カラーダイヤモンド初級・色相④(鑑定書やソーティング・こんなカラーグレードには気を付けろ!)
前回のカラーグレードの「副次色」に関連し、カラーダイヤモンドを選ぶ際に、お伝えしておきたい少しだけ大切なことをお話します。
皆さん、そもそも「ソーティングや鑑定書のグレードは、正しいか?」という疑問をお持ちになられたことはありますか?
「何を言っているの?正しいに決まってるじゃない!」という声が聞こえてきそうですが、今回、実はそうとも言えないこともあるという残念なお話をさせて頂きます。
グレーディング結果の正確性や信頼性は、付属する鑑定書やソーティングが
どちらの機関のものかにより大いに変わります。
ダイヤモンドの鑑定に於ける世界的権威はGIA。
日本で信頼の置けるカラーダイヤモンド鑑定に於ける三大機関はGIAを含むCGL(中央宝石研究所=中宝)、AGT。
この三大機関の鑑定書やソーティングなら安心です。
次はB鑑のDGL(ダイヤモンドグレーディングラボラトリー)あたりですが、B鑑以下は、A鑑に比べ、鑑定が甘いのが常です。
鑑定が甘いということは、例えば、B鑑C鑑の「fancy pink」が、A鑑では「light pink」(2ランクダウン)や、
「very light pink」(3ランクダウン)なんてなることも、ままあるのです。
勿論、上記以外にも(カラーダイヤモンドで)信頼の於ける機関は複数あるとは思います。
しかしながら、私自身は上記四つの機関の鑑定書、ソーティングしか所持しておらず他所を知らぬため、言及を避けます。
ここで、ひとつの例を挙げましょう。
某フリマアプリで、大きさも色も良い感じの綺麗なピンクダイヤモンドが二つ、出品されているのを見かけたとします。
しかし、どちらもA鑑B鑑以外の鑑定書やソーティングが付いています。
ひとつは、英語表記のそこそこ立派な三つ折りのレポート(※GIAでない、どこかの国のどこの機関か不明)が付属。
もうひとつの石には、日本のどこかの機関の簡易ソーティングです。
「どちらも鑑定書(レポート)やソーティングが付いているから安心ね!!」と思った方は、残念ながら、騙される可能性があります。
「え?A鑑B鑑でないけど、レポートやソーティングがついていれば、カラーダイヤは安心でしょ?」
否、答えは「NO」です。
何故なら、海外(英語圏)、特に中国などアジア圏のレポートには、まるきりデタラメなものが存在します。
(勿論、海外にもGIA以外に著名な信頼の於ける機関も複数存在します。
また、あまり名を知られなくとも、きちんとした機関も存在することでしょう。
ただ、その「きちんと」レベルも、日本のB鑑以下のようにカラーグレードを実際より
2~3ランク甘くつける、というまだ可愛らしいレベルから、
全くのトリートや合成石をも「ナチュラル」と判定するような、いい加減なところも存在します。
(恐ろしいことに、そうした機関は、詐欺目的の架空の機関である可能性もあります)
そして、こうしたデタラメなレポートやソーティングには、実におかしな、気を付けるべさまざまなポイントがあります。
その全てを説明すると、けっこうなボリュームになるため、
一旦、ここでは「副次色」繋がりで、おかしなカラーグレードの記載があるケースに絞ってご紹介します。
「GIA基準を逸脱したカラーグレード」
先ずは以下カラーグレードをご覧頂き、そのカラーをご想像下さい。
1)fancy violet pink
2)fancy pink gray
3)fancy greenish orange
4)fancy yellowish pink
上記は実際に、私がネット上で見かけたことのある例です。
カラーダイヤモンドに精通された方なら、一発でおかしな点に気が付くと思います。
しかし、最近興味を持たれた初心者の方なら、一見もっともらしく書かれた英語表記、スルーしてしまうかもしれません。
それでは、各「謎グレード」の説明をしていきます。
1)fancy violet pink
稀少カラーであるviolet(スミレ色)と、ピンクが同等だけど、かろうじてピンクが強い。あり得ない!
2)fancy pink gray
ピンクダイヤの副次色にgrayはあるが、ピンクとグレーが同等でかろうじてグレー。あり得ない!
3)fancy greenish orange
fancy greenish yellowやbrownish orangeは確かにあるけれど、「緑がかったオレンジ」?あり得ない!
4)fancy yellowish pink
yellowish greenやyellowish orange、orangish pinkはあるけれど、「黄色がかったピンク」?あり得ない!
おわかり頂けましたでしょうか?
これら全て、どれも「GIA基準」を逸脱した、笑えるほどにあり得ないカラーグレードがつけられています。
実に嘆かわしく、ひどいものです。
前回、ピンクダイヤモンドの副次色について述べましたが、
ピンク以外のグリーンやブルー、イエロー、オレンジ、バイオレットダイヤ等、それぞれの色相につく副次色はGIA基準で決まっています。これは数も多くなく、さほど覚えるに難くありません。
(画像 fancy yellow green )
「ダイヤモンドはGIA」と世界に言わしめる絶大なる権威のGIAが定めた「GIA基準」を大きく逸脱する副次色の存在を、私は認めません。
そして、このGIA基準をきちんと順守したグレーディングをおこなっているのが、A鑑、B鑑です。
(C鑑も全てが上記のようなデタラメなわけでなく、きちんと順守しているところもあると思われますが、
すみませんが、私はC鑑を詳しく存じ上げません)
もし、貴方がフリマアプリで怪しいソーティングの付いた石を、どうしても気に入ってしまったならば、どうかご自身で、まともな機関へ再鑑定に出す手間を惜しまぬ覚悟を持ちご購入ください。
そして、その結果万が一「トリートメント」と鑑定されても、自己責任となることを、忘れないでください。
以上、高額なカラーダイヤモンドを選ぶうえで
「どちらの機関の鑑定書やソーティングを選ぶべきか」が如何に重要であるかを、ご理解頂ければ幸いです。
私の長年の夢、それは、自分で仕入れた良質なカラーダイヤモンドを、シンプルで使いやすいジュエリーに仕立て、お値打ちにカラーダイヤモンドファンへお届けすることです。よろしければ、ご支援頂けますと幸いです。