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【R3予備論文】民訴設問2から考える 「既判力の拡張」

民訴の過去問を何回やっても腑に落ちてくれなかった「既判力の拡張」を、
納得いくまで考えて、R3起案しました。
付き合ってくれた友人に感謝🍀

①問題文

【事例】
 Xは,Yに対して貸付債権を有していた(以下「本件貸付債権」という。)が,Xの本件貸付債権の回収に資すると思われるのは,Yがその母親から相続によって取得したと思われる一筆の土地(以下「本件不動産」という。)のみであった。不動産登記記録上,本件不動産は,相続を登記原因とし,Yとその兄であるZの,法定相続分である2分の1ずつの共有とされていたが,Xは,YとZが遺産分割協議を行い,本件不動産をYの単独所有とすることに合意したとの情報を得ていた。

 そこで,Xは,本件不動産のZの持分となっている部分について,その所有者はZではなくYであると主張し,本件貸付債権を保全するため,Yに代位して,Zを被告として,本件不動産のZの持分2分の1について,ZからYに対して遺産分割を原因とする所有権移転登記手続をすることを求める訴えを提起した(以下「本件訴訟」という。)。

https://www.moj.go.jp/content/001352747.pdf

〔設問2〕
 〔設問1〕の場合と異なり,本件訴訟係属中に,XからYに対して訴訟告知がされたものの,Yが本件訴訟に参加することはなく,XとZのみを当事者として訴訟手続が進行し,その審理の結果,Xの請求を棄却する旨の判決がされ(以下「本件判決」という。),同判決は確定した。
 本件判決の確定後,Yの債権者であるAは,その債権の回収を図ろうとし,Yの唯一の資産と思われる本件不動産の調査を行う過程で,既にXから本件訴訟が提起され,Xの請求を棄却する本件判決が確定している事実を初めて知った。
 Aとしては,本件不動産についてYの単独所有と考えており,Yに代位して,Zを被告として,本件不動産のZの持分2分の1について,ZからYに対して遺産分割を原因とする所有権移転登記手続 を求める訴えを提起することを検討しているが,確定した本件判決の効力がAに及ぶのではないか,という疑問を持った。

 本件判決の効力はAに及ぶか,本件判決の既判力がYに及ぶか否かの検討を踏まえて答えなさい。

https://www.moj.go.jp/content/001352747.pdf

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②答案作成

第1 Yに対して
 本件訴訟は、XがYに代位してZに提起した債権者代位訴訟であるから、Yは「当事者が他人のために原告…となった場合のその他人(民訴115Ⅰ②)」に該当し、当人には問題なく既判力が及ぶ。
 【※問題文から、Yに訴訟告知がされている点を拾って、「債務者には訴訟告知(民法423の6)により手続保障もなされている」と一言触れたかった。】

第2 Aに対して
 1. まず、115Ⅰ各号には、他の債権者Aに既判力を及ぼす根拠は見つけられない。では、解釈によってAに既判力を及ぼすことは可能か。
 2. そもそも、既判力が認められる根拠は、十分な手続保障による自己責任と、紛争の統一的・一回的解決の必要性にある。そうであるならば、既判力を、明文にない第三者にも及ぼすべき合理的必要性があり(①)、さらに不利益が及ぶ者に対して手続的保障がなされていた(②)と言える場合であれば、当該第三者への既判力の拡張を認めるべきである。
 3.(1) ここで本問をみるに、Aに既判力の拡張がなければ、Zのような第三債務者は、たとえXのようなある債権者との関係で一度勝訴(「前訴」という。)しても、他の債権者から再度債権者代位訴訟を提起されるリスクを負い続けることになり、法的地位の安定性が確保できない。また、もし他の債権者から別途債権者代位訴訟(「後訴」という。)を提起されると、その判決効が債務者に拡張される(115Ⅰ②)ため、前訴と後訴の矛盾のおそれも否定できない。
    したがって、Aに判決効を拡張させることには合理的必要性が認められる(①充足)。
  (2) そして、Aにも既判力が及ぶことでYには、Aに対する関係でも本件不動産の所有権を主張できないという不利益が及ぶところ、Yは、Xからの訴訟告知を受けたにもかかわらず参加しなかったという事情があるから、手続的保障は及んでいたといえ、同不利益を受け入れるべきである(②充足)。
 4. 以上より、解釈によって、他の債権者たるAにも既判力を拡張させるべきであると言える。

(以上)

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このあたりの難問をズバッと解消してくれるのが、きみどり色のロジカル演習本です🌳ありがとういつも🌳

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