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米、ください

世間で騒がれておる「米不足」。
日本人にとって主食かつ、なくてはならぬ命の食べもの。
そんな尊いものが不足、買えない、というプチ地獄。
「米」がないなら「パン」を食べればいいじゃな~い?
なんて間抜けが過ぎる。
トイレットペーパーが無くなることよりも
小麦粉が無くなることよりも、深刻すぎる問題。
いったい何故こんなことになってしまったのか、
元米農家さんにストレートにたずねてみたところ
「米はたくさんあるが・・・ほにゃらら・・」
あえて伏せておくけれど、大人の事情というやつらしい。
農家さんを批判する気は毛頭ない。
とりあえず現実的に明日の米のことを考える。


最後に米を買ったのは8月上旬。
近所のドラッグストアでは、まだ米があった。
米5キロで2000円だったことは覚えている。
しかし、中旬以降めっきりスーパーから米が消えた。
大手のスーパーも無し、ネット通販では米はあるが
ふざけた金額なので、さらに絶望が加速。


そんな時には米の直売所へ行くか、
米農家さんと契約して購入するか、
どちらかにするとよい、と知り合いからアドバイスされ
それもそうか、とポンコツ老女はいったん冷静になり
近くの農家さんを探す。
たしかに新米の予約もされているし、ネットでも購入可だ。
しかし、良心的価格と思っていた米農家さんでも
日に日に米の金額が上昇し続け、注文をためらっていた。


9月に入り、スーパーやドラッグストアで
新米が少しずつ入荷されるようになってきたが
値段がすこぶるアップ。
10キロで6000円の米を他のお客さんも購入しない。

「数量限定」の米をネット注文しようとしたが
購入をポチっとしても、すぐに売り切れとなる不思議。
ならば、贅沢を言わずに外国産の米で耐えようと思ったが
候補に挙がっているタイ米もカリフォルニア米も
どうにもこうにも体と心が拒絶反応を起こす。
私はジャパニーズババアなのだ、外国産は無理でござる。

気がつけばもう、数週間は米のことばかり考えている。
米のことを考えるだけで憂鬱になって
米農家さんのところへ直撃訪問でもしようかと考えている時
隣町にある「おにぎり専門店」が米の直売所になっており
先月から新米を販売していると知った。


ほとんど期待せずに訪れたところ
ドアの向こうに5キロと10キロの新米が積まれており
商品のひとつひとつに神々しい「新米」シールが貼られ
この空間だけは「米不足」の雰囲気などまるでない、
まさに異空間にいるようで、しばらくそれに見惚れていた。


ちなみに商品たちはみな「玄米」の状態で販売されており、
購入後、自分好みで精米するらしい。
とりあえず5キロ購入、完全なる白米に精米し
ありがたく、少々あっけないほど、新米にたどりつけた。

気になる価格だが、どこの米農家さんよりも優しい価格で
店員さんたちも日々、米を食べ満たされているゆえか
穏やかでフレンドリーであった。


しかし、5キロの米も毎日食せば当然だが減ってゆく。
そうなると、米、米、と私が騒ぎ出しうるさいので
家族が気を回し、さらに10キロを購入してくれた。
まったくひどくやかましい老女だと自省しているが
自分にとっては、米が尽きる=死がよぎる、ため
いたしかたない生理的反応なのだ。
なんせ老女の大好物が、寿司とおにぎり、つまり米で
パンやパスタを欲する洒落たおなごではない、極論だが
米さえあれば他のものが食べられなくなってもよいのだ、
心身ともに「米」に憑かれている自分は
前世も来世もきっと日本人なのだ、答え合わせはできないが

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