボンこそあれ、美しい輝きのあるfancy pink Iクラスと、ほぼ無欠点のfancy pink VVSの間に5倍10倍の価格差があったら、如何でしょうか。
お金が無限にある方を除き、お値打ちな前者を選びたくなる方が多いのでないでしょうか。少なくとも私は前者に魅力を感じます。

誤解なきよう、私はIクラスをイチオシなわけでありません。

高額なカラーダイヤモンドに於いて、「美しい色のダイヤモンド」をできるだけお値打ちに皆さんへお届けするには、Iクラスであるという理由のみで切り捨てず、「実際の石が持つ傷の程度、美観への影響」を考えたうえでご判断頂きたいとお伝えしたいだけです。これで、価格も含め石の選択肢の幅はぐんと広がります。

カラーダイヤモンドは、「カラー」が絶対であることに違いありませんが、傷を気にするのも我々日本人の性質から当然のことに思います。
しかし、「無色のダイヤモンド」と全く性質の異なるカラーダイヤモンドに「必要以上に無傷であること」を求めるのは、実にナンセンスです。

無論、いくらかかっても構わないから綺麗な石、VSやVVSをお探し、お求めになることを全く否定いたしません。
実際そこに重きを置くコレクターもいます。しかしながら、美色のそうした石は当然ながら圧倒的に少ないため、高額となり、ご希望の石がいつ見つかるかもわかりません。

宝石とはパーソナルな趣味の最たるものですから、お好きなものをお求めになるのが一番です。

しかしながら、カラーダイヤモンドは稀少であるがゆえ、その出会いは一期一会です。
今、目の前にある石を逃したら、同じ程度の石が次にいつ見つかるかわかりませんし、見つからないかもしれない。
カラーダイヤモンドは、そうした性質の石です


Iクラスがスタンダードなのですから、そのうえの「SI(肉眼で傷が見えない)」は、カラーダイヤモンドにしてみれば、全く問題のない良好なクラリティです。
しかし、このSIも先に述べたように「石による個体差」があります。よってSIクラスでも、どう見ても肉眼でバリバリに傷が見えてしまうような石や石の耐久性に関わる致命的な傷は論外ですが、肉眼で問題なく、ルーペで認識できる「通常範囲のSIクラスの傷」であれは、全く無問題の良好なクラリティであることをまず、皆さんにご理解頂けますと幸いです。

ちなみに上記のIクラス、SIクラスの考えかたは、カラーダイヤモンドに限らず無色ダイヤにも当てはまります。大粒をお値打ちに入手されたい時などは、この考え方を思い出して頂けるとよろしいかと思います。

あくまで、クラリティグレードは指標の一つに過ぎませんので、そこに必要以上に囚われることはありません。

ゆえに、私は石のクラリティは、傷、カーボン、クラックなどの詳細の情報を必ず記載するように心がけます。そして、ジュエリー加工の際に、割れてしまうようなリスクのある石はまず扱わないことをポリシーにしています。

きちんと石の傷についてはご説明させて頂いたうえで販売しているつもりですが、言葉足らずな部分もあるかもしれません。
その場合、どうぞ気兼ねなく、ご納得いくまでお問い合わせくださいませ。

私の長年の夢、それは、自分で仕入れた良質なカラーダイヤモンドを、シンプルで使いやすいジュエリーに仕立て、お値打ちにカラーダイヤモンドファンへお届けすることです。よろしければ、ご支援頂けますと幸いです。