時空を超えて
「かつての実家」を書き終えてよーこちゃんにメールを送ると、すぐに電話が来た。
こちらは午後だけど、向こうは朝の8時。爽やかな空気が電話越しに伝わってくる。
私が綴った夢の世界を読んでくれての感想は
「ちゃんと言った通りセリフ書いてくれてるーってなぜか思った」
そして夢の中で彼女が乗っていた緑色の小さな車について
「あれね、コガネムシだと思うよ」
と言った。
4年前に私の父が他界してから、よーこちゃんの部屋にはコガネムシが現れるようになった。
私と同じサイキックな彼女は、部屋に置いたペットボトルが勝手に見たこともない形に変形したりする。
最初にコガネムシが現れたとき私の父だと感じて、繋がってみたらメッセージが流れ込んできたそうだ。
「サチコと仲良くしてくれてありがとう。サチコをよろしくお願いします」
コガネムシの父は、少し疲れているように見えたらしい。
よーこちゃんは私の記事を読みながら、あの世界の緑色の車に、コガネムシと同じエネルギーを感じたと言う。
よーこちゃんが日本にいた頃はよく「あの世界思い出しごっこ」をした。
色々なクリスタルの中や、木漏れ日の芝生、ラメの光り方。
そういうところに「魂の故郷のかけら」を見つける遊びをよくしていたのだった。
何年も前によーこちゃんが見た夢の話がある。
夢の中で私とどこかに座り込んで喋っていると、UFO界のランボルギーニみたいな乗り物が突然現れ、思いっきり横付けしてきたらしい。
「あの〜、会員になりますか?」
ランボルギーニUFOの中の人はそう言った。
「ちょっとさっちゃん!ついにお声がかかったよ!やっと会員になれるね!」
と大喜びして、私たちは晴れて「会員」になったらしい。
それは私たちが知り合ってすぐの、まだ遊んだりしてない頃のことだそうだ。
久しぶりの電話で、お互いに話したいことが尽きない。
ところが何度も不思議なことが起こるので、なかなか話が先に進まないのである。
例えば私があるエピソードを話す。
そこでキーとなる「あるセリフ」を言うと、彼女はすぐに「謎が解けた!」と言う。
「そのセリフ、彼(外国人の夫)がこの前カタコトの日本語で何度も何度も言ってて、なんでそんなこと何度も言うんだろうって謎だったんだけど」
そっちの情報拾っちゃってたんだね、と笑う。
私が昨日なぜかオウムとかヨウムが喋る動画ばかり観てたと話せば、電話の向こうから鳥の鳴き声が聴こえてくる。
どうやらヨウムを飼い始めたそうだ。
お互いの生活を重ね合わせると謎が解けることばかりで何度も驚いた。
数日前に私はなんとなく人参の絵文字をメールの度に何度も彼女に送っていたのだが、
「あれはメッセージだった。あの時に人参をたくさん買っておけば良かった」
ギリシャ料理は人参と玉ねぎがなければ美味しく作れないのに、ロックダウンで人参が手に入らなくなって本当に本当に困っていると言っていた。
やっぱり国も時間も次元も超えて、私たちは繋がっているのだろう。
それは遠くの点と点が線で繋がるのではなく、お互いの世界がそのまま重なり合っているということ。
次元も惑星も超えて一緒に暮らしている父と母のように。
あなたがひとりミルクティーを飲んでいる横で、私が緑茶を飲んでいるかもしれない。
私がテーブルに置いた本を、あなたが本屋で手に取るかもしれない。
それは一部の限られた人だけの話ではなく、すべての人がそうなっている。
だから家にひとりでいても、ひとりじゃない。
大切な人に会えなくても、重なり合っていることは事実なのだから。
星野源「うちで踊ろう」らくがきゆるアニメ作りました。