
【R5 予備論文】刑法 答案検討
11月になりました🌾
すこしサボりモードに入りかけていた過去問起案ですが
2024年も残り2ヶ月かと思うと
ぞくっとして背筋が伸びました
気持ち新たに今週末からもがんばります
令和5年刑法です。
********
My答案
第1 設問1
1 事例1において、自説からは、甲に監禁罪(刑法(以下、法令名略)220条)が成立するという主張が妥当と解する。以下に根拠を述べる。
2 監禁罪の保護法益
(1)監禁罪につき、保護法益は身体の移動の自由であるところ、これは、移動したいと思ったときにいつでも移動できる自由すなわち可能的自由を指すと解する。
(2)反対の立場として、現実に移動をすることができる現実的自由と解する説もあるが、これでは客体がたまたま監禁の事実を認識しておらず移動の意思を生じなかった場合に犯罪が不成立となるところ、犯罪の成否をそのような偶然の事情にかからしめるのでは十分な法益保護が図れず、妥当ではない。
3 本問への当てはめ
甲は、某月10日午後5時5分に小屋の扉を縛り、午後6時までXを小屋から出られない状態にしている、その約55分間、Xは一度も目を覚ましてはいないものの、出入口として唯一である扉が縛られていれば、Xの移動の自由は潜在的に侵害されていることになる。
したがって、上記に展開した自説からは、甲の行為は「不法に人を・・・監禁した」場合にあたり、甲には監禁罪が成立する。
第2 設問2
1 Xの携帯を自分のリュックサックに入れた行為
(1)上記につき窃盗罪(235)は成立するか。「他人の財物」たる携帯をXの意思に反して自己の占有下に移していることから、構成要件該当性は認められる。では、主観的超過傾向としての不法領得の意思は認められるか。
(2)不法領得の意思は、毀棄・隠匿や、不可罰の利益窃盗との区別を図るべく必要とされる主観的要素で、①権利者を排除して権利者でなければできないような行動をとり、②経済的用法にしたがってその物を利用する行為を発現する意思を指す。
(3)本問では、甲は返還意思なく、権利者たるXの寝ているすきに携帯を自分のリュックに入れ込んで自己の占有下に移している(①充足)。また、たしかに甲は、毀棄の意思で「窃取」しているのであるが、GPSは携帯電話の枢要な機能であり、Xの主観においても、GPS機能の本来の効用である位置情報の特定機能をそのとおりに活用して捜索を困難にする目的があった(②充足)。
(4)したがって、甲には窃盗罪が成立する。
2 Xの首を絞めた行為
(1)上記行為につき、結果的にXが死亡していることから、「人を殺した(199)」ものとして殺人罪に問えるか。
ア 絞首行為には、それのみで殺人の高度な危険性があり、殺人罪の実行行為として認められる。
イ そして前述のとおり、X死亡という結果も発生している。
ウ では、実行行為と結果の間に因果関係は認められるか。因果関係は、当該行為が結果として現実化したことを理由に、より重い法的責任を問えるかという問題である。したがって、条件関係の存在を前提に、①当該行為の内包する危険性②介在事情の結果発生への寄与度、③実行行為と介在事情との関連度合いという要素をもって判断する。
本問では、絞首行為によってXが意識を失わなければ、崖下へ落とされることはなく、条件関係は肯定される。また、上記アのとおり絞首行為には殺害に至る危険性がある(①)。もっとも、崖下への転落による頭部外傷という介在事情の寄与度は大きい(②)が、絞首行為により意識を失ったり死亡したりした客体を崖下へ落とす行為は、犯罪の手口として異常ではなく時間的にも一連の流れとして行われたことが認められるから、両行為は密接に関連している(③)といえる。
以上から、絞首行為とX死亡の結果との間には因果関係が認められる。
(2)次に、甲としては絞首行為の時点でXが死亡したと軽信しているところ、実際には崖下への転落による頭部外傷が死因となっている。ここにおいて、故意は認められるか。故意責任の本質は、構成要件該当事実という規範に直面しながら、あえてその行為に及んだことに対する道義的非難にある。そうだとすれば、行為者が認識した因果経過と実際に進行した因果経過が、どちらも法的因果関係の範囲内にあれば、その食い違いは重要でなく、故意は阻却されない。
本問において、絞首行為からの死亡結果発生にも、崖下への転落行為からの死亡結果発生にも、法的因果関係が肯定されるから、故意は阻却されない。
(3)以上より、甲の上記行為には殺人罪が成立する。
3 Xのポケットから3万円を抜き取り自分のポケットに入れた行為
(1)3万円という「他人の財物」を「窃取した」ものとして窃盗罪(235)が成立するか。
(2)窃盗罪の保護法益は他人の財産に対する占有にあるところ、甲は上記行為の時点でXが死亡していると誤信している。そのため、窃盗の故意が認められないのではないか。この点、たしかに占有の意思・事実ともに認められない死者との関係では、同罪が成立しないとも思える。しかし、行為者が自ら殺害した者との関係では、死者の生前の占有を侵害していると観念できるから、殺害犯人には窃盗の故意阻却はないと解する。
(3)以上より、甲の上記行為には窃盗罪が成立する。
4 罪数関係
以上に見てきたとおり、甲には、窃盗罪2つ、殺人罪が成立し、それら3つの犯罪が併合罪(45条前段)となる。
以上
解いてみての所感
◼︎ ボリューミーすぎて圧倒的に時間足りない!
◼︎ 意識を失ったXを崖下へ落とした行為について、「2 絞首行為」の中で介在事情として検討済みのため、別途章立てて検討しなかった。過失致死 or 殺人(死体遺棄の認識であるところ、実際の殺人との間で保護法益の重なりない⇨故意阻却、の論述)をすべきだったかしら?