【競馬初心者、ウマ娘ファン向けの名馬解説】ロジャーバローズ
はじめに
最近、ウマ娘のサークルで印象深いエピソードがあって、ウマ娘化して欲しい競走馬を紹介すると言う事を始めました。ウマ娘に触れる以上、実際の競馬に多少でも興味を持って欲しいと思ったのがきっかけです。この記事以前にメイショウマンボを紹介したのですが、チャットではイマイチ読みにくさと言うか連動性がなかったし、そもそも連載形式で小分けにしてでも約4000字近くを載せると言うのが無謀すぎたのでこう言った形にして公開した方がいいと判断し、Noteに記事として公開する事にしました
この記事ではロジャーバローズの紹介をしてみようかなと思います。この馬は私が競馬を好きになって初めて見て賭けたダービーの勝ち馬です。思い出深い一頭になります。主に浜中騎手に乗るまでの経歴、ロジャーバローズの血統的背景や戦歴、2019年の牡馬クラシックのダービーまでの流れなどを大まかに書いています
が、筆者の書きたいこと書きまくりたい病が発動した結果、相当長くなっています。血統の話とか小ネタとかウマ娘の要素を入れた挙句、今年のダービーに思いを馳せその事をタラタラと書いた結果、とても長くなってしまいました。申し訳ありません
なので、章分けをしています。端的にロジャーバローズのことだけを純粋に知りたい方はセクションの2-1、2-2、2-3、3-3、5-1、6-4を読めばいいです。その中で血統の効果的な話は別にいいですって方はそこから2-2だけを抜けば大丈夫です。乗っていた騎手の方も含めて知りたい方は1章全部と5-2を加えれば大丈夫です
当時の牡馬クラシックの流れとか、小ネタとかウマ娘の要素もひっくるめて読みたい方は、全部読んでいただければ助かります。参考文献を除いてもなお34000字と言うハードな量にはなりますが、それでもよければお読みください
ではよろしくお願いします
ロジャーバローズ
主な勝ち鞍:日本ダービー(2019)
父:ディープインパクト
母:リトルブック
母父:リブレティスト
武器:先行力とスピードの持続力
この馬を一言で表すなら:良血馬、大舞台で覚醒!
1.浜中俊騎手
1-1.浜中騎手のデビューから全盛期まで
浜中騎手はイケメンと評される甘いマスクが特徴の福岡県出身の騎手です。騎手としては少し珍しい一族に競馬関係者のいない方です
浜中騎手は勝利への貪欲さ、思い切りの良さが武器で少々荒っぽい騎乗も辞さないスタイルでした。それでいて多くの馬に騎乗すると言う騎手です。馬を動かす能力も中々高いものがあります
2007年にデビューを果たします。同期は藤岡康太騎手、丸田恭介騎手、荻野琢真騎手などがいます
新人騎手は騎手デビューと同時に、栗東(関西・滋賀県)か美浦(関東・茨城県)のどちらかに振り分けられ、その中の厩舎に所属する形になり、所属厩舎の調教師がその騎手の師匠になります
所属厩舎がなくなるとフリーと呼ばれる状態になりますが、新人、若手のうちは厩舎所属が一般的です。現在の日本人騎手で一番と目される川田将雅騎手は3年目からフリーになっています。それは師匠の安田さんの親心で色んな馬に乗って欲しいと言う思いでフリーになっています。安田さんが川田騎手の能力を高く評価していた面もあるでしょう
所属厩舎によっては全然馬に乗せてもらえず、全く上手くならないと言うこともあります。厩舎が新人育成に興味がないところだとそうなりがちです。それでも熱心すぎるが故のトラブルとか、新人騎手にパワハラしてましたとか、色々その関係で事件が起きてますがそれは聞きたい方がいたら話すかもしれません。競馬知っててネットに精通している人には有名すぎる話ばかりですが
当の浜中騎手は所属厩舎にとても恵まれます。所属厩舎がマヤノトップガン、キングヘイロー、デュランダルなどの超一流馬を育て上げた名調教師の坂口厩舎でした。坂口さんは重賞以外では浜中騎手を重用していたようで、新人としてはそれなりの騎乗数を確保することができました。その結果、デビュー年の2007年は20勝と新人騎手としては中々の好成績を収めます
翌年になると、それが一気に飛躍し70勝をあげ、重賞も勝ちます。さらに同年にスリーロールスで菊花賞を制覇し、G1ジョッキーの仲間入りを果たします。その後2年間は少し成績を落としますが、2012年に24歳の若さでリーディングジョッキーに輝きます。これは、歴代でも3番目の速さでした。ちなみに1位はみなさんご存知のレジェンド武豊騎手です。まあ流石にこの人の記録は中々越えられませんね
そこから2014年まではトップクラスの成績を残し続けますが、2015年から風向きが変わります
1-2.一流外国人騎手来日
この話の前提として、競馬界では「騎手の能力以上にエージェントの力が重要だ」と言う人もいます
エージェントとは端的に言えば騎乗依頼の管理をしている人です。今の競馬界において騎手の騎乗依頼は、その騎手が契約しているエージェントと呼ばれる代理人の方を通して行われます
エージェントは正確には騎乗依頼仲介者と呼ばれます。一般的な呼び方がエージェントです。エージェントは競馬新聞や雑誌の記者などが主にになっています。制約として馬券の購入や譲り受ける事が禁止されています。馬券を買うのが好きな方はやらない方がいいでしょう。
制度導入以前は騎手自身で売り込みや依頼の処理を行っていました。ただ、レースに集中したいのに依頼を処理する事は負担ですし、厩舎側との人間関係なども考えないといけないので、精神的な負担も大きいものでした
岡部幸雄騎手はそう言った中で、「レースに集中したい」と言う事を目的に記者に仲介を依頼します。岡部騎手はフリーの先駆けの騎手であり、その影響でフリーの騎手が増えますが、同じように仲介者を導入する騎手も増えていきます
そこでJRAもそれを追認する形で、2006年4月から開始します。当初は馬券の購入はOKでしたが、2018年から禁止になっています。誰がどのエージェントと契約しているかは毎年発表されています。なので誰々がこの人と契約してると言うことが話題になることもあります
エージェントは騎手の売り込みをして、騎手の騎乗数を確保すると同時に、騎乗スケジュールの調整をするのが仕事です。また、厩舎側との関係構築も仕事の一つです
力のあるエージェントだと、いい馬が多く回ってきます。そう言う人と契約がしたいですが、エージェントが持てる騎手が4人(うち1人は若手騎手のみ)となっています
なので、いい馬が一部の騎手にしか集まらないと言う意見もあり、この制度を批判している方もいます。元騎手のF氏もけっこう批判しています
エージェントに頼らず自分で全部する人もいます。ただ、有力騎手だと今現在では横山和生騎手と横山典弘騎手くらいですね。ただし、この2人も昔はエージェントをつけていたので新人の頃からエージェントなしで有力騎手になったはあまりないと思います
浜中騎手はそのエージェントでも一、二を争うレベルのエージェントと契約していました。名前を豊沢さんと言います。豊沢さんはエージェントとして力があるので、有力馬も回ってきやすい状況でした
2014年まで豊沢さんと契約していたのは多い年で浜中騎手を含めて2人でした。勝ち数などで見れば明らかに浜中騎手の方が上だったので、さらにいい馬が回りやすい状況でした
そう言った理由で好成績をあげやすかったと言う側面はあります。人によっては馬8割の世界と言うこともあるので、いい馬に乗るのが大事と言うのはわかりますよね
とは言え、実力がないとそもそも契約ができません。出来ても結果が悪ければ契約解消される事もあるでの本人の実力も十二分に高かったと言えます
しかし、2015年に2人の外国人騎手が通年免許を取得します。1人はウマ娘で言うならサトノダイヤモンドの主戦だったルメール騎手。もう1人はネオユニヴァースやドゥラメンテの主戦だったデムーロ騎手です
この時に豊沢さんはデムーロ騎手とルメール騎手の2人を一緒に抱える事になります。この2人は欧州でも一流の騎手ではありますが、デットーリ騎手やスミヨン騎手、ムーア騎手、ペリエ騎手などの欧州のトップオブトップ程ではないです
ただし、日本の騎手に入ればずば抜けた存在になります。世界でも能力を評価をされていた全盛期の武豊騎手並みの実力の騎手であるのは間違いないです
実際、通年を取る以前にも日本には短期免許でちょくちょく来ており、その時も幾つも大きいレースを制してきました
言い方は良くないですが、浜中騎手より間違いなく2人の方が実力があったと思います。なので、以前よりいい馬が回ってきにくくなってます
その影響で2015年は年間98勝と、100勝に僅かに届きませんでした。更に2016年になると一気に暗転します。
1-3.成績低迷の引き金
2016年は年明けに軽い怪我を負い、翌週には復帰します。しかし、2月に大怪我を負い3ヶ月ほど戦線離脱します。これがその後の運命を暗示していたのかもしれません
この騎乗を休んでいた期間に少しトラブルを起こしてしまいます。週刊誌によると当時未成年だった騎手にもう1人の先輩騎手と共に飲み会で飲酒を強要し、飲み会後にその騎手がトラブルを起こして騎乗自粛する羽目になったと言う事件を起こしています
あくまで週刊誌レベルなので嘘だと信じたいです。ただ、事実なら関係者の顰蹙を買いそうですし、それを知る由もない一般のファンはよくないイメージを持つでしょう。そんな中、11月のマイルCSでより大きな事件が起きます
