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「fancy white」ホワイトダイヤモンドって?②ホワイトの鑑定、クラリティについて

お待たせしました。ホワイトダイヤモンドについて、以下の続きです。

 前回、美しく魅力的なfancy whiteダイヤモンドは元来工業用ダイヤへまわされるはずの原石の中から、偶然の産物として運良く産出される奇跡のダイヤモンドであるとお話しました。今回はその稀少なホワイトダイヤモンドの鑑定「クラリティ」に焦点を当て、お話しさせて頂きます。

以前より、私は皆さんへお伝えしてまいりましたが、基本的にホワイトダイヤモンドのクラリティは「Iクラス」がスタンダードです。
これは、ホワイトダイヤのもやのように白く濁ったクラウド性質によるもの。

一般的に、皆さんのイメージでカラーレスダイヤのIクラスは、傷が多くカーボンが目立つなど、マイナスなものが多いことと思われます。

しかし、ホワイトダイヤモンドはその「ホワイトカラー」であるがゆえ、Iクラスが標準なのです。

過去、私はホワイトダイヤモンドの「VS」をお探しのフォロワー様よりご連絡をいただきました。そして、私は先の「ホワイトはIクラスがスタンダード」をご説明し、お探しのクラリティはまず難しい旨をご案内しました。

ここで、ホワイトダイヤをお好きな皆さんのなかには、きっとこう思う方もいらっしゃることでしょう。

「嘘つけ、ホワイトダイヤでVSを私は見たことあるぞ」

はい。仰るとおりです。世の中広し、たいへん稀少なホワイトダイヤモンドですが、実は「VS、またはSIクラス」も存在します。しかし、おそらくその数は限りなく少ない。
では、何故Iクラス標準の筈のホワイトにVSやSIが存在するのか?私はこれから、その理由をお話しさせて頂きます。

それには、ホワイトの鑑定基準についてお話しする必要があります。
ちなみに私は鑑別機関の人間でありませんので、実際にその基準がいついつから等の詳細はわかりません。よって、あくまで以下はカラーダイヤ愛好家の視点、且つ仕事で携わる者として私が知りえた情報をお話をさせて頂きます。

日本のA鑑で、おそらく今から約10年ほど(※前後可能性有り)前まで、実は美しいホワイトダイヤモンドには、VSやSIのクラリティが付くことがありました。それはクラウドが均一で、他に傷やカーボンがなく透明感のある美しいホワイトダイヤモンドに対してです。
しかし、その後GIAが「ホワイトダイヤモンドは、そのクラウド性質ゆえIクラスがスタンダードである」旨に基準を変更しました。
以降、日本のA鑑はGIAの基準に倣い、「ホワイトダイヤは基本Iクラス」と鑑定するようになりました。

おわり。

以上です。しかし、これだけでは、おそらく皆さんの疑問は解消しないと思われますので、以下は補足。

現在Iクラス標準であるホワイトダイヤですが、勿論その美しさは石によりさまざまです。
よって同じI1でも、ホワイトが均一で傷もなく非常に美しい石がI1、もしくは傷やカーボンが目立つ石もI1、等々存在します。
逆に、傷はほぼないにも関わらず、白のクラウドの濁りが強くやや透明感が欠けるものは「I2」になります。
通常カラーレス「I2」は、傷やクラックバリバリ~な石が多いですが、ホワイトダイヤのI2の場合、先の理由で一概に傷バリバリ粗悪とは決して言えないのです。(無論、傷だらけのI2ホワイトも存在します・・)

このように、ホワイトのクラリティは、他のダイヤと価値基準の考え方が若干異なります。ご注意ください。
(※ちなみに、私が個人的所有のお気に入りのホワイトダイヤはⅠ2です。傷はほぼなく、ホワイトの濁りがやや強い石ですが、それがホワイトらしくもありとても美しいです。はい)

もう一つ、大事な話を。
最近の新しい日付の鑑定(日本A鑑)で、ホワイトのVSやSIクラスが存在するケースがあります。
これは、基本的には実は過去(10年かそれ以上前)に一度、その石に同一機関で「VSやSI」のグレードが出ていることが前提となるものが多いと推測されます。

GIAが基準を変更する以前、A鑑で美しく均一で傷の少ないホワイトダイヤにはVSやSIが出ていました。現在の基準ではおそらくそうした石もIクラスとなるでしょう。(きっと過去の結果を黙って出せば、そうなります)
しかし、過去にVSやSIの出た石を、現在、依頼者がその結果を持ち「過去グレードを参考に、同グレード希望の旨を添え」同一機関に出すとどうなるか。
日本のA鑑は親切なので、過去自分らが出した優良クラリティをそのまま引き継いでくれる可能性が高いです。(絶対とは言えませんが、可能性として)

よって、新たな日付のソーティングには過去の優良グレードが引き継がれ、現在の基準ではまず出ないであろう「VSやSIのホワイトダイヤモンド」が存在することとなります。

ここで、冒頭の話に戻りますね。「ホワイトダイヤのVSが欲しい」と思われる皆様、この話をどう思われましたでしょうか。

紙に書かれたグレード、それだけでは決して理解できない石の美しさというものは確実にあります。これは石の美しさが、一概にグレードに左右されるものでないということを、おわかり頂けましたでしょうか。

ちなみに、私は過去に「VSやSIが出たホワイトダイヤ」は、やはり、ホワイトダイヤの中でもひじょうに上質で美しい石に違いないと考えます。
しかしながら、今の基準でIクラスとなるホワイトダイヤの中にも、同様に上質で美しい石も存在すると考えます。(他カラーにも言えますが、Iクラスだからダメと切り捨てる考えは、本当に勿体無い)
それだけ、Iクラスの中でも美しさの個体差の幅はとても広いのです。

今回、私がこの話をするに至った理由は、新入荷のホワイトダイヤモンド3点を販売するにあたり、一石、SIクラスのホワイトがあったためです。

カラーダイヤモンドの仕入の際、私は古いソーティングは新しく取り直す(更新する)よう、心掛けています。
よって、今回のSIホワイトは、仕入時に約10年ほど前のソーティングが付いておりSI1判定でした。
石を見ると実際、傷もカーボンもほぼ皆無、クラウドは均一で、すっきりとした透明感のあるひじょうに美しいホワイトダイヤモンドです。

この石を、今年あらためて「前回の結果を参考に」更新にかけた結果、元SI1は「SI2」となりました。おそらく黙って出せば今ならI1を出すのでしょうが、過去の結果があるがゆえのギリギリの判断かと思われます。
SI1もSI2も、仮にI1でも、この石が美しい石であることに、何ら変わりはありません。
ちなみに、仮にGIAが、同様に過去SIを取ったホワイトを今出したら、おそらく「基準変更」どおりI1になるだろうと思います。

このホワイトダイヤモンドのお話を通じ皆様にお伝えしたいことは、
紙のグレードだけに囚われることなく、ホワイトに限らずそれぞれの石の持つ美しさを、よく見てあげてほしいということです。

私は、紙のみではわからない石の美しさや魅力を、皆さんに如何にわかりやすくお伝えすべきか、日々努力しているつもりです。
今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。

私の長年の夢、それは、自分で仕入れた良質なカラーダイヤモンドを、シンプルで使いやすいジュエリーに仕立て、お値打ちにカラーダイヤモンドファンへお届けすることです。よろしければ、ご支援頂けますと幸いです。