KAN+秦基博「カサナルキセキ」が教えてくれたこと~EIGHT-JAM コラボ特集~
「EIGHT-JAM」はSUPER EIGHTが様々なアーティストをゲストに迎え、テーマをもとにジャムセッションやトークを繰り広げる音楽バラエティ番組。(テレビ朝日系全国24局ネット https://tv-asahi.co.jp/eightjam/ 毎週日曜よる11時15分から放送中)
知らない角度から音楽を捉えてくれるのでいつも楽しく拝聴しています。
2024年11月24日放送の「EIGHT-JAM」はコラボ曲特集でした。
ゲストは、秦基博、永積タカシ、iri。
2024年に生まれたコラボ曲の話題作、プロが選ぶコラボの名曲などが紹介され、見ごたえたっぷりな1時間でした。
なかでも、私が魅せられたのは先日リリースされたばかりの『HATA EXPO』に収録されたKAN+秦 基博の「カサナルキセキ」✨
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こんな音楽聴いたことない!!!
音楽ってこんなことができるの??!!!
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と、音楽という空気を震わせる音が織りなす魔法に魂を持っていかれた感じになりました。
今日は、自分が“残しておきたい”と強く感じた秦さんご自身による「カサナルキセキ」の解説を綴ります。
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2024年11月24日放送「EIGHT-JAM」より
2020年11月発売の「キセキ」と2021年1月発売の「カサナル」についてSNSがざわつく
ナレ)昨年亡くなったKANだが、KANといえばMr.Children桜井和寿やaikoらがファンを公言するなど、多くのプロがリスペクトするアーティスト。そんなKANとライブで共演するなど、以前から交流のあった秦。2020年11月と2021年1月、2人はそれぞれ楽曲をリリース。
その曲がこちら。
ナレ)2曲の歌詞に同じ言葉が出てくると、SNSでざわつき始め。。。
さらに、それぞれの作詞作曲表記が、“KAN+”、“秦 基博+”となっていることや、どちらも“5分24秒”と全く同じ長さであることに気づき、「真相を知りたい」「早く解説してほしい」という声が出始める。
しかし、2人は無言を貫き、コメントなど一切しなかったのだが、3ヶ月後の2021年4月、KANと秦がスーツを着て謝罪会見を開催。
「キセキ」と「カサナル」に施された壮大な仕掛けとは
ナレ)なんとこの曲、KANから「同じコード進行、同じBPM、同じテンポで、だけど旋律が2つあって、それぞれがすごくいい曲で、それが重なったらもっといい曲になるという曲を書きたいんだ」、という依頼を受けて制作され、2曲を同時に採用。再生すると、アレンジが最終的に完成する、という仕掛けが施されていた。
それがこちら。
ナレ)このコラボレーションについてKANは?
魔法のようなコラボ曲「カサナルキセキ」の制作方法とは
ナレ)異色のコラボ曲「カサナルキセキ」一体どのように作られたのか 。
村上)謝罪会見に関しては壮大なコントですけどね 。そこまで考えてたんですか?
秦)最初からそこまで考えてました 。
村上)どういう計画で?
秦)KANさんに「同じBPM、同じコード進行の上に2つ旋律がある曲を書き書きたくて。それぞれがそれぞれにリリースし、それが後に一つの曲であったことを謝罪会見するっていうことをしたいんだけどどう?」っていう。出来上がってた。全部できてて、 最初聞いた時「何言ってんのかな」って。
「本当にこんなことできるのかな」と思いながらだったんですけど。まずでもAメロBメロって言われるその2つのメロディーが、しかも2つも同時に存在するものが、KANさんの方からデモで送られてきて。
僕も「じゃあ違うAメロを」と、提案してみたりとしたんですけど、僕が提案したAメロは「ちょっと違うかもしれない」って言ってちゃんと却下されました(笑)。
同時に2つ書くってすごく難しいんですよね。しかもそれが分けてもいい曲じゃなきゃいけない。そこが それが難しいですよね
秦)「分けたらそれぞれちょっとイマイチだよね」みたいなこと言われて、「確かにそうです」って言って、却下したりしてたんですけど、結果的に僕は、続きのサビの一つのメロディ書いたり、出だしのAメロも一つのメロディ書いて、KANさんにお渡しして、KANさんがそれに重なるメロディを書くっていうやり方だったので、この重なっているすごい部分は全部カンさんが。
村上)そういうことか。
KANさんが仕掛けた「新しい音楽体験」
安田)Aメロのところのハモリになっているラインとかも?