マイルCSで乗っていた馬はミッキーアイルと言う馬です。この馬はNHKマイルを制したこともある実力馬で、後々種牡馬としてメイケイエールなどを排出しています
馬自体は短距離でも通用するスピードと抜群の先行力の誇る馬でしたが、気性がかなり荒い馬でした。浜中騎手も初めて乗った際に、いい馬とは認めつつも扱いが大変な馬だと感じていたようで、新馬戦はその影響で負けてしまいます
普通はおとなしい子が多いディープインパクト産駒ではあるのに、何故気性が荒いのかと思った人も多かったようです
そんなミッキーアイルと共に2016年のマイルCSに挑みます。ミッキーアイルは先行力を活かし、逃げてペースを作り先頭のまま最終直線へ。先頭を直走るミッキーアイルですが後続が徐々に差を詰め、残り100mくらいで並ばれます。が、そこからなんと盛り返して1着入線を果たします
馬券を握ってた人はやった!となりますが、審議のランプが灯ります。馬券を握ってた人は当然戸惑います。何があったんだと
何が起きたのかと言うと、ミッキーアイルが並ばれた際に大きく左側に斜行をし、並ばれた馬を弾き飛ばした挙句、他の馬の進路を邪魔してしまったのです。並んでいた馬は3着には来ましたが、後ろから追い上げてきた馬が完全にその斜行の影響で勢いを削がれてしまい、着順を大きく落とす結果になってしまいました
最悪酷い落馬事故が起きてもおかしくないようなレベルの斜行だったので、これで済んでよかったねと言えなくもないです。が、被害馬の馬券を買われてた方は怒り心頭です。これが偶発的な斜行なら仕方ないねで済む場合もありますが、あろうことか浜中騎手は斜行する前に右鞭を連打していました。これで騎手が誘発したと見られたのです
審議は12分行われ降着にはなりませんでしたが、浜中騎手には23日間の騎乗停止と言う非常に重い処分が課されました。この時表彰台に行くのですが、野次がものすごく飛んでいたようです。藤岡佑介騎手との対談でもそう語られています
その野次はレースが行われた京都競馬場に居た奥さんとお子さんの耳にも入っていたようです。本来競馬場に家族は来ないはずでした。浜中騎手が大好きだった祖父が亡くなられたので、それを伝えるために来ていたと後の藤岡佑介騎手との対談で答えています
騎手は八百長防止を理由に、金曜日の夜から携帯が没取されるため連絡が取れないため競馬場に来ていたとのことです。よりにもよってこのタイミングと言うのが余計に辛いです
葬儀を行なっていた親族はテレビでレースを見て、勝った瞬間は泣いて喜んでいましたが審議で困惑したそうです。表彰式の様子を見た浜中騎手の母親が「こっちも葬式が終わったばかりやけど、あの子も葬式みたいな顔してるわ」と言うくらいとても暗い表情だったようです
このレースをネット界隈では「最も笑顔のないG1勝利」や「ミッキーアイル事件」などと呼んでいます。これが転落の大きなきっかけでした。この事件で競馬関係者からは、あの騎乗はどうなの?と疑問を呈されるほどだったので、当然評判が落ちていました
さらに追い討ちをかけたのはその4ヶ月後。今度はフィリーズレビューでレーヌミノルに乗った際に斜行をしてしまい、8日間の騎乗停止処分を受けます。この時精神的に参ってしまい、記者の質問に終始無言。最後に爆弾発言をしてしまいます
「もういいでしょう」
この一言が火に油を注ぎ、ネットを中心に競馬ファンからは物凄いバッシングをされました。本人もそりゃ炎上するよと後々語ってはいましたが、だとしても辛いですね。マスコミ関係者や競馬関係者にも「なんだよあいつ。迷惑かけた癖に」と言う目で見る人も少なからず居たと言われています
浜中騎手もこの時、精神的に追い詰められ騎手を辞めたいと周囲に漏らしていたようです。この後、藤岡佑介騎手から少し厳しい言葉で励まされ立ち直っていきますがそれはお調べください。今回の参考文献の『with佑』の浜中騎手第3回目の対談に乗っています。後半は有料記事ですが、前半の返した言葉までは読むことができます
こう言った一連の流れでダーティなイメージが着いてしまい、800以上あった騎乗数が200回ほど減ってしまいます。勝利数も2012〜2014年と比較すると半分程度に落ち込みます。勝率も.130以上あったのが.100を上回らない年も出てきました
その事から、ネット上の競馬ファンからは「浜中は干された」と言われ始めます。栄光を掴み、これから超一流へと思っていたところで、思わぬ落とし穴にハマり抜け出せなくなってしまった。これが、ロジャーバローズに乗る前の浜中騎手の背景です
2.ロジャーバローズについて
2-1.ロジャーバローズはあの名馬と近親?! なんとウマ娘血統だった!
騎手の背景がわかったところで、ロジャーバローズの血統面とダービーまでのお話をします。血統は簡単にお話しします。一応色んな血統解説を読んで、それをわかりやすくはしてるつもりです。この部分ではわかりやすいことだけを言って、次の部分で具体的な話をします
端的に言います。ロジャーバローズは実質男版ジェンティルドンナです!どう言うことかと言うと、ジェンティルドンナの母親とロジャーバローズの母親は姉妹です。父親違いの姉妹です。しかも、どちらの父親もその父親は全く同じダンチヒと言う馬になります。違うのは父親の母親だけになります
なので血統表を両親-曽祖父-高祖父母と言う順で見た際に、血統のラインが高祖父母の時に8本になります。この8本のうち、7本が全く同じになります。したがって、ロジャーバローズは7/8がジェンティルドンナと一緒の血統になります
なので、ロジャーバローズは生まれてからセレクトセールに出されるわけですが、実績のある血統構成だったこともあって8424万円とかなりの高値で取引されています。ネットの競馬ファンの中には7/8ジェンティルドンナと呼んでいる方もたまに見かけます
これがサービス当初だったら触れなくてもよかったのですが、ドンナさんがウマ娘化したので、触れざるを得ないのです。思い出深いダービーと言うのもありますが、ウマ娘との関連性もあった方がより興味が沸くかなと思ったので、今回触れさせていただきました
2-2.ロジャーバローズの血統的な素養
本来なら血統解説みたいな事をするつもりはなかったのですが、後の部分でやっちゃったため、ロジャーバローズだけやらないのもどうかと思ったので少しだけさせていただきます。色々調べて確認をした上で記載はしていますが、間違っている可能性も否定できません。あまり盲信せず、参考程度にお願いします。血統については亀谷さんの著書が詳しく書かれたものが多いので、興味が湧けばそう言う本も読んでみるといいと思います
ロジャーバローズの父は日本屈指の名馬であり大種牡馬でもあるディープインパクトです。実績は説明するまでもないでしょう。ディープインパクトの産駒は早い時期から活躍をする、圧倒的なスピードがある子が多いです。だからこそ日本の自身含めて産駒も競馬にマッチしたのもあるでしょう
圧倒的なスピードを持つ子が多いディープインパクトですけど、遺伝子的にみると実はスタミナ寄りになるのです。これはミオスタチン遺伝子の構造上そうなっています。このミオスタチン遺伝子は筋肉の量に関わる遺伝子です。そのミオスタチン遺伝子にはCとTと言う型があり、これがCC、CT、TTと言う3つのパターンに組み合わさります。CCだと筋肉の量が増え、CTバランスが良く、TTになると少なくなります。これが距離に影響すると言われ、CC型は筋肉が増える分、スピードも増すけど短距離型になる。CTは気性によって距離に融通が利く。TTは筋肉が減る分無駄のないフォルムになり、スタミナが増えて長距離型になる。という風に言われています
ディープインパクトは当初はCTではないかという見方もあったのですが、現在ではTT型であろうと言われています。中にはTT型だと断言されてる方も多くいます。日本で一番有名な馬体診断系Youtuberのやーしゅんさんや著名な血統予想家の亀谷さん、栗山さんもそう断言しているくらいなので間違いないのでしょう。実際、産駒の傾向もマイルだったら強い子もかなりいるのですが、短距離になるとかなり少ないです。TT型は傾向ではマイルからしか走る馬が出てこないと言う研究結果もあります
なので、遺伝子的に見ればディープインパクトはスタミナ型の種牡馬とも言えます。それにより、アメリカ型のスピード自慢の血統を持つ馬と相性が良くなります。自身のスタミナに母親のスピードの要素が加わるからです。例えば、2019年のダービーの結果を血統的に見れば、1、2着はディープインパクトに米国型のスピード自慢の血統を持つ母馬の子供でした。ディープインパクト産駒のダービー馬は全部その要素を持っています。
ウマ娘化されている競走馬のディープインパクト産駒で言えば、ヴィルシーナとヴィブロスもこの通りの血統をしています。お母さんが短距離メインの馬でスピード溢れる米国型の血統だから、あれだけ走ったのだろうと言えます。
言っておきますが、シュヴァルグランは違います。現実ではお父さんが違います。現実のお父さんはハーツクライという馬で晩成型で、有馬記念でディープインパクトに勝ってから大きなレースで活躍します。産駒の傾向は早いうちから活躍する馬もいますが、多くの子が晩成気味で4歳以降に活躍します。そして、一度覚醒すると手がつけられないくらい強くなるパターンが魅力的な種牡馬でした。後で少し触れるリスグラシューとジャスタウェイがそうでした
