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『_C』 第五話 GIRL FRIEND

その後、

俺と橋本さんは無事メールを

交換することができた。

奈々未「      じゃあ
    18時に3階の渡り廊下で集合ねっ!
    何かあったらメールするから!」

「はいっ!!わかりました!!」

思わず勢いよく返事をしてしまった俺を見て橋本さんはツボにハマる。

奈々未「今までで一番声出てるじゃん(笑)」


「ななみーん!」

齋藤さんとも生駒さんともまた違った
女性の声が後ろから聞こえる。

奈々未「あー!かずみーん!」

橋本さんは笑顔で
「かずみん」という女性に手を振る。

「え!?この子は!?
 もしかしてななみんの彼氏!?!?」

彼女は笑いながら戯ける。

奈々未「もう!!すぐそうやってからかう!!」

かずみん「ごめん!ごめん!うそ!うそ!(笑)
     ○○くんだよね!?
       ななみんが密かに狙ってる…」

奈々未「ちょっとやめてよっ!!
    かずみん!!怒るよ!!
💢

かずみん「あはは(笑)じょうだんだって!!」

奈々未「次その冗談言ったら、
    かずみんの好きな人、
    ○○くんにバラすからね!!
💢

かずみん「ひぇー!!
   マジでそれだけは勘弁してください!!」

二人の会話のラリーが早すぎて、

全く話に入る隙がなかった。

奈々未「ほら!かずみんのせいで
    ○○くん困惑しちゃってるじゃん!
             ごめんね…!」

かずみん「ななみんがいるから、
     つい調子乗っちゃった…!
     ○○くんごめんね〜!!」

「いや…!俺は全然…!
 お二人とも仲良いな〜って思って
 見てました…!」

かずみん「まあななみんとは親友ですから〜!
     ね〜!?ななみん〜?」

彼女は橋本さんにベタベタくっつき、
少し橋本さんが呆れる素振りをする。

奈々未「まあ…そうだけど…。
    それよりっ!!かずみん!!
    ○○くんと初めましてなんだから、
   ○○くんに自己紹介くらいしなよっ…!」

かずみん「あ、そうだった!
     すっかり忘れてた!!ごめん!!」

奈々未「もう…!」

「私、ななみんと同じクラスの高山一実!!
 ○○くん、よろしくねっ!」

「○○です!
 こちらこそよろしくお願いします!!」

一実「違うクラスでも同級生なんだし、
   そんな堅苦しくなくていいよ!!
   特に私とななみんには
   タメ口で全然いいから!!
         ね!?ななみん!?」

奈々未「うん…!○○くん、
    私とかずみんには敬語じゃなくても
    大丈夫だからね…!
      少しずつでもいいし…!」

一実「そうだよ〜!
   じゃんじゃんタメ口使って〜!
   タメ口だとお互い仲深まるし!」

「あ、ありがとう…!」

俺が初めてタメ口を使ったとき、
橋本さんは嬉しそうに笑う。

奈々未「うわぁ!!
    ○○くんのタメ口初めて聞いたかも!!
    ありがとう〜!かずみん〜!」

一実「いいの!いいの!」

奈々未「ってか、
    かずみん来たってことは
    もしかしてあの件だよね!?」


一実「うんっ!!
   無事飾られるみたいだって!!」

奈々未「良かった〜!
    ○○くんにも特別に教えるね!
    実はみんなには隠してたんだけど、
    文化祭のアート展に
    私の作品が飾られることになったの!
    私とかずみんと担任の柳川先生しか
    知らないから誰にも教えないでね!」