秦)(KANさんが)緻密に考えられてますね。それぞれ独立してもいいメロディだけど、合わさったらハモってたりとか、っていうのはKANさんが考えられてますね。相当緻密に。いや、すごい緻密でした。
それで、それぞれが独立したアレンジでもなきゃいけないんで、同じオケを使うわけじゃなくて。アレンジ上、ストリングスが入ってるんですけど、それも分けていて。普通、大体4声なんです。ビオラとチェロっていうのが複数いたりするんですけど、それをあの2パートずつ1曲分けようと。「僕チェロ欲しいです」っていうやり取りして、それぞれはそれぞれの音源で聞くと、その2声ずつのストリングス。これを重ねると4声になっているんです。
うわー!緻密だ。面白いけど大変だよね作るの。
秦)とにかく徹底的な方だったんで。いいものを作るってことに対して、本当にこうまっすぐでピュアで徹底的でしたね。
ウイカ)へー。でも最初のKANさんはいいけど、後からだぞ、後からだよ。ファンの声もね、届きそうじゃない。ラジオとかSNSとか通じてファンの声の、「なんかどうなってるんですか」っていう声が殺到しそう。
秦)結構、ざわざわしてきて、そのもしこれって同じ曲ですかって聞かれたらどうするんですか?ってきいたら「プライベートは本人に任せてます」って答えればいい」って(笑)
ナレ)秦の「カサナル」を聴いてみると。そして、KANの「キセキ」は。
安田)面白いなぁ。
村上)言葉の重ね方と外すところと、母音とかもあえて合うところと外してるところも全部計算してるでしょ?
秦)全部、母音とあと子音ももう時々重なったりとかそれこそ外したりとか、それも全部KANさんがやられてますね。
村上)あの入院中にもお会いに行かれたとか?
秦)そうですね、はい。入院されてるところに病室に会いに行って。
その時も結構、もうね、しんどそうでしたけど、ご自身の病状とか経緯も全部ご自身で話されたりとか。口頭で。はい。
その時の年末に自分が武道館で、ストリングスと一緒にやるライブを予定してたんですよ。で、今度また武道館でやるんです、みたいな話をした時に、「ストリングスのアレンジとかやった方がいいよ」って言われて。
でも僕全然もうピアノも何も弾けないし、「え、そんな難しいことできますかね」って話をしたら、KANさんが「いや、できることは全部やった方がいいよ、その方が楽しいんだから」って言われて。
ああ。でもそれはやっぱすごい、めちゃめちゃなんかこう印象に残ってるというか、KANさんを表す言葉でもあるなっていうか。全部その「カサナルキセキ」もそうですけど。
そうですね。とにかく全部思いついたことはやるっていう。うん。うん。うん、なんかそれはだからすごい残ってますね。
うわー。おー。いいなー。
永積)こうコラボレーションってこう、まだまだこう、ね。今回こうやって2人が発見したやり方、まだ形になってないコラボレーションの形がいっぱいあるんだろうなと思って。また自分もどんなことやれるかな、みたいなのを思いましたね。
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「カサナルキセキ」の楽曲解説を聞いて思ったこと
同じBPM、同じコード進行の上に2つ旋律がある曲。
それぞれがそれぞれにリリースできるほどのクオリティ。
そしてそれが後に一つの曲となる。
さらに、それぞれの歌詞の母音、子音、歌詞が重なる部分もあるなんて。
音楽の魔法としか思えませんでした。
でも魔法の杖をひとふりしてかけられた魔法ではなく、緻密に、徹底的に緻密に練り上げられた希望という魔法。
音楽ってこんなことができるのか、と心が震えました。
ひとりではなく、二人で「重ねる」から、より深いキセキになった。
KANさんが秦さんにおっしゃった「いや、できることは全部やった方がいいよ、その方が楽しいんだから」という言葉がとても響きました。
だらけず、なまけず、できることを全部やる気持ちで生きてみよう、そんな魔法を私にかけてくれた「カサナルキセキ」。大事な曲になりそう✨
コラボレーションとは、1×1では成し得ない、1×複数だから実現できる手段。一人でもできるけど二人だからできることがある。
それを体現して私たちに教えてくれたKANさん、そして秦さん、ありがとう。