話を戻すと、ロジャーバローズ、ジェンティルドンナもこの通りの血統です。このパターンはディープインパクト産駒の黄金パターンと言ってもいいでしょう。今後使えませんが。これだけ血統が似てるなら馬の武器も似てそうですが、違います。先行力の高さは共通していますが、ジェンティルドンナは瞬発力が武器になります。なので直線でよーいドン!となるような末脚、競馬的に言えば決め手が問われるレースが得意です。逆にロングスパートからの持続力が問われるレースになると少し分が悪くなります
ジャパンカップでオルフェーヴルに勝ったのはその強みが活きたからでしょうし、宝塚記念でゴールドシップに2回負けているのは、持続力が問われるレース質だったためです。ゴールドシップが持続力が問われるレースに滅法強かったのもありますが。宝塚記念に似た傾向になりがちな有馬記念を勝ってはいますが、あの時はかなり異質で歴代でも類を見ないスローペースになったので、普段は持続力が問われるはずが、瞬発力勝負になったのでジェンティルドンナにはおあつらえ向きだったのです。力があったから勝てたのには間違いないですが。その展開をアシストしたのは皮肉にもライバルであるヴィルシーナなんですよね
一方のロジャーバローズはスピードの持続力が持ち味です。高い持続力を活かして、ある程度早めに前につけて逃げた馬を捉えて粘りこむ。あるいは自分で逃げて早めに仕掛けて追い付かれないように粘りこむ。これが勝ちパターン、好走パターンです。ただ、後ろからになるとそれが活かしにくくなります。そこまで最高速度自体は高くないのでそうなってしまいます
この話を聞けば、条件やレースのタイプによって強くなる馬もいれば弱くなる馬もいると言うのがわかるはずです。得意不得意があるからそうなります。人間比べたがる生き物だから仕方ないのですが、ネットでよく見る最強馬論争がいかに不毛なのかがわかると思います。それも楽しみではあるのですが、私は答えのないものだと思いながら見ています
2-3.ロジャーバローズ、デビューから京都新聞杯まで
当のロジャーバローズですが、武器でも書いたように、先行力がありスピードの持続力のある馬でした。いわゆる王道競馬ができるタイプの馬です
デビュー戦はフリオーソの主戦だった戸崎騎手が乗り1着。いいデビューを飾れました次走は2着となり年内はこれで終了になります。ちなみに、この戸崎騎手はダービー後に浜中騎手と印象深いやり取りがあります
年明け後はデアリングタクトの主戦だった松山騎手が乗り1番人気に応え1着。この勝利でトライアルレースに出やすくなります。なので、次走はスプリングSに出走し、皐月賞を目指すことになります
スプリングSの鞍上は川田騎手になります。当時の川田騎手は超一流の騎手であり、この時点で牡馬3冠レースは全て制覇していましたし、他のG1や重賞レースでも多くの勝利をあげていました。それ故に色んな馬を任されており、本番の皐月賞で乗ってくれるかどうかは不透明でした。それでも川田騎手を手配したのですから、陣営は本気だったのでしょう
ところが、スタートは良かったものの、それから追走が上手くいかず普段より位置が後ろになってしまいます。結局、直線で伸びきれず7着に敗退。皐月賞出走の望みは絶たれました。レース後の川田騎手のコメントでは「競馬に向かう精神状態ではなかった」とコメントしています。メンタル的に何かあった可能性がありますが、後ろから行っていいところがなかったので、前で勝負したい馬だと言うのがここで改めて陣営も確認できたと思います
このレースの主な出走馬は、ヒシイグアス、ユニコーンライオン、クリノガウディ、カラテと後に重賞戦線を賑わす馬が多いです。ただ、どの馬も3着以内には入れていません。馬のその後はその時だけでは判断できないね、と言う話なのかもしれません
皐月賞がダメだったことで、今度はダービー出走に向け京都新聞杯に挑みます。このレースに乗ったのが浜中騎手になります。レースは積極的に出して逃げの形を取ります。途中脚を溜めて後ろを引きつけて最後の直線に。直線に入ると後続を少し離します
差を埋めようと後ろの馬は脚を伸ばしますが、中々差が詰まりません。このままいけるかと思われましたが残り100mで別の馬に差されて2着。負けはしましたが持ち味はしっかり出せていました。ラップタイムにもそれはしっかりと表現されていました
2着になったことで収得賞金を加算することができました。ただ、京都新聞杯は優先出走権がありません。ダービーに出走する場合、優先出走権を確保するか収得賞金で上位にならないとそもそも出走できません。除外されてしまいます
優先出走権は指定のレースで指定順位以内であればそのレースに出られると言うものです。ダービーの場合は皐月賞5着までの馬、青葉賞2着までの馬、プリンシパルS1着の馬に優先出走権が与えられます
それ以外は収得賞金の順で上位の馬が出られます。収得賞金はざっくり言うと評価ポイントのようなもので、各クラスを勝つごとに加算されます。ただし、重賞以上の場合は2着も加算ができます。重賞の場合は獲得する賞金の半額が加算されます。ロジャーバローズの場合は新馬戦と500万クラスを勝ち、京都新聞杯で2着だったので、400万+500万+1100万で2000万円になります
収得賞金が同じでボーダーラインと重なった場合は抽選になり、抽選で外れると出られません。京都新聞杯の場合、1着の馬は収得賞金で確実に出られます。なので優先出走権はないのですが、ダービーを目指す馬はこのレースを使ってきます。ダービーで優先出走権がフルで使われた場合は収得賞金上位10頭のみが出走できます。それ以下は上位の馬か優先馬が出走回避しない限り出られません
3.収得賞金にまつわるお話
3-1.あの名馬が菊花賞に出られなかったかもしれない
収得賞金での出走に関してはスーパークリークの菊花賞で興味深いエピソードがあります。スーパークリークは菊花賞では収得賞金が19位で、1頭出走回避がでないと出られないと言う状況でした。それを救ったのが岡田繁幸さんになります。
岡田さんはスーパークリークの配合を考えた方です。配合のテーマは菊花賞を勝つ馬を作る事だったと言われています。岡田さんは相馬眼に優れていた方でスーパークリークの才能も見抜いて、菊花賞に出れさえすれば、勝ち負けは必ず出来ると考えていたようです。ただ、スーパークリークは前走で顔を他の馬の騎手の鞭で何度も叩かれてしまうと言うとんでもない不利で6着に敗れ、出走権が得られなかったのも見ていました。
自身の馬はきさらぎ賞を勝ち重賞を勝っていました。なので収得賞金では出る事ができました。ただ、その当時は早熟気味だったのもあって、成長してきた馬に追い抜かれ近走負けが混んでいました。なので、勝ち負けは厳しいと考えていました。そこで、それならスーパークリークを出せる状況にした方がいいと考え始めます。これもかなり悩むことになります。この時、岡田さんはサラブレッドクラブ・ラフィアンを設立した当初で、この馬はそのクラブで出資者を募っていた第一世代の馬でした。重賞を勝った上に菊花賞に出走することで、ラフィアンの馬は走ると言う宣伝になり、後々大きな利益になって返ってくることも十分考えられました。企業の社長として考えるべきか、ホースマンとして考えるべきか。相当に悩んだでしょう。結局、岡田さんは自身の馬を引っ込めることにします。
せっかく勝てる才能があるのに、あんなトラブル、人災でそれが叶わない事があってはならない。そう言う思いで、ホースマンとしての選択を取りました。それは菊花賞の出走馬投票前日の夜だったそうです。その後出資者に謝罪をします。出資者の大半は好意的な反応を示していたとされています。ただ、管理していた調教師は取り消しはしたものの、やはり許し難かったようで一時的に絶縁になったと言う話もあります
結果としてこの取り消しで出走しやすくなり、その後賞金上位の馬が怪我で出走回避をした事で、出走が可能になりました。その後の活躍は言うまでもありませんよね。名馬スーパークリークはこう言った他の陣営の動きで産まれたのかもしれませんね。ただ、基本的に他の馬主の馬を出すために、自身の馬の出走を取り消すと言う事はほぼほぼないです。故にこの行動が凄く光るわけなのです
3-2.京都新聞杯での涙
京都新聞杯2着の馬は年と事前の勝利数によっては収得賞金が足りず出られないこともあります。最近もそれで出られなかった馬がいました。それがヴェローナシチーと言う馬です。名前でわかると思いますが、ゴールドシチー、タップダンスシチー、エスポワールシチーと同じクラブの馬です
この年のダービーの賞金ボーダーは5年間の中では圧倒的に高くて、2歳重賞を勝ったのに抽選で出られなかったと言う馬が出た程でした。ルメール騎手がデビュー前の調教に乗ってこの馬でダービーに行くと言った程の素質馬でしたが、出られなかったのは競馬ファンには衝撃的な話でした。
ヴェローナシチーは当時未勝利戦を勝利した以外で賞金を加算できていませんでした。なので、ヴェローナシチーが出るには勝利が絶対条件でした。絶対に出ると言う執念で最終コーナーで捲って先頭を奪います。しかし、残り200mで並ばれ直線の叩き合いの末、僅かの差で2着に敗れてしまいます。その時の鞍上だった酒井学騎手がないているんじゃないかと思うくらい悔しがって引き上げてきたと言うのは、競馬ファンには印象に残っている話だと思います
3-3.結局ロジャーバローズは出られますか?
