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【R5予備論文】 民訴法第1問(最判S52.7.19) 答案検討
社会人受験生です。2024年度も後半に入りましたね、
繁忙期の方も多いと存じますが、一緒に、ぜひ頑張ってまいりましょう!
小生は週末に予備過去問を消化していくプランでおりまして、良い学びのあった回は
こうしてnoteに残してまいる所存でございます。
*過去問プラン(2024.9.22時点)
Sep :R5
Oct :R2~4
Nov :H29~R1
Dec :H26~H28
▶︎【R5民訴】70min測って解いた結果
設問1
1. Yの主張は、②訴訟が①訴訟と「同一の訴え(○○条)」に当たるため、却下を免れない、というものである。本問において、Yの同主張は不当であり、②訴訟は容れられるべきである。以下、理由を述べる。
2.(1) 同条が同一の訴えを禁ずる趣旨は、裁判所という貴重な公的資源を利用して行なった裁判も結果を蒸し返したり、相手方の応訴の煩をもたらしたりする行為を防ぐ点にある。そうすると、「同一」とは(ⅰ)当事者および(ⅱ)訴訟物の同一性をいうと解するのが相当である。
(2) 本問で②訴訟は、①訴訟と(ⅰ)当事者(XとY)(ⅱ)訴訟物(所有権に基づく土地明渡請求権)ともに同一であるから、却下されるべき、となりそうである。しかし、上記趣旨に鑑みると、相手方に、応訴の煩を被っても仕方のない事情、帰責性がある場合には許容される余地がある。
(3) Yは、原審敗訴後、控訴審において、真実Yの所有である乙建物につきA~C所有と偽ってXを誤認させ、その誤認に基づいたまま控訴審判決が確定している。そしてその後Yは、翻って乙建物の所有権を主張している。このようなYの主張の変遷には、訴訟上の信義則に反する面があり、Xが①と同一の②訴訟を再度提起することになったことにもやむを得ない事情があったと言える。
3. 以上より、Yの主張は不当であり、②訴訟は審理の対象とされるべきである。
以 上
▶︎振り返り
「同一の訴え」の条文番号・趣旨が曖昧なままだったと気づけた
「同一」が(ⅰ)当事者と(ⅱ)訴訟物の同一を指すことは記憶にあった【注:正確には(ⅲ)訴えの利益も】が、その理由が理解できておらず答案への起こし方に迷った
「同一の訴え」の前に、訴えの交換的変更について触れなければならなかったらしい
本問が判例(最判S52.7.19)の事例まんまであることを知らなかった
70minでは、第2問の問題文を読むところまでしか行けなかった(「同一の訴え」の条文探しに時間を浪費した)
▶︎インプット
A「同一の訴え」について
条文:262Ⅱ
趣旨:①判決に至るまでの裁判所の努力を徒労に帰せしめたことへの制裁、②濫訴の防止
内容:(ⅰ)当事者、(ⅱ)訴訟物、(ⅲ)訴えの利益、の同一性
理由:再訴の提起を正当ならしめる新たな利益/必要性がある時は、上記①②の趣旨が妥当しない(①裁判所のリソースをもう一度利用するだけの価値があるし、②訴権の濫用とは言えない)から、(ⅲ)訴えの利益もがダブっている場合を再訴禁止とする。
B「請求」の「変更」について
条文:143Ⅰ本文
概要:交換的変更につき、その性質は①訴えの追加的変更と②訴えの取下げのフュージョンであると解する(最判S32.2.28)。被告が異議なく①新請求に応訴した場合、②旧請求の取下げには同意したものと推定される。
▶︎自力再起案
設問1
1. Yの主張
Yは、②訴訟が①訴訟と「同一の訴え(262Ⅱ)」に当たるとして、②訴訟は却下を免れないと主張する。その前提としては、Xが控訴審において、Yに対する建物収去土地明渡請求(「旧請求」という。)「に換えて」Yの賃借権不存在確認訴訟(「新請求」という。)を提起しているところ、これが143Ⅰ本文のうち訴えの交換的変更にあたり、旧請求につき訴えを「取り下げた」場合に当たることを挙げる。
しかし以下のとおり、②訴訟は再訴禁止に触れないため、同主張は失当である。
2. 失当の理由
(1) 同項が「同一の訴え」の提起を禁止する趣旨は、(ア)裁判所という貴重な公的資源を利用して行なった裁判の結果を徒労に帰せしめることへの制裁、(イ)訴権の濫用防止、の2点にある。
(2) 上記趣旨に照らすと、再訴を提起する新たな利益や必要性がある場合にまでそれを禁止される謂れはないから、(ⅰ)当事者(ⅱ)訴訟物(ⅲ)訴えの利益の3点が同一である場合に限り、同項に抵触して訴えが却下されると解すべきである。
(3) ここで本問の①②訴訟をみるに、当事者はX及びYで同一((ⅰ)充足)、訴訟物は所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権で同一((ⅱ)充足)である。しかしながら、Xが②訴訟を提起するに至ったのは、Yが乙建物の所有権帰属先につき控訴審確定後に主張を一転させたことに起因する。すると②訴訟の段階で、再度Yを相手取って土地明渡請求をすることには新たな利益が認められる。
(4) 以上より、②訴訟は262Ⅱの「同一の訴え」に該当せず、Yの主張は認められない。
(お わ り)
*参考:
AGAROOT論証集
辰巳 R5 A答案再現&ぶんせき本