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Xにイラストを投稿する時に単に「AI学習禁止」と記載するのは止めておいた方がいい

 よくある「AIの学習に対して意味がないから止めておけ」系の話じゃないです。AIの学習データセット作成に対して意味がなかったら、ウォーターマークとかノイズとか乗っけるの止めるんですか? 違うでしょ? だからそういう話ではないことだけ先に言っておきます。

 以下適当な目次



自分の作品の権利は守りたい


 Xの利用規約変更に伴い、多くのイラストレーターや趣味で絵を描いていらっしゃる絵描きの方が、Xへ投稿するイラストにウォーターマークや透かしを入れるようになりました。
 クリエイターの方が自分の作品の権利を守る行動に出た、ということで、こういう流れ自体はよいことなのではないかと思います。

 現状は手探り状態で、周りの目を気にして対策をしている方もいることでしょう。自分の作品の権利を守る、という議論や措置については、これからもしっかり重ねていっていただければと思っています。

 ただ、一つ言いたいことは「権利を守ることとルールを破ることは違う」ということです。
 AIの学習素材にされるのが嫌だという気持ちを否定するつもりは毛頭ありません。でもルールは守りましょうねって話をします。

 その一つが「Xにイラストを投稿する時に単にAI学習禁止と記載するのは止めた方がいい」という話です。
 この話は大きく分けて以下の3つのポイントから成り立っています。

  1. Xの利用規約違反であること

  2. 自ら「ルールを破る人間である」と宣伝してしまうこと

  3. やっかいな生成AI推進派に攻撃材料を与えてしまうこと

 それでは、一つ一つ簡単にですがお話していきます。


1.Xの利用規約違反であること


 Xは11月15日に利用規約を変更しました。この記事に目を通している方でこのことについて知らない方はいないでしょうから、ここではどんな変更があったのかは詳しくは話しません。
 簡単に言うと「Xが運用する生成AIの学習にポストを利用することを許可する」という項目が明記されました。

 Xを利用するということは、内心がどうであれ客観的に見れば「Xの利用規約に同意している」ということになります。利用規約に同意しているということはつまり、自分のポストをXが運用する生成AIの学習に使うことに同意しているということです。
 そんなん許可してねーし! とか喚いてもしょうがありません。事実として利用規約に同意しなければXというサービスは使用できないのですから、Xを使用しているということは利用規約に同意しているということです。

 この「Xが運用する生成AIの学習にポストを利用することを許可する」という規約に同意しておきながら「AI学習禁止」とX内で宣言する行為は、だれがどう見たって「利用規約違反」でしょう。

 Xは利用規約に違反しているアカウントに対して、警告なしで処置を行うことができます。検索に引っかからなくなるシャドウバン程度ならまだマシかもしれませんが、いきなり「アカウント停止」処置をされても文句は言えません。だって利用規約違反をしているのは自分で、しかもそれを自分から周囲に触れ回っているわけですから。
 X側の視点からすれば、自分たちが心血注いで作り上げたプラットフォームを、平然とルールを破りながら利用しているユーザーがいるわけです。こういったユーザーがX運営から快く思われないのは想像に難くないでしょう。

 一つ目のポイントは「利用規約違反になるから止めましょう」ということでした。


2.自ら「ルールを破る人間」であると宣伝してしまうこと


 一つ目のポイントの流れを汲むのですが、利用規約違反をしているということは、X側が用意したルールを破っているということになります。

 一度はルールに同意してプラットフォームの利用を開始しておきながら、自分が気に入らないからとルールを破りプラットフォームの利用を継続する。

 AI学習禁止を掲げてXでイラストを投稿することや、その他の活動をすることは、つまり自らをそういう人間であると周囲に宣伝する行為に他なりません。
 「自分にそんなつもりはない!」と言ったところで事実としてそういう状況を作ってしまっているわけですから、どれだけの人にその言葉を信じてもらえるのかは疑問が残るところです。

 また、これは仕事を依頼する側にとっても重要なことです。
 何かイラストを発注したいと考えたときに、ルールを守っている人と、ルールを破っている上にそのことを周りにわかるように宣伝している人。どっちに仕事を依頼すると思いますか?