ロジャーバローズは賞金が足りて出ることが出来ました。年明けに1勝していたのが大きく、その年の賞金ボーダーも比較的低くなってました
「ダービーは最も運のいい馬が勝つ」と言われますから、その兆候はあったのでしょう
ただ、この格言は昔のダービーは20頭以上で行われてたので、コース形態的にほぼ勝てないと言われる枠がありました。33頭と言う時もあったそうです。なので、そこに入らない運が重要だと言われてたからと言う側面が大きいです。そう言うわけで、ロジャーバローズはダービーに出走することが出来ました。鞍上は浜中騎手です
4.2019年牡馬クラシックのダービーまでの流れ
4-1.牡馬クラシック注目馬
ダービーの話をする前にこの2019年の牡馬クラシックにおけるダービー前の流れを説明します。この年の牡馬クラシックはある一頭の馬に大きな注目が集まっていました。それが、サートゥルナーリアと言う馬です。ここからサートゥルナーリアのお話をしたいのですが、血統的なお話を少しだけします。ぶった切る形になって申し訳ないです
4-2.サートゥルナーリアの血統的なお話
サートゥルナーリアの父はロードカナロアと言う名スプリンターです。この馬は競馬ファンの間でサクラバクシンオーとどちらが最強スプリンターかで喧嘩が起きてしまうほど議論が加熱するレベルで強かった馬です。次解説する機会があるかがわからないので軽くお話をします。
ロードカナロアが高く評価される理由は香港スプリントでの成績が大きいでしょう。香港はスプリントとマイルは世界トップレベルで、日本の馬が参戦しては跳ね返されるレースです。その当時までは勝った馬どころか馬券内に入った馬すらいないものでした。カレンチャンも出ていて、結局力負けしての5着でしたが、それが日本馬の最高着順だったと言うくらいです。日本の競馬ファンもよく善戦したと褒めていたものです
そのくらい香港はスプリントのレベルが高い国なのですが、その香港スプリントをロードカナロアは勝利します。しかも一度のみならず二度も。なんなら二度目は他馬を突き放しての圧勝。5馬身差つけるのですが、これは現在でも香港スプリント最大の着差になります。そのくらい圧倒的な力を持っていたのです。香港名でロードカナロアは「龍王」になるのですが、それに相応しい名前と言えますし、競馬ファンにも龍王と呼ぶ人もいます。国外で強かったわけですが、国内でも圧倒的でG1を3勝に安田記念も勝つと言う、マイルでも勝てるスプリンターでした
ここで多くの方は思うはずです。スプリンターの子供が2400mを持つはずがないと。ロードカナロアは父がキングカメハメハと言うダービー馬の子供です。ウマ娘で言うならホッコータルマエとドゥラメンテが同じ父親になりますね。母はご存知シーザリオになります。これだけならなんか行けそうな気もします
しかし、生まれた当初からデビュー前の4月まではロードカナロア産駒の中距離での実績が不十分でした。それはロードカナロア産駒がデビューしたのが2017年の6月からなので、そもそも産駒が走り出してちょっと経った頃と言う面があります。今現在も含めた話にはなりますが、ロードカナロア産駒の重賞での実績はスプリントやマイルにかなり寄っています。後で話す馬を除けばブレイディヴェーグの2200mまでになります。
4-3.種牡馬による距離の傾向のお話
種牡馬によって距離に傾向が出ると言うのは決して間違った考えではないです。代表的な例で言えば、カレンチャンの父のクロフネの産駒は平地の2000m以上のG1を勝ったことがないです。好走はありますが。G3までにすると6頭いますが、2200mまでになります。2021年にソダシが勝つまで2000m以上の重賞では133連敗していた時期もあります。そのくらい顕著な傾向があります。また、ダイワスカーレットの兄であるダイワメジャーの産駒も、国内生産馬の平地重賞以上の勝利はマイルとスプリントに限定されます。距離ではありませんが、ダイワメジャー産駒は早熟気味になる傾向もあったりします
この2頭はどちらかと言うとマイルで活躍した馬で、勝ち鞍が基本的に2000mまでになっています。故に父親の成績から産駒の傾向はある程度見えてくるものではあります。そして他の産駒を見る事で、デビューする子の適正距離もある程度把握する事ができます。ただし、時々その想定を超える馬がいます。それがミホノブルボンですね。ミホノブルボンは短距離マイラーの多い種牡馬と母馬の子でした。なので、クラシックに近づくに連れ距離不安が囁かれていたとのことです。しかし、皆様ご存知の通り皐月賞とダービーを勝っています。
サクラバクシンオーもそうだと言われれば当てはまりますね。父は天皇賞秋の勝ち馬で、サクラバクシンオー以外の産駒でスプリントG1を勝った馬はいません。重賞を勝った馬も1400を含めて3頭で、1200に限定すれば1頭です。マイラーが多いですが、2000を勝った馬もですし2400勝った馬もいますし、障害G1を勝った馬もいます。父の父の産駒は菊花賞馬など長い距離を走った馬が多くいます。その他のサクラバクシンオーの血縁関係の馬は菊花賞2着に天皇賞春の勝ち馬と、これでコテコテのスプリンター血統とはあまり言えないです。ただし、これがサクラバクシンオー本人の産駒になると、産駒の実績がほぼスプリント路線になります。2000m以上の平地重賞を勝った産駒はいません。これが母父になると、2000m以上勝ってる馬もちらほらいます。キタサンブラックがそうですしね
逆にビコーペガサスはもろ血統通りです。お父さんがダンチヒで、ダンチヒの産駒は短距離マイルで活躍する馬が多い傾向にあり、日本に持ち込まれた馬で活躍した馬は短距離マイラーが主です。ただ配合によっては長い距離もいけますし、自身の孫以降の世代になると適正距離に影響はあまりせず、自身の持っていた圧倒的なスピードを伝える因子になっています。ロジャーバローズにも入っていますしね。
故に、世界中の馬に広く入っている血統になり、その血統の流れをダンチヒ系と呼んでいます。特にオーストラリアや香港では物凄く重要な血統になっています。オーストラリア、香港は短距離、マイルが盛んな国です。オーストラリアは開催日が祝日になるメルボルンカップのイメージで長距離の国のイメージがありますが、現在は重賞レースの半分以上が1400以下のレースです。芝の賞金世界最高額のレースであるジ・エベレストも1200mのレースです
なので、メインは短距離になります。短い距離のレースが多くなるため、生産者もそこに力を入れます。短距離型の馬が多くなるのは自明の理です。当たり前ですが短距離やマイルはスピード性能が問われやすくなりますよね。そこでスピードの要素が重要になるわけで、産駒にスピードを伝えるダンチヒの血が重用されてきました。そのため、オーストラリアの94年以降の種牡馬リーディングはダンチヒの後継種牡馬が殆どを占めています
香港の場合はそもそも香港内では馬産を行わず、主にオーストラリアから基本的に馬を買います。オーストラリアの生産馬は短距離志向の強い馬がメインです。なので、香港のスプリントとマイルはレベルが高くなるのです。ちなみに香港は馬産を行わないので、次の世代に遺伝子を残すことをほぼ考えなくていいです。買う馬は基本牡馬です。牡馬を買って男の象徴を切除してセン馬にするのが主流です。実際、2022年時点で香港競馬に登録されている現役競争馬1166頭の内、牝馬はわずか3頭です
4-4.サートゥルナーリアは東京2400保つのか?その答えを見出す一頭のスーパー牝馬
では、サートゥルナーリアは距離が保つのか。それは産駒の傾向が出るまではわかりません。今ではその答えは分かりますが、当時は絶対にわからないはずです。心配する競馬ファンと言うか一口の出資者もいましたが、デビュー直前とデビュー後にある馬が東京2400mのレースで大活躍します
それがアーモンドアイです。主戦のルメール騎手と共に2018年の牝馬三冠を達成します。つまり2400mを熟しているわけです。しかもオークスは当時歴代2位の記録で勝っています。さらに、その年のジャパンカップで世界レコードとなる2:20:6を叩き出します。これを見たら、ロードカナロア産駒が2400を保つはずがないと言う見方は誤りだと認識を改めるでしょう
また、サートゥルナーリアの管理厩舎はあのウオッカと母親のシーザリオを管理していた角居調教師になります。東京2400mの実績は十二分すぎる厩舎になります。ロジャーバローズも実は角居厩舎所属になります。実はロジャーバローズの馬主さんにロジャーバローズを勧めたのが角居さんだったのです。ただ角居さんはおそらくどちらかと言えばサートゥルナーリアに期待していたと思います。角居さんも後にそう語っています
それは無理もないでしょう。最近ウマ娘に触れて競馬を知らない、あるいは現実の競馬に興味のないウマ娘ファンの方はあまりピンとこないと思います。ウマ娘化される馬の大半は個人馬主である事が多いです。最近ドゥラメンテやオルフェーヴル、ジェンティルドンナなどのクラブの馬が増えてはきましたが
そこからも推測はできますが、現代競馬においては有力と言うかいわゆる社台系のクラブの馬は本当に強いです。事実として2019年の馬主の賞金ランキングでは、社台系のクラブがトップ5の3つを占めています。これは現在もそうですし、私が確認できた2015年までを見てもほぼ変わりません。一応設立の流れからシルクレーシングを含めてませんが、代表の方の経歴と血縁関係や、馬の購入元を見ればほぼ社台系クラブと言っても過言はないです。
サートゥルナーリアも例外ではないですし、その中でも基本的に毎年僅差の2番手にいるキャロットファームの馬になります。シーザリオ自身がキャロットの馬ですしね。一方のロジャーバローズは馬主が有力な個人馬主さんではあるものの、社台系や他のラフィアンなどの一線級の馬主グループに比べたら、申し訳ないのですが遠く及ばない存在です。そう言う背景を考えれば、嫌でもサートゥルナーリアの方を期待しちゃうでしょうし、そちらの方がよりプレッシャーが掛かってくるでしょう
4-5.サートゥルナーリアのダービーまでの流れ
ロードカナロア産駒が2400mで激走し、厩舎は超一流で実績も申し分ない。距離の不安は完全に消え去ったでしょう。当のサートゥルナーリアもデビュー戦からハイパフォーマンスを見せ、10月の萩Sを勝ち、ホープフルSに挑みます
そのホープフルSでは、他の馬がグイグイ押して鞭を入れまくる中、鞍上のデムーロ騎手が一切押すことも鞭を入れることもなく、ただ持ったままで勝ってしまいます。鞭の役割は、スパートの合図になります。あれで馬を脅かせて早くしてるのではなく、ここで仕掛けろと言う合図を送っています。つまり、簡単に言ってしまえばスパートをかけずに勝っちゃったわけです。こんな恐ろしいパフォーマンスを見た競馬ファンやマスコミ、予想家、現場の関係者も皆思ったことでしょう
「この馬が日本競馬悲願の凱旋門賞を獲る」
そう言う期待が膨らむ一戦でした。年明け陣営が動きます。なんとこれまで3戦3勝と相性抜群だったデムーロ騎手からルメール騎手に主戦騎手を変更します。デムーロ騎手も当時は超一流でしたが、別のお手馬がいたと言うのが大きかったと思います。その馬も無敗で朝日杯を制しますし、後にNHKマイルと香港マイルを制覇します
その馬はその時点では春は皐月賞に行くと言う流れになっていたので、確実に乗ってもらえるルメール騎手にと言う話になったのでしょう。あと、ルメール騎手自体がデムーロ騎手より当時の成績が上でしたし安定感もありました。その面もありそうです
その後、ぶっつけ本番で皐月賞に挑みますがここを僅差で勝利します。休養明けかつ初騎乗と言う厳しい条件でも勝ち切ったことでサートゥルナーリアの評価は更にあがります。この勝利でディープインパクト以来の無敗の皐月賞馬になります。最近5年で4頭も出ていますが、歴史を振り返ってもたった10頭しかいません。無敗の皐月賞馬がダービーに出走時の成績は、当時の記録で4勝。ダービーに出走した馬は4頭。つまり、全部勝って無敗の二冠馬になっています
ファンは「無敗の二冠馬待ったなし!」と考えたでしょう。私もそう思ってました。実際のこの当時の空気を私はよく覚えています。ダービーの予想の多くはサートゥルナーリアが本命でした。記事によってはどうせ勝つだろうと断言しているものもありました。実際競馬ファンも含めた全員が、この馬で凱旋門賞だ!と意気込んでいました。がここで予想していなかったトラブルが起きます
4-6.想定外の事態……。しかし、大丈夫そうう?
