小学5年生、担任の衝撃だった一言
今まで妊娠日記ばかり書いていたが、それ以外も気ままにちょっと書いてみようと思う。
これは私が小学5年生だった時の話。
私はド田舎出身で、一学年多くても15人の小規模な学校に通っていた。豊かな自然の中で子どもがのびのびと過ごし、イジメもなく、教師の間ではこの学校に異動になったらアタリ、なんて言われていたらしい。
私の学年は、そんな評判の学校の中で、おそらく唯一雰囲気が悪かった。今なら完全にイジメと言われるような事件もちょくちょくあったし、派閥?的なものも強く、友達の家でみんなで遊んでいたら敵対するグループが荒らしに来た、なんてこともあった。計15人に対して男子10人、女子5人なんていうアンバランスなクラスだったので、どうしても男子の方が権力が強くなってしまう。少し変わった性格でクラスに馴染めずにいた女の子はからかいの対象になった。比較的成績が良かったり、その子の取り巻きとなっていた女の子達は、狭い社会ながらも=ヒエラルキー高め、人気の女子、みたいな扱い。当時の私はなんか知らんが他の子たちより達観しているところがあったらしく、周囲の大人から「ませている子」と評価されていた。グループ学習をサボる輩を席に連れ戻したり、クラスメイト全員から嫌われていたおじさん教師のセクハラまがいのキモい発言をメガネを拭きながらクールにシカトしたり、クラスに1人はいるなんかよくわからないやつだった。
当時、よその学校から来たばかりの担任のA先生にとっては、さぞやりづらい子どもの集まりだっただろうと思う。A先生は小太りなネズミみたいな顔で、他の先生と比べても明らかに頼りなさそうな雰囲気のおじさんだったので、正直とてもナメられていたし、私もあんまり好きではなかった。
とある総合学習だか何だかの時間、A先生に空き教室に呼び出された。結構神妙な面持ちだったように思う。お互い向かい合うように席に着くと、A先生は勢いよくこう言った。
「頼む!5年生を、育ててくれ!」
このセリフははっきり覚えている。が、何を言われているのか、最初は全く理解できなかった。
どうやらA先生は、私達のクラスの担当になってから、そのまとまりのなさにずっと悩んでいるらしかった。先輩教師のやり方を丸パクリして自学を促しては失敗し、授業中の積極的な発表を増やすためにポイント制にしたり、なんか色々工夫はしていたが、うちのクラスはずっと空気が悪かった。
多少ませているとはいえ私はただの小学5年生だったので、人の育て方なんてわからない。わかるわけがない。そんな経験ない。正直めちゃくちゃ戸惑った。その後の話はよく覚えていないが、「何もわからないけどできることがあればね」ぐらいの感じで終わったと思う。A先生の方にも具体的にどうしたいとか、何もプランはなかった。私は自分より遥かに年上で頼りになるはずの存在である先生から、ただ「全体的に雰囲気が悪い同い年のクラスメイトを育てろ」という無茶振りをされただけだった。
正直、学校自体がそれほど好きでなかった私は、すごくモヤモヤした。今思えば、A先生が担うべき大人としての、教師としての役割や責任の片棒を担がされそうになってめちゃくちゃ嫌だったのだと思う。なんで私がそんなことをしなくちゃいけないのか。でも当時は自分の気持ちを的確に表現できる言語力がないし、状況を客観視する力も足りてなくて、親にも「なんか担任から意味わかんないこと言われたんだよね」くらいにしか言えず、モヤモヤを相談できなかった。
この出来事をきっかけに、悪く言えば大人に期待したり信用するということをしなくなり、良く言えば「所詮は同じ人間なのだな」と大人という存在に対しても、先入観を取っ払った冷静に目を向けられるようになった。もちろん、「同い年のクラスメイトを育ててほしい」なんてオーダーに対して真面目に行動なんかしていない。できないし、むしろこの先生ダメだわと見切りをつけて無かったことにしたと記憶している。
当時にタイムスリップできたら、その場で言ってやれるのになぁ。「それってあなたが教師としての他の先生方に相談すべきことであって、生徒に背負わせるものではないですよね?」って。「教師向いてねぇから辞めちまえ」って。人を頼るのが悪いことだとは思わないが、生徒に対してあんな訳の分からない丸投げをするのは教師として普通にアウトではないか。
妊娠したからこそ思うことだが、自分の子どもには、あんな教師は当たってほしくないなと心底思う。