一実「すごい作品だから
   ○○くんも楽しみにしてて!!」

「はいっ!
 楽しみに待ってます!」

奈々未「あはは(笑)
    また敬語に戻ってる〜(笑)」

「あっ!!ついっ…!」

一実「徐々にタメ口になるでも
   全然大丈夫だからね!」

橋本さんと高山さんは焦る俺を見て、
あははと笑う。

         高山さんも

         橋本さんも

         優しいな…。

        俺も中学生のときに

        こんな優しい人達と

        出会っていれば…。

         いや、今更

     後悔してもしょうがないか…。


一実「あっ!!ヤバっ!!
   5限から移動教室だったじゃん!!
  しかもあの化学の鬼教師の田中先生だよ!」

奈々未「えっ…!?嘘っ…!?
    マジやばいじゃん…!!」

橋本さんは思わず
固まってしまった。

一実「早く行く準備しないと、
   鬼田中の怒りの雷落ちるよ!!
   ○○くん、ごめんね!!
   話に付き合ってくれてありがとね!!
   ななみん!行こ!!」

奈々未「うん…!○○くん、ほんとごめんね!
    また、あとで話そうね!」

橋本さんは少し寂しげな表情で
こちらに手を振って、
自分の教室に戻って行った。


      昼休みももう終わるのか…。

         早かったな…。

           あ。



    齋藤さんは大丈夫か…?





     齋藤さんが気になった俺は
     自分の教室へ駆けていった。


          が…。


     教室を見渡しても

      彼女がいない。



「○○くん。齋藤さんを探してるの?
 齋藤さんならさっき教室に戻って
     どっかに行っちゃったよ」

声のした左側を見ると、
声の主はあの生徒会長の生駒さんだった。

「そうですか…」

生駒「残念そうだね…?どうしたの?
   何かあった…?」

「少し心配なんです、彼女…」

俺はそうこぼすと、生駒さんは

「どこが心配なの?
 いつも寝ているところとか?」
            と尋ねる。

「まあそれもありますけど…」

そう話してると、

齋藤さんが眠そうな目を擦りながら、
教室へ戻ってくる。

生駒「見た感じ、
  ただの寝不足なんじゃないかな?
  五時間目のチャイムの3分前だから、

  席に戻った方がいいよ。
       私も元のクラスに戻るし」


そう言うと、生駒さんは
元のクラスにスタスタと戻ってしまった。

奈々未「確かに根は悪い子ではないんだけど…。
    最近心配なんだよね…。
    なんか様子が変というか…。
    あんなに授業中丸々寝るような
    不真面目な子じゃなかったし…
    人を利用するような子でもなかった…」



奈々未「今年のクラス替えしてからかなぁ…。
          少なくとも
    一年前はあんな感じじゃなかった…。 
        中学生のときも
    あんなのじゃなかったんだけどな…」

       いや…

    ただの寝不足じゃない。

   絶対何か理由があるはず…。



俺が自分の席に座ると、
隣の飛鳥さんから話しかけられる。

飛鳥『ねえ、
  さっき生駒さんと何話してたの?』


「い、いや…ただの世間話です…」

流石に生駒さんと齋藤さんの話をしていたとは
本人の前では言えないので、俺は誤魔化す。

飛鳥『ふーん…。そっか…』

飛鳥『ねぇ、○○くん』

「はい?どうしました?」

     飛鳥「いつも……
       …ありがとね」

小さい声で照れ臭く
突然お礼の言葉を口にする彼女に
俺は思わず愕然としてしまった。

   でも、

   これが

   彼女なりの

   最大限の“感謝”の気持ちの

   表現なのかもしれない。

     やっぱり齋藤さんは

   感情表現が不器用なだけで、

   決して悪い子ではないんだな。

そう思った俺は

「いえいえ」と笑って謙遜した。

俺の返事を聞いた彼女は
何事もなかったように
プイッとそっぽを向く。

  また、いつもの齋藤さんに戻った。

 俺はそんな不器用な齋藤さんを見て、

   正直可愛いと思ってしまった。


  居眠りの件や職員室の件など

  気になることはいっぱいあったが、

   今はほっといてあげよう。


そう思ってると、

古文の谷川先生が教室に入る。

飛鳥『  ねぇ、もし谷川先生に
    私の名前が当てられたら、
    答え教えてほしい』

       「いいよ」

    俺はそう言うと、彼女は

    唇を噛み締めながら、

    『ありがと…』と言った。





       To be continued...