主戦に据えたルメール騎手がNHKマイルで斜行をし、乗っていた馬が4着から5着に降着となってしまいます。ミッキーアイルの時のような斜行でなければ、重くても8日間の騎乗停止処分が普通なので、日程的にダービーには乗れます。私的に言えば、確かに真っ直ぐは走れてないですがミッキーアイル程の酷さはないです。酷く捉えて8日が通常なら妥当かなと思います
しかし、この年のルメール騎手は3月に一度斜行で騎乗停止処分を受けており、皐月賞でも実は斜行をして過怠金、要は5万円の罰金処分を受けています。短期間で何度もやらかしていた事によって、16日間の騎乗停止処分が課されダービーに乗る事ができなくなってしまいました
そこで陣営が選んだ替わりの騎手は短期免許で来日していたオーストラリアの若き天才ダミアン・レーン騎手になりました。レーン騎手はオーストラリアのG1レースを3年間で11勝と滅茶苦茶勝って来日しています。初めての来日でしたが日本競馬に順応し、ダービー後の成績も含めますが勝率が3割と言う驚異的な数字を残しました。
騎手の勝率は2割あれば超一流と言われます。2ヶ月間と言う期間であれど3割を超えているわけです。素晴らしい騎手と言うのがわかると思います。更にダービーの2週前に行われたヴィクトリアマイルで、騎乗停止のルメール騎手の代打でノームコアに騎乗します。前走7着の馬でしたが、この馬を勝利に導きます。しかも、その時のタイムが芝1600mの世界レコードになります
ルメール騎手が乗れなくても、替わりの騎手がこれまた超一流。乗り替わりでも素晴らしい成績を残した。鞍上が変わるけど気にすることないよね、と殆どの人が思っていました。ただデータ派の人は、初騎乗でダービーを制した騎手が60年以上出ていないと言う点が引っかかっていました。それも少数派だったと思います
調整も順調に進み、最終追い切りも殆どの人が褒めちぎっていました。実は角居厩舎は2021年に角居調教師が引退することで解散が決まっていました。残り少ない年数でしかも超有力馬。数々の名馬で世界の大きなレースを制し世界の角居と呼ばれてはいましたが、凱旋門賞は当然勝ってないです。なので、凱旋門賞に向けてダービーを勝つことで、挑戦する資格は十分だと言うことを示すため全力で仕上げたと言えます
ダービーが始まる前の競馬界は、サートゥルナーリアがダービーをどんな形で勝つのかに注目をしていました。一方、ロジャーバローズも調教で癖などを修正し、パワーアップした状態になっています。角居調教師はチャンスはあると考えていたそうです
4-7.もう一つ起きた想定外
ダービー前にもう一つ、重要なことが起きていました。それはリオンリオンと言う馬が居て、この馬がペースを握ると言われていました。この馬の血統は父がルーラーシップと言う種牡馬になります。エアグルーヴの息子でキングハメハメハとの子供になります。とにかく出遅れ癖が酷い馬でした。ゴールドシップばりの出遅れも何度しています。有名なのは有馬記念ですね。私のイメージではゴールドシップ以上のゲート難です。調教師はあの角居さんで、特訓して改善しようとしますが最後まで出来なかったみたいです。能力が高いが故にこれさえなければもっと勝てていた馬と言われてます。これはウマ娘でもエアグルーヴがゲート難のスキルを持ってNPCとして登場する育成キャラのシナリオがありますが、それがルーラーシップの再現だと言われています
その鞍上は皆様ご存知横山典弘騎手で、変幻自在の騎乗スタイルが武器です。逃げでは絶妙なペース配分からなる幻惑の逃げを得意としています。まさに競馬界屈指の名手です。リオンリオンは巧みな逃げで青葉賞を勝っていましたから、名手横山典弘がどんなペースを作るのかにも注目が集まっていました。その典弘騎手ですが1週前のレースで斜行をしてしまい、騎乗停止処分を受けダービーに乗れなくなってしまいました。書いてて思いましたが、このレースに至る過程で斜行がかなり絡んできていますね。偶然かもしれませんが
そこで陣営は鞍上に息子である横山武史騎手を指名しました。武史騎手は典弘騎手のいいところを受け継ぎつつも、積極的にレースを展開する騎手です。デビュー年の2017年は13勝でしたが、翌年35勝をあげて成績を伸ばしていました。そこに満足せず、2018年末から騎乗フォームを改造し、それがピタリとはまり冬の小倉開催でリーディングを獲得します。まさに成長著しい騎手でした。ルメール騎手もテレビのインタビューで若手の中でも武史はトップジョッキーになると言って評価しており、騎乗技術にも定評がありました
そんな武史騎手ですが、その当時はダービーに乗ったことがない騎手でした。若手ホープとは言え、まだ3年目ですから当たり前のことです。デビュー2年目でダービーに乗るレジェンド武豊がおかしいだけです
元々典弘騎手はやることが読みにくい騎手です。馬券師は彼に何度も色んな意味で泣かされています。いわゆるポツン騎乗ですが、それはここでは語りません。それが若手騎手に替わったため、なおさらペースが読めなくなってしまいます。緊張して普段と違うことをする可能性が高いですからね。こうしてダービー本番を迎えます
5.ダービー当日
5-1.ついに覚醒!乾坤一擲の大爆走!
レース当日のサートゥルナーリアの人気は当然1番人気。単勝オッズ1.6倍で単勝支持率は49.6%。単勝馬券の売上の半分近くがサートゥルナーリアの単勝ということになります。この単勝支持率は、ドゥラメンテやジャングルポケット、ミスターシービー、スペシャルウィーク、タニノギムレット、オルフェーヴル、トウカイテイオーなどの名馬以上の数字です
単勝オッズ1.6倍はどのくらい勝率などがあるのか。オッズ毎の勝率を計算しているサイトによると勝率が52%。半分は勝つ計算です。更に連対率だと72%、複勝率は81%になりほぼ馬券内で固いと言う事が言えると思います。馬券師によってはこう言う馬お金をぶっ込むと言う人もいます
その他の人気馬はダノンキングリーとヴェロックスが4倍台で並んでいました。皐月賞を見て勝てるならこの馬だろうと、逆張りをする馬券師の支持を集めていました。ダノンキングリーには戸崎騎手が。ヴェロックスには川田騎手が乗っています
枠順はロジャーバローズは1枠1番。最内枠。先行力が武器のこの馬にとっては最高にいい枠が回ってきました。1枠1番は1992年以降で最も成績が良く、勝ち馬も沢山出ている枠です。やはりこの馬はかなり運がいいです
ただ、サートゥルナーリアも3枠6番と脚質的にはいい枠を引けています。データ的には92年以降勝ち馬がいない馬番ですが、馬券師、競馬ファンは気にしてなかったでしょう。その当時の記事では、枠番も追い切りもいいんだからお手上げだと各陣営は語っていると書かれたものもありました
ロジャーバローズは12番人気の93.1倍。ほぼ万馬券になります。単勝オッズが90倍以上になると勝率が1%、連対率2%、複勝率5%とかなり悪いものになっています。ちなみに、某大物競馬予想系Youtuberにはこのロジャーバローズを本命にしていました
その当日、私は佐賀競馬場のJRAの馬券が売っている施設にいました。私もサートゥルナーリアだろうと思っていました。なのでサートゥルナーリアの単勝や、サートゥルナーリア絡みのワイド馬券をしこたま買っていました
他の馬も一応買っていましたが、あくまで単複のみ。5000円買いましたが、4000円くらい損するだろうなと考えてました。当時は馬券で儲けるとか勝つことを微塵も考えていなかったので、楽しむ程度の買い方をしていました
当日の気温は30度を超える炎天下でした。馬は暑いのが苦手な生き物です。普段よりイライラする馬もけっこういます。さらに、ダービーは観客が沢山入るレースです。なので必然的に観客も多くなります。当日も11万人が集まっていました。これは19年で最も多くの観客がいたレースです
この当時はファンファーレ時やスタート直前まで大きな歓声が上がるのも普通でした。その歓声で入れ込む馬も珍しくはありませんでした。サートゥルナーリアはそう言った条件が合わさって入れ込んでしまいました。鞍上のレーン騎手は
「ゲートに着いてから時間がたって、馬のテンションが上がってきてしまった」
とレース後のインタビューで答えています。この入れ込みの影響でゲート内で動いてしまい、スタートで立ち上がって出遅れ、普段より明らかに後ろのポジションになってしまいました
出遅れた瞬間、競馬場では悲鳴が上がっていました。佐賀競馬場でも同様の事が起きてました。馬券を買ってた人は聞いてないよと思った事でしょう。私も嘘やろと思ってました
当のロジャーバローズは完璧なスタートで理想的なポジションを掴みます。リオンリオンはゲートの出こそイマイチでしたが、武史騎手がガシガシ押して先頭に躍り出ます。ここまでは誰しも想定通りだったでしょう。リオンリオンの馬券購入者もいいぞ武史!と言いたかったと思います
問題はここから。先頭に躍り出てから少しは抑えますが、それでも手は他の騎手より動いています。馬もその通りにどんどん前に行きます。向正面に入る頃には2番手を追走していたロジャーバローズを8馬身、大体20mほど突き放して先頭を直走ります。観客は思います。これ飛ばしすぎじゃね?
