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月と森のサブマリン ⑪        板作り          

(森でひとり潜水艦)

…。
自作製材機のテスト運転で、
好調な滑り出しを見せたが、
しばらくすると、
製材機がグラグラ、
さらに歯が横に逸れ、
抵抗がマックスとなり、
やがて歯の回転が止まった。
…。
どうした?。
動け。
…。
何度やっても同じ状況に…。
…。
涙…。
…。
出だしが良かったから、
落胆は大きい。
ため息…。
これでは山のように積まれた丸太から、
建築資材の板大量生産なんか出来そうもない…。
紅の墜落。
カナカナとヒグラシが鳴くような悲しい時が過ぎてゆく。
…。
やがて、
諦めの風が吹き、
ゆっくりイスに座り空を見る。
能天気なカラスが鳴きながら飛んでゆく。
いいな~カラスは。
いやいや、
カラスもいろいろあるんだろうけれど…。
…。
構想では、
まるでソーセイジを包丁でサクサク切るように、
板が大量生産できると思ったのだが、
…。
やがて、
時は過ぎた。
…。
人間とは良く出来ている。
時間と忘却が味方する。
あのショックも数日後には、
何が原因なのか?。
グルグルと頭は回る。
さらに夢の中でも原因追求が続く。
そして、
まずはレール幅が狭すぎだ。
製材機がグラグラしてしまう。
次に、
丸太と帯ノコの歯の摩擦を減らす。
これらの課題を解決するべく、
材料を揃え、
次の週にはH鋼材のレールの他に、
製材機の頭側に、
新しいレールを取り付けた。
これでグラグラを防ぐ。
次に、
歯と丸太の摩擦を減らす為に、
潤滑液を入れたポリの手押し散布器を取り付けた。
製材機の歯に吹きつける改造だ。
上の写真の右が改造前、左が改造後なのだ。
さらに、
チェンソーで丸太を切って分かった事があった。
切れなくなったら歯を磨く。
すると再び切れる。
当然の事だ。
製材機も同じだ。
そこで、
帯ノコの歯をネットで5枚ほど購入。
切れなくなると即交換してみた。
すると、
切れる。
アハハ~、
次々と交換しては切った。
ほとんど人が通らない森の中、
休日となれば、
森の製材屋となって、
厚さ4センチの赤松の板材を作りまくった。
そして、
切れなくなった帯ノコの歯はどうするのか?。
それが、
いろいろな仕事があるものだと驚いた。
世の中に、
この帯ノコの歯を磨いたり、
歯が減るとその歯を溶接して盛ってくれる、
専門の人がいるのだ。
訪ねると、
田舎の町の片隅にあった。
需要があるのだろう。
帯ノコの歯が磨耗すると、
その業者に持ち込んだ。
…。
そして森の製材屋は、
休日の全てをつぎ込み、
我を忘れて板作り。

…。
つづく。

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