 少なくとも僕は後者の人間には依頼したりしないでしょう。いつ、自分が気に入らないからと言って契約を反故にしてくるかわからない、というリスクが見えているのに、わざわざそんな人に依頼なんてしません。
 仕事の依頼は守る、Xの利用規約は守らない。そんなダブルスタンダードな姿勢、評価してもらえるとは到底思えません。

 自らのためにも、自分はルールを破る人間であると周りに宣言する行為は止めた方がいいでしょう。


3.やっかいな生成AI推進派に攻撃材料を与えてしまうこと


 これ、マジで無駄で無意味なリスクなんで、こんなリスクを背負ってまでXでAI学習禁止を掲げるメリットってないと思ってます。

 何度も言いますけど、XでAI学習禁止を掲げる行為って利用規約違反です。ルールを破りながらXに居座っているということになります。
 こんなの、やっかいな生成AI推進派の格好の攻撃材料じゃないですか。

 「生成AI否定すんなら出てけよ!」とか「利用規約守らないなら何でここにいるわけ?」とか、まあこんな優しい言い方で言ってくれたらマシな方かもしれませんが、とにかくこういう連中に攻撃する材料を与えてしまうわけです。そんでもって、利用規約違反をしながらXを利用しているのは事実なので、言い返すのも苦しくなってくる。
 実際にこんな輩に絡まれることなんてほぼないとは思いますが、過激な人間なんていうのはどこにでもいるもので、わかりやすいところに攻撃材料を置いておくということは、そういう人に見つかりやすくなるということです。

 単に「AI学習禁止」って記載しただけでこんなクソみたいなリスク背負うのって、あまりにも馬鹿らしくないですか?


じゃあどうしろっていうんだよ! AI学習に屈しろってことか!?


 別にそんなことを言うつもりはありません。AI学習に使われたくないという気持ちは否定されるものではないので、そういう気持ちを持っておくのは大事なことだと思います。
 でも、ルールが存在するプラットフォームを利用する以上、筋は通した方がいいですよというお話です。

 Xは別に利用規約において「X以外のAI学習に使用することに同意しろ」なんてことは言っていません。あくまでXがAI学習に使用することへの同意をもらっているだけです。
 Xを利用する以上、ここの同意は反故にできません。けれども、X以外のAI学習に関しては変わらず拒否の姿勢を貫いたっていいのです。

 Xを利用したいからXにだけはしぶしぶ生成AIの学習に使うことに許可を出したが、だからと言ってその他のやつらに許可を出した覚えなんてねぇ!

 って叫んだっていいです。なのでその気持ちを表現するために、単に「AI学習禁止」と記載するのではなく

「X以外からのAI学習禁止」
「個人のAI学習禁止」

 とか記載しておけばいいんです。あくまで「Xの利用規約は破ってませんよ」とわかるようにしながら「でもAI学習自体に賛成してるわけではないですよ」と宣言できるような書き方をしたらいいと思います。 
 ちょっと工夫するだけで僕が上記で上げた3つのポイントを全て回避できます。

 イラストレーターや絵描きの方がXを利用したい気持ちはわかります。これまで自分で集めたフォロワーや、Xで活動する中で得られた仲間との交流を捨てたくないというのは、人として当然だと思います。
 だからこそ、これからもXを利用していくためにも、単に「AI学習禁止」を掲げることは止めましょう。

 気兼ねなく創作ライフをXで送れることをお祈りしています。



ちなみに

 どうしてもXにポストを学習されることが許容できないという人は、もうXを止めて他に行くしかありません。
 Xは利用規約を変更しましたが、ユーザーに対して何かを強制したわけではありません。Xを利用するかしないかは変わらずユーザー側に権利があるのです。

 どうしても納得できないなら、納得できない人にはXを退会する自由があります。他のSNSに移動する自由があります。
 けれども、Xに居座りながらルールを破る自由はありません。そんなことを許容してしまえば、利用規約の意味がなくなってしまうからです。

 隠れて見つからないように利用規約を破っている人は、当然たくさんいるでしょう。でも今「AI学習禁止」を掲げている人たちは、目に見える形で、誰にでもわかるように利用規約を破っています。
 Xがこういう人たちに対してどういう処置をするかはわかりません。何もしないかもしれないし、何かするかもしれません。それはX運営が決めることなので、僕が言えることは上記の通りに「何かしらの措置が下るかもしれない」という可能性の話だけです。

 ルールを破りながらXに居座り、そのことを周りに宣伝する行為はX社のあなたに対する心象を悪くし、時にはルールを守ってXを利用している他の絵描きの方の迷惑になるかもしれません。
 そんなことになるくらいなら素直にXを退会し、別のSNSに移動した方があなたのためでもあるし、Xをルールを守って利用している他のユーザーのためにもなります。

 自分のその行動が周りから見てどう映っているのか、ということを今一度客観的に振り返ってみてください。絵描き仲間の中だけだと見えてこなかったものが見えてくるかもしれません。

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