その予感は見事に的中。1000m通過タイムは57.8秒。この年の安田記念の1000m通過タイムが57秒なのでマイル戦に近いペースで走っていたわけです。2400mでこのペースは明らかに飛ばしすぎです。このペースで走って距離が保った馬を私は聞いたことがないですし、最近も超一流の大逃げ馬で、グラスワンダーの声優さんが好きな方がご存知のパンサラッサと言う馬がこれよりも0.2秒早いペースで走りましたが12着に沈んでいます。そのくらい無謀なペースです。観客の中には1998年のダービーでのキングヘイローと福永騎手の姿を重ねた人もいたと思います
武史騎手の名誉のために言っておくと、あの時の福永騎手とは違い武史騎手は狙ってやってたと思います。武史騎手のレース後のコメントがこちらです
「悔いのないレースはできました。前半は気持ち速くても、リードを取りたくて、あの形になりました。最後は前半で流したぶん、止まってしまいました」
強がりにも聞こえますが、これは本当の気持ちだと思います。後々の藤岡佑介騎手との対談でもはっきりと悔いはなかったと答えています。武史騎手は割と本音で語るタイプですから
ロジャーバローズも後ろを4馬身ほど突き放して2番手を独走しています。おそらく1000m通過タイムは59秒程度とやや早い感じでした。これは浜中騎手が思い描いていた理想的なレース展開でした。自身で逃げを打つことも想定していましたが、リオンリオンがいるので早いペースにしてもらってそれを2番手で追走しようと決めていたそうです。この時点で浜中騎手の手のひらの上だったのかもしれません
ただ、それを全く知らずに見ていた人はこう思います。前の2頭はどちらも潰れるはずだと。どうせ、サートゥルナーリアが後ろから差してやっぱ強いかったねとなるんだろうと。3コーナー、4コーナーを回っても隊列はほぼ変わらず。リオンリオンは飛ばしすぎたことで少しずつ下がってきています
直線に入ったところで浜中騎手は腕をガシガシ動かします。他の馬も仕掛け始めます。東京の直線は長いので、普段だったら余裕を持って仕掛けます。ただ、ダービーは誰にとっても特別で勝ちたいレースなのでどの騎手も早めに動くレースになります。故に、人気のない先行馬がスピードの持続力で粘り込んで、そのまま馬券内に入着したり勝ってしまう展開も珍しくはないです。18年のコズミックフォース、22年のアスクビクターモア、23年のタスティエーラなど毎回ではないですが、時々起きてその度に配当が跳ね上がっています
レースは400mでリオンリオンを完全に抜き去ります。後ろの馬とはまだ差がありますが、そんなに離れていません。後ろの馬が差すだろうとまだ競馬ファン達は思い込んでいます。しかし、中々差が詰まりません。300mを過ぎたところで外から勢いよくサートゥルナーリアも上がってきます。キタキタ!と見ていた人は思ったはずです。が、残り200mになっても前との差が詰まらず3番手の位置にいます
これ、届かないんじゃね?
見ていた人がやっと気づきます。サートゥルナーリアが届かずに負けてしまうと言うことに。サートゥルナーリアを1着想定で買っていた人は絶望の悲鳴をあげ出します。2番手に居たダノンキングリーを買っていた人は差せ!差せ!と声を荒げます
ダノンキングリーとロジャーバローズの差は少しずつ縮まっていきます。戸崎騎手渾身の追いに応え、じわじわ、じわじわと。ですが、劇的には詰まりません。ダノンキングリーを1着想定で買っていた人も絶望し始めます。さらに後ろではサートゥルナーリアの脚が止まり始めます。そして50mほど前でヴェロックスに抜かれてしまいます。1着想定だけでなく、サートゥルナーリア絡みの馬券を買っていた人も絶望の悲鳴をあげ始め、場内は普段以上に悲鳴で溢れ返ります。そして前のロジャーバローズとダノンキングリーがやや並ぶ形で入線します
前二頭並んでゴールイン!
実況の声が聞こえます。ただ、見ていた人はわかっています。並んだと言ってますが、明らかにロジャーバローズが前に出ていました。場内のターフビジョンもロジャーバローズを映していました。競馬場、馬券売り場共にいろんな歓声が上がりなんとも言えない熱狂というかなんというか。形容できない空気になっていました
勝ち時計は2分22秒6。当時のダービーレコードでした。現在でも歴代3位の凄いタイムになります。そのタイムを見て場内はもっと凄い空気になっていました
5-2.レース後のいいお話
観ている方はロジャーバローズが勝ったことをわかってますが、当の浜中騎手はイマイチ自信がありません。勝った感触はあるものの、この大舞台で間違えていたら大変なことになります。武豊騎手のスペシャルウィークのウイニングランのようなことが起きてしまいかねません。ゴール後しばらくして馬を止める前に、浜中騎手は近くにいたダノンキングリーの戸崎騎手にこう尋ねます
「ぼく、残ってますか?」
聞いた話によるとこの時戸崎騎手は負けたのがわかっていたので相当悔しかったようです。前年も同じクビ差でダービーを勝てず2着だったので本当に悔しかったと思います。ただ、それでも浜中騎手に笑顔で
「残ってるよ」
と言って握手を交わしたそうです。感情は分かりませんが、当時のレース後の映像でも馬上で握手をしているのは確認できます
そして勝利した馬のみに許されるウイニングランでスタンド前まで戻ってきます。そこで大勢の観客の前で高々と拳を突き上げます。観客も大きな拍手で迎えました。その後の検量室でも戸崎騎手は浜中騎手におめでとうと言って、力強く握手をして浜中騎手の勝利を讃えていました。戸崎騎手の人柄が伝わってきますね
重賞では検量後に共同会見に臨みます。この時意外にも笑顔で受け答えをしていました。実感が湧かないとかこの馬の騎乗依頼をもらえたことが幸運だと言った受け答えをしていました
そこから、競馬の道を志したのはミッキーアイルの時に亡くなられた祖父がいたからと話します。祖父は生きている内に浜中騎手がダービーを取ることをずっと見たかったそうです。そこから浜中騎手の目に涙が溢れ、なんとか夢を叶えられてよかったと答えていました。前年のダービーも競馬ファンが涙を流す感動的なものでしたが、今年もドラマがあったんだなと感動しました
また、私は場内のテレビで放映されたグリーンチャンネルの映像しか見ていないので、リアルタイムでは見れてないのですが、浜中騎手の師匠である坂口さんは関テレの競馬BEATと言う競馬番組の生放送に出演されていました。勝った直後は手を挙げて喜んでいましたが、少しすると涙が溢れ始め「言葉になりませんと」言って頭を軽く下げながら、涙を流されていました。それ以降はずっと涙を流してと言う感じだったそうです。当時の映像を見る機会があったので見たらそんな感じでした
実は坂口さんにとって浜中騎手は唯一の弟子でした。それだけ思い入れもあったでしょうし、斜行の時は既に引退されてましたが苦しかったのは知っていたと思います。だからこそ、唯一の弟子が自身が勝てなかったダービーを勝ったこと、苦労が報われたことと、色んなことが混ざっての感情だったんだと思います。浜中騎手が競馬場から帰る際に坂口さんに電話で報告をするのですが、お互い言葉に詰まって会話にならなかったと後日藤岡佑介騎手との対談で語っています
5-3.馬券を買っていた私の運命と学べたこと
こんな感動的で大波乱のあったレースでしたが、実は私は馬券を当ててました。なんとロジャーバローズの単勝と複勝どちらも買ってました。馬券購入の締め切り10分前に売り場のレースの要点を纏めたポスターに、京都新聞杯好走馬は走ると書いてあったのを見て、これは買わなきゃと思って急いで各100円分を買い足したのです
それを見てなければ間違えなく買えなかったでしょうし、私はレース後しばらく買ったこと自体忘れて呆然としていました。外れた……5000円負けだと思ってました。が、馬券を見返して、買ってるやん!となった時は手の震えが止まりませんでした
そんな感じで初めてのダービーはその他の馬券もいくつか当たっていたので、5000円が13000円になって返ってきました。それを元手にして普段は買えないお高めの惣菜を買って夕食に食べたのを覚えています
ただ、これはその当時の知識だから買えたのであって、今の自分が記憶を無くして馬券を買ってたら当たってないです。今は買い方も馬券に対する全く違うので、絶対にサートゥルナーリア軸にしてたでしょう。また、京都新聞杯好走馬のデータは京都新聞杯の1着馬だけが当てはまるデータだったのです。当時はそんなこと一切調べずに買ったので、今だったら事前にデータは粗方調べるので、その事に確実に気がつくでしょう。故に今の自分だったらそもそも買う候補にすら入れずに即切っていたでしょう。そう言う意味では私もついていたのかなあと今は思っています。
いずれにせよ、このレースで競馬、ひいては勝負に絶対は存在しないこと。どんなに事前の評価が低くても出て一生懸命やっていれば勝てる可能性は0ではないこと。馬券を買う上でどんな馬でも好走する可能性はあるから、決めつけて買わないこと。大切なことをいっぱい学ばせてもらいました。最初に見たダービーがこのレースで良かったと心の底から思っています。以降は、ダービー後の他の馬や騎手の話にいきます
6.各馬と騎手のその後
6-1.レーン騎手のその後
レース後、レーン騎手は出遅れと早めに仕掛けたことが祟ってしまったとコメントを残します。絶対的な馬に乗って馬券内にすら入れなかったので相当ショックだったと思います
ただ、レーン騎手はその後も活躍します。1ヶ月後に牝馬のリスグラシューで宝塚記念を圧勝します。そしてその年の有馬記念も圧勝し、グランプリレース完全制覇を成し遂げます
宝塚記念も有馬記念もメンバーレベルは高く、有馬記念ではこの記事でも触れたアーモンドアイに完勝しています。しかも鞭を入れずで最後は流して5馬身差と言う圧勝でした
その時の2着はサートゥルナーリアでした。世界的名手のスミヨン騎手が腕と鞭で必死に追っているのを尻目に、スーッと軽く抜き去る姿には戦慄すら覚えました
それ以降も日本に来るたびに結果を残し、海外遠征時にも日本馬の騎乗依頼が来る頼れる騎手に成長しました。そして2023年はサトノクラウン産駒のタスティエーラでダービー初勝利を挙げます
ちなみに、オーストラリアにはこのレーン騎手以上に上手くて勝ちまくる騎手がいるので、その騎手も日本に来て欲しいですね。
あと、私的にはレーン騎手がいずれ日本で通年免許を取得することを願っています。上手い騎手はお手本になるので居て欲しいですね
6-2.武史騎手のその後
リオンリオンに騎乗した武史騎手はレース後に父の典弘騎手と話したそうです。レースについて「いいレースだったんじゃないか」と褒められたそうです。ただ、向こう正面でのペースの落とし方などの細かい逃げのテクニックをその時に叩き込まれたそうです
