レンデンバッハが廃業に
レンデンバッハが廃業になるいうニュースが革靴界隈で話題になっている。
ピンとこない人には興味が無いであろう話だが、革靴に使われる高級なレザーソール(革底)を作っているドイツのタンナーだった。正しくはジョー レンデンバッハ(Joh.Rendenbach jr.)という。
私は実際にレンデンバッハのソールが使われた靴を履いたことは無いのだが、いつかは履いてみたいと思っていた矢先なので残念に思っている。
とは言え、すぐに在庫が無くなるわけではないので、次回のオールソール時にはまだ市場にあるのではないかと思っている。
レンデンバッハとは
ここからはレンデンバッハの何が凄いと言われているのかについて書きたい。
靴の底は歩く度に削れていくが、レンデンバッハのレザーソールは耐久性が非常に高いことが特徴である。
そもそもレンデンバッハは皮(牛皮)を「革」に鞣すタンナーである。
タンナーは国内外に様々存在するが、レンデンバッハの場合は鞣す方式が特殊であり、オークバークを使用する。樫(オーク)の樹皮(バーク)を使うタンニン鞣しの一種である。
タンニン鞣し
タンニンは植物に含まれ、タンパク質と結合する。赤ワインに含まれているやつである。
赤ワインは白ワインとは異なり、ブドウの種皮を使っているのでタンニンが多く含まれる。渋みを感じるのは口の中のタンパク質に作用するからだそう。
そのタンニンを「皮」に使うと、不要なタンパク質を除去して腐敗しない「革」ができあがる。
歴史的に鞣しに使用されていたようで、名称もタン(鞣し)に由来する。
タンニン鞣しで出来上がった革は、後述のクローム鞣しの革と比較して、丈夫であり経年変化が起きやすいという特徴がある。
その一方で、タンニンが入ったピット槽に漬け込んで鞣すため、鞣しの工程に最低1ヶ月はかかるとされる。
クローム鞣し
タンニン鞣しと比較されるのがクローム鞣しだが、クローム鞣しの方が柔らかくて伸縮性のある革ができる。
靴のアッパーによく使われているのは、クローム鞣しでできた革である。
他にも特徴はあるが、ここで重要なのはクローム鞣しは比較的短期間で完了するということだ。
クローム鞣しの場合は早ければ1日、長くとも5日くらいで鞣しの工程は完了するそう。
オークバークを使ったタンニン鞣し
では、レンデンバッハのオークバークを使ったタンニン鞣し(オークバークタンニング)の特徴はというと、非常に長い時間をかけていることである。
全体の工程は様々に分かれているが、オークバークを入れたピット槽に漬け込んでいる期間だけで約1年になる。
長い時間をかけた結果、タンニンが強く結合し、繊維が詰まった革が生まれる。それを耐久性の高いレザーソールとして切り出しているというわけだ。
代わりのタンナーは?
レンデンバッハがいなくなっても、代わりはいるといえばいる。
他にオークバークタンニングを行っているタンナーとしては、イギリスのベーカー社やドイツのマルティン社がある。
特にベーカー社は、財布などの革製品向けに供給しているブライドルレザーが有名だろう。
細かい工程はレンデンバッハと異なるにせよ、レンデンバッハと同じように耐久性の高いレザーソールはまだ存在するということになる。
ただ、個人的にはそのようなタンナーも今後継続するかについては不安を覚えている。
レンデンバッハが閉じる背景についてはまだはっきり分かっていないが、勝手に推測すると以下のようになる。
・原皮の供給が少なくなり原価があがっているから
・革靴の需要低下に伴い、レザーソールの販売も低調になったから
・コロナウイルスの影響で生産に支障が出て経営に影響したから
そもそも近年の牛肉消費量減少に伴い、牛皮の供給は減り、革の値段は上がっている。
そのためタンナー業界が縮小していくことは間違いなく、今後全てのタンナーが現在の規模を維持していくことは不可能だろう。
特にオークバークタンニングのような特殊で時間のかかる手法を用いているタンナーは尚更リスクが高いように思える。
個人的には革製品が好きなので、供給が少なくなっていくことは寂しいが、これも時代の流れだろうか。
その後、キルガー引き継ぐことになった件を記事にした。