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月と森のサブマリン ①       赤松の森にて          

(森でひとり潜水艦)

■That was Akamatsu forest.■
…。
そう、
それはかなり前の事だ。
よくログハウスの本を見た。
素敵だ。
迫力の丸太の家。
…。
だがそれは憧れ。
遠い希望。
蜃気楼に揺れる夢。
…。
月日は流れた。
…。
本棚に何冊も建築本が並んだ。
それと共に、
脳に刻み込まれる欲望の萌芽。
…。
ログハウス。
だが金は無い。
安くあげる方法はないのか?。
やがて、
北欧の角ログキットに目が向いた。
…。
自分で組み上げれば安くあがる。
だが、
無残な写真を見た。
それは、
北欧から送られたコンテナ一杯分の角ログキット。
一時の気の迷いで注文してしまったのか?。
それが無残にも森に放置され、
雨風に打たれ、
ボロボロに腐り、
キノコが生え、
土に帰ってゆく…写真。
素人がやろうとして、
出来ずに、
森に放置したのだろう。
…。
俺には無理か?。
やがて、
自力で家を建てる人々の話を見つけた。
それぞれが、
様々な方法で家を、
悪戦苦闘しながら…。
造っている…。
…。
自分で家を造る人々がいる。
なるほど。
…。
なら、
俺も、
キットハウスを…。
角ログを積み上げる位なら出来そう。
だが、
基礎のコンクリートばどう打つ?。
水道や排水…。
電気配線?。
そして、
キットに入っていない家根。
…。
造れるイメージがぜんぜん湧かない。
…。
悶々とする日々。
そんな日々が流れた。
…。
ある時、
カナダの太平洋側の島に建てられた、
八角形の家の写真を見た。
…。
なんだこれは…。
脳内に大量のドパーミンが放出された。
…。
食い入るように見た。
…。
中央の太い柱から、
八方に梁が広がってゆく。
その梁の上に二階が乗る。
小さな傘の下に、
大きな傘が広がっている感じだ。
…。
カッコイイ-。
…。
森に降り立つ宇宙船。
八角形の家。
それを個人が自力で造ったという。
…。
その個人が自力で造ったという文に、
釘付け。
…。
自力でこんな家を造った人がいる。
…。
素敵だ。
…。
翌日。
過去に長い事勤めて貯めた金で買った、
田舎の赤松林に立た。
…。
…俺は、
ここに、
家を…。
造る。
自分で、
造ってやる。
…。
さらに翌日。
嫁に言った。
俺、あの林に家造る。
・え?。
家造る。
自分で造る。
・…自分で?。
ああ。
・出来るの?。
ああ。
…。
そして、
始まった。
建築など全く知らない素人が、
たったひとり、
無謀な建築冒険に走り出した。
…。

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