この時の騎乗で見せた思い切りの良さや胆力は、厩舎関係者や騎手、記者からの評判を高めるものになりました。このダービーでの騎乗経験と典弘騎手の教えが翌年以降の更なる急成長に繋がります。翌年は重賞初制覇など年間94勝を挙げ、2014年から続いていた戸崎騎手の関東リーディングを阻止します
さらに翌年は関東リーディング獲得だけでなく、1年でG1を5勝します。エフフォーリアと言う相棒と主に暴れ回りますが、タイトルホルダーと言う歴代屈指の逃げ馬でも勝っています。あの時の典弘騎手の教えが活き、菊花賞で典弘騎手顔負け幻惑の逃げを見せ圧勝します。その後はどちらも出走する有馬記念んでエフフォーリアを選び鞍上を降りますが、替わりの騎手が横山和生騎手になります
和生騎手は武史騎手のお兄さんです。有馬記念は負けてしまいますが、和生騎手鞍上でタイトルホルダーは天皇賞春と宝塚記念を勝ち、一気に有力騎手の仲間入りを果たします。細かいことはまた別の機会に話すと思います。そこを書いちゃうと長くなりすぎるので。いずれにせよ、典弘騎手の幻惑の逃げは親子2代、どちらの息子さんにも受け継がれているようです
6-3.サートゥルナーリアのその後
サートゥルナーリアはこの敗戦で凱旋門賞行きが白紙になり、国内に専念することになります。角居調教師はかなり複雑な感情だったと後に言っていました。有力馬を負かしてしまった責任や苦しさ、でも自身の管理していた人気薄の馬をダービー勝利に導けた。私がその立場でも複雑ですね
今振り返ればデータ的にサートゥルナーリアが負ける要素がありました。私が知っているのは新馬戦が1600mだったことと、血統にサドラーズウェルズの血が入っていたことです
サドラーズウェルズは欧州競馬の主流血統です。サドラーの後継が欧州にはウヨウヨ居て、この血が入らない事が考えられないレベルの主流血統です。サドラーの血を持つ馬は、力の要る重たい馬場が得意になる傾向があります。事実、欧州の競馬場は日本の競馬場とは違い、自然に沿って作られた競馬場をある程度活かす形で作られています。それによって日本の競馬場ほど馬場が綺麗ではありません。水捌けも日本ほど良くないので、割と馬場が悪くなりやすいです。そう言った環境なので、スピードは必要ですが道悪の馬場を苦にしない力もかなり重要になってくるので、サドラーの血がうってつけになります
一方で日本の競馬場、と言うより東京競馬場のダービーが行われる週はCコースに替わった1週目になります。4月末からの東京開催では、A・B・Cの順にコースが変わるのですが、これは内ラチをどんどん外側に持っていく形をとっています。コース自体を変えるわけではないです。内ラチを外に持っていくことによって、痛んで走りにくい馬場が隠れますので、走りやすい外の馬場を使いやすくなります。なので、スピードが出やすくなります。また、日本の競馬場は造園技術の高さから、馬場が相当綺麗で水捌けも抜群なのでいい状態で走りやすいです。そこもスピードの出やすさを強調しています。近年はその傾向が顕著で、競馬ファンは日本は超高速馬場だと言っている人が多いです
欧州と日本のどちらがいいかは一概には言えません。馬場に対する考え方が根本的に違いますので。ただ、欧州では重さが求められるのに対し、スピードが出やすい日本、ダービーにおいては軽さの方が求められがちです。故に、サドラーの血は重い馬場を得意とするので、重さがどうしても出やすいです。一応スピードの要素もありますが、それ以上に重さが出やすいのがサドラーの血になってきます。それが邪魔してしまっている可能性が高いです。2006年にサドラーの血を持ってる馬が勝ってはいますが以降は日本の馬場の高速化が進んだ影響か勝っていないんですよね。そこが血統的な敗因かなと考えられてます
新馬戦1600mですが、オルフェーヴル以来、1600m以下でデビューした馬はダービーを勝っていませんでした。03年から23年までの20回分を見ても、1600m以下は4頭しかいません。内訳は1600mがウオッカとオルフェーヴル。1400mがネオユニヴァースとディープスカイになります。サートゥルナーリア以降も23年までは1600m以下でデビューした馬は1頭も勝っていません。これがデータ的な敗因だったかなと考えられます
実は確勝に見えてデータや血統で見ればかなり危うい要素があったわけです
国内に専念したサートゥルナーリアですが、以降重賞は勝つのですが、G1は勝てませんでした。そして怪我の影響で翌年の宝塚記念がラストレースになってしまいました
現在はロードカナロアの後継種牡馬として、次世代に血を繋げる仕事をしています。ダービーには届きませんでしたが、種牡馬として大人気だったりします。早いうちから勝てる早熟性とスピード能力。血統もシーザリオにキングカメハメハとまさに良血のそれ。さらに、ディープインパクト牝馬に付ければ奇跡の血量とよばれる3×4クロスができます
クロスはインブリードの事で、3×4は高祖父母ともう一つ上の世代に同一の祖先がいる事になります。インブリードは優秀な競争能力や特性を色濃く遺伝させる事で、子孫にそれを受け継がせると言う目的があります。エルコンドルパサーはこのインブリードの極みのような血統です。その中でも3×4は名馬が多く、ウマ娘で言うとオルフェーヴル、デアリングタクト、トーセンジョーダン、エルコンドルパサーがこのクロスを持っています。ただ悪いこともあって、主に気性や健康面が悪くなってしまいがちですね。人間でもそうなりますし。実馬のエルコンドルパサーが早くに死んでしまったのもこれが影響してるんじゃね?とも言われます
長くなってしまいましたが、サートゥルナーリアはクロスと言う競走馬の能力を高めやすい要素を仕込むことができると言うわけです。これは馬の生産者にとって魅力的な要素になります
初年度の種付料が600万円と普通の種牡馬のデビュー時の料金より割と高めではあります。それでも1年目に205頭の牝馬が集まります。要因として、父のロードカナロアがアーモンドアイや自身などの活躍で種付料が高騰し、1500万円と倍近い値段になっています。同じシーザリオの子のエピファネイアも前年にあのデアリングタクトが牝馬三冠を達成。他の馬も活躍したためこちらも種付料が1000万円とサートゥルナーリアより高いです
同じ血統配合のリオンディーズが居てこちらは半額ではあります。ただ、クラシックでの実績はサートゥルナーリアの方が上なので、ダービーや皐月賞を目指すとなるとサートゥルナーリアに分があります。今年リオンディーズ産駒で天皇賞春を勝つテーオーロイヤルが出てはいます。ただ、テーオーロイヤルに関しては、やーしゅんさん曰く体型的にはリオンディーズではなく母父のマンハッタンカフェの体型になっているので、それで長距離で走っているのではないかと言う話です。実際テーオーロイヤル以外の産駒はマイルから2000mが中心です。確率として長い距離がいける馬が出るのが難しそうですね
なのでロードカナロアとエピファネイアの代替種牡馬でありながら、クラシックを狙えると言う事で牝馬が集まったのだと私は考えています。サートゥルナーリア産駒は今年、最初の世代がデビューします。生産牧場からも評判がいいらしく、活躍が期待できそうです
種牡馬の評価はある程度年数が経たないとわからないものです。あのドゥラメンテも、産駒デビュー当初は失敗だと言う競馬ファンもいました。現場でもダメかも知れないと言うことを言ってたようです。しかし、今やその子ども達が多くのG1レースや重賞で距離を問わずに結果を出しています。失敗だと言う人は誰もいません。早くに死んでしまったことを惜しむ声ばかりです
そう言うわけで、成功するか失敗するかはまだわかりません。それがわかるのは少なくとも5年は必要でしょう。いずれにせよ、自身の届かなかったダービー制覇を子ども達で見たいですね
6-4.ロジャーバローズと浜中騎手のその後
他の馬の事を大体は話せたので、ロジャーバローズサイドのお話をします
ロジャーバローズの馬主さんは勝った直後はそんなに嬉しい感情は湧いてこなかったそうですが、周りの先輩馬主さんなどから祝福されてから感情が湧いて涙が出てきたと後に答えています。その後、ロジャーバローズ陣営は驚きのレースプランを打ち出します
凱旋門賞挑戦
ダービー前では頭になかったダービーに挑戦しようと言う計画が持ち上がります。そして、凱旋門賞に向けて、陣営は本気で調整を始め、そこに向けたトレーニングを詰んでいきます。サートゥルナーリアの夢を打ち砕いた馬が、その夢に挑戦する。そう言うシチュエーションが競馬ファンを熱くしましたし、凱旋門賞で日本馬が見られることを喜ぶファンもいました
しかし、その計画は打ち破られます。調整中に屈腱炎を発症してしまい、引退となってしまいます。屈腱炎は程度にもよりますが、ひどい時は復帰が無理な場合もありますし、仮に復帰できても以前ほど走れなくなる馬もよく見かけます
屈腱炎は不治の病や競走馬のガンと呼ばれることもあります。ウマ娘化した馬でも多くの馬がこれで引退に追い込まれてますし、私の好きなユーバーレーベンと言う馬もこれが原因で引退しています。ロジャーバローズがどのレベルの屈腱炎だったかは分かりませんが、当時はディープインパクトが死んでしまった年でした。ディープインパクトは種牡馬として大きすぎる存在だったため、産駒から後継となる種牡馬を探さないといけませんでした
当時はディープインパクトの子供世代の種牡馬で結果を出してる子がまだいませんでしたし、そもそもデビュー間もない時期だったので、誰が後継になるかが分かりませんでした。そうなるとディープインパクト産駒で大目標とされるダービーでの実績があり、血統があのジェンティルドンナとほぼ一緒のロジャーバローズはうってつけの馬だったのです
治った可能性はありますが、治った後また怪我して最悪命を落として血が繋がらないと言うのはあってはならなかったので引退したと言うのはあったでしょう。浜中騎手は命を落とす怪我でなくてよかった。ロジャーバローズの子供でダービーに挑めたらいいなと引退時にコメントを寄せていました。こうして、ロジャーバローズの競走馬生活は幕を閉じました
現在、ロジャーバローズは種牡馬として元気に活動しています。産駒が去年デビューしたばかりになります。重賞には出てきていますが、まだ勝った馬は残念ながらいません。ですが、競馬ファンは分かっているでしょう。期待されていない時にこの馬は大きな結果を出すのだと。いずれロジャーバローズのように、大舞台でとてつもない走りをする子が出てくるかもしれません。その日を競馬ファンはきっと今かいまかと待ち侘びているはずです
そして毎年ダービーが来るたびに馬券師は今年のロジャーバローズを見つけるのに躍起になっています。そのくらい、あのレースは大きなインパクトを残したのでした
浜中騎手はその後また怪我をして、さらに豊沢軍団に武豊騎手が加わり以前より成績が落ちてきています。しかし、重賞は毎年のように勝っており勝負強さは消えていません。中央G1こそ勝っていませんが、G1級レースをメイショウハリオと何度も勝っています
また、中央G1も自身のターニングポイントになったミッキーアイルの子であるナムラクレアで戦っています。本来であれば和田竜二騎手が乗る予定だったレースを和田竜二騎手が前日に負傷したため、代打で騎乗し勝利に導きます。和田竜二騎手が負傷したレースは色んな意味で伝説になっています。「ダークエクリプス 背面跳び」で検索するとわかると思います
それからこの馬の主戦になり、短距離戦線を大きく賑わせてきました。まだG1には届いていませんが、浜中騎手ならそこに導いてくれるでしょう。そんな日を私は待ち望んでいます
本当はこの紹介文を書いている5/26のダービーで観れると信じていましたが、メイショウタバルが直前の怪我で出走取り消しになってしまいました。私の大好きなゴールドシップ産駒の久々のダービーだと言う事で楽しみにしていましたが、ただただ残念です。秋以降にその楽しみは取っておきましょう。秋も浜中騎手で行くでしょうから、活躍を期待しています
7.今年のダービーについて
今年のダービーは、あの時リオンリオンに乗るはずだった横山典弘騎手鞍上のダノンデサイルが勝ちました。ダノンデサイルはレース中に脱糞しながら走ってしかも勝ったことで競馬ファンには有名になります
前走で怪我によって競争除外、わかりやすく言えばレース前に棄権をしていました。その怪我に関しては担当されている厩務員さんですら見ただけではわからないレベルでした。厩務員さんもテイエムオペラオーやオメガパヒュームと言う歴史的な名馬の厩務員だった腕利きの人だったので、その人ですらわからないレベルだったので些細な変化だったのだと推測されます
それでも鞍上の典弘騎手が止めたから競争除外になったのです。ホクトベガの一件依頼、馬の怪我に人一倍敏感で大事にする典弘騎手だからできた事でしょう。これで無理をしなかった事が功を奏したのだと考えられます
ダービーはスタートから前目につけて、直線は焦る事なく悠然と仕掛け、抜け出してからは少しずつ差を広げて寄せ付けない。完勝と言うに相応しい内容でした
レース後、「馬は大事にしたら返してくれる。ダービーを勝ったこともうれしいけれど、皐月賞の判断は間違っていなかったかなと。馬に感謝です。調教師と話して調教を組み立ててきました」とコメントを残しています。馬を大事にする典弘騎手らしい言葉だと感じました
典弘騎手はこれがダービー3勝目と最年長ダービー勝利記録になります。息子の武史騎手と和生騎手はダービーをまだ勝ててないので、ダービーはこう乗るんだぞと教えているようにも見えました。私は当日のお昼頃、ウマ娘のサークルのチャットにダノンデサイルエイシンフラッシュ説とか言う文字を書いてました
知らない方からすれば何言ってるんだコイツと思われたと思います。これは今までの戦歴と内容がエイシンフラッシュに凄く似ていました。新馬戦負けていること。同じ京成杯を勝っていたこと。上がり3位以内の脚をほぼ確実に出せていたこと。ただし、33秒台には至っていないこと。左回り未経験であること
これらが重なっていたので、ダノンデサイルは実質エイシンフラッシュだと言っていたのです。友人とのLINEでは、ダノンデサイルの血統的なポジ要素とエイシンフラッシュに似てると言うことを書いていました。なのでダノンデサイルは完全に抑えてました。ロジャーバローズ程ではないにせよね、穴馬ではあるので勝利に驚いた方が多いかなと思います
馬券上は1着のパターンを買っていませんが、勝っても全くおかしくないと考えていたので、そんなに驚きの感情はなかったです。結局紐抜けで外してますが爽やかで後味のいい気分でした
お気づきだとは思いますが、ダノンデサイルはダノンキングリーの馬主さんと同じ方です。冠名がダノンである事からダノン軍団と呼ばれ、馬主さんは野田さんと言います。夫婦で別々に馬主をされており、奥さんはミッキー軍団を率いています。ミッキー軍団はオークス、秋華賞、宝塚記念などを制しています
ダノン軍団はとにかく3歳クラシックを勝つのが夢でした。その為に高額な1歳馬や0歳馬をセールなどで買いまくります。日本で16番目の金持ちの方なので、そのくらいはできます。藤田社長、サトノ軍団の馬主さんより金持ちです。ダノン軍団がウマ娘化されたら、サトノ家を越える金持ちキャラになりそうです
ただ、買った馬の多くがマイルや短距離が主戦の馬でした。そう言ったことから、ネットの競馬ファンはダノン=マイラー、短距離馬と言う見方をしていました。原因として言われているのは買っている馬の馬体が筋肉モリモリな馬が多いからと囁かれています
その手は馬はマイルなど短い距離が主戦場になりやすいです。人間でも短距離走の選手は筋肉モリモリですし。ミオスタチン遺伝子の話でもしたように、筋肉量が多いと短距離に出やすくなる傾向があるのでそうなってしまうのも仕方がなかったのだろうと思われます。つまり、やりたい事とやってる事が一致しない状況が続いていました
野田さんはかなりのご高齢になるので、チャンスが少ない可能性もあった中でクラシック制覇。しかもあのダービーを勝てたのだから喜びは計り知れないものがあると思います。惜しい思いもしてきましたが、やっと夢が叶ってよかった、おめでとうございますと祝福したいです。おめでとうございます
ちなみに、今年のダービーと19年ダービーは共通点が穴馬が勝ったこと以外にあります。それが、二頭出しと言う要素があったことです。19年の二頭出しは角居厩舎の所属馬を二頭出していた。サートゥルナーリアとロジャーバローズ。今回はダノン軍団が二頭出しをしていました。それがダノンデサイルとダノンエアズロック。人気はエアズロックの方が上でした
エアズロックはデビュー当初からポテンシャルが評価されていて、一度負けてそのレースで軽度ですが骨折しました。そこからプリンシパルSを勝ちダービーに駒を進めてきました。鞍上が世界的名手であるマジックマンこと、ジョアンモレイラ騎手。鞍上効果とデビュー時の期待の高さから人気が高くなっていました
こう言う二頭出しの時には、「二頭出しは人気薄を狙え」と言う格言があります。厳密に言えば、同一厩舎ではありますが、同じ馬主の二頭出しも含める場合もあります。この二頭出しはデータ的には微妙だと言う例も多いのですが、印象に残るのでつい買いたくなるんですよね。このレースもそうでしたし
2着はあの時と同じ戸崎騎手です。結局あれ以降もダービーを勝てておらず、今回は大チャンスと言うべき馬で挑みました。奇しくも、サートゥルナーリアと同じ無敗の皐月賞馬でした。あの時ほど抜けた1番人気ではなかったにしろ、皐月賞は余裕を残した調整だったので勝つことを凄く期待されてたと思います。戸崎騎手は重賞も平場も同じ1勝と言う考えでやってる騎手ですが、それでもダービーは別格だと思うのでショックでしょうね。成績的にはいつ勝ってもおかしくないので、次の機会は絶対やってくるはずなのでそこで挽回して歓喜の表情を見せて欲しいですね
サートゥルナーリアの所で触れた、サートゥルナーリアの危ない要素ですが、実はダノンデサイルは両方満たしてます。ただ、サドラーの血は入っていますが、それは父親だけで入っていない母親の血統は米国型のスピードの要素が爆弾のように詰め込まれています。それがカバーしたのではないかと私は考えています
単勝オッズが低くなった原因は前走を競争除外した事と、血統、データ的なマイナスに引っかかったから血統派、データ派が買わなかったと言うのがありそうです。加えてダノン軍団=マイラー=距離持たないと言うイメージが先行していたのは確かでしょう
競馬はどの予想のやり方も完璧ではないです。限界はあります。馬体にしろ血統にしろデータにしろオカルトにしろ調教にしろ。色々ありますが、そのやり方では絶対に無理なことも多くあります。今回は私が使ってたデータと血統で予想をしていた人は当てにくかったと言うことになります。何がともあれ、ただ一つのことを盲信するのは危ないと言うことを今日のダービーで学べたと言えるでしょう
8.あとがき
最後に。ウマ娘をやっていると、レースは運ゲーだと言う声が度々聞かれます。能力が高いのに低い相手に負けた。スキルで差をつけたのに負けた。そう言った声が日に日に大きくなっていますが、私はそうは思いません。なぜなら競馬に絶対はないとあの時に学んだからです
チャンミで自分より格下の相手に負けても、「君のウマ娘がロジャーバローズだったか」と思えば不思議と怒りが湧いてこないのです。そう思えば、サポカの層が薄くても、持っているウマ娘が特効キャラでなくても、やってみたら勝てるウマ娘は現実の競馬に近いんだなあと改めて思います
まあ私がそう言うゲームに慣れてるからと言うのもありそうですが
以上で、ロジャーバローズの紹介を終わります。長々と回り道も多いお話でしたが、ここまでご清聴いただきありがとうございました。また機会があればお話しできる範囲でやっていこうと思います
参考文献
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大阪サンスポレース部2029年5月26日午後6:38のツイート
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スポニチ『ダービー鞍上の浜中 ロジャーバローズ引退は「残念」も「いい子孫を残して」』
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Forbes Japan『日本長者番付 2024』
https://forbesjapan.com/feat/japanrich/(最終閲覧日:2024年5月29日)
指名馬ランキング(事前のダノンエアズロックの評判が高かったことの証拠です。POGで多くの指名を受ける馬は事前の評判が高い馬ばかりです)
https://www.nikkankeiba.com/pog2023/index.php?func=ranking_horse (最終閲覧日:2024年5月29日)
RON SPO『なぜダービーで9番人気ダノンデサイルが歴史的“番狂わせ”を起こせたのか…「馬は大事にすれば返してくれる」…背景に皐月賞を回避した56歳の横山典騎手の“勇気ある決断”』
https://www.ronspo.com/articles/2024/2024052701/(最終閲覧日:2024年5月29日)
その他各馬の種牡馬実績や血統構成
netkeiba https://sp.netkeiba.com
JBIS https://www.jbis.or.jp