こんな装備はいかが?

魈、誕生日おめでとう!!(書いた当時)
その記念も兼ねてのSSです。

魈の武器と鍾離先生の武器の交換を提案する空くんのお話です。

以前、弊ワットで、魈の武器と鍾離先生の武器を交換したことがあったので、それにちなんだお話です。

・ゆる〜いツッコミ
・空くんは、片手剣以外の武器も数分だけなら持てる設定です

※初出 2022年4月17日 pixiv


「魈、こんな装備もつけてみない?」
スッ

そう言って空が差し出したのは、先端に付いている双翼に似た赤い独特な装飾が特徴的な護摩の杖である。

スッ…
「必要ない。我はこれで充分だ。」
キンッ
シュバッ

それを一瞥した後に、魈は和璞鳶を片足で蹴りながら取り出して拒否を示した。

「結構強くなれると思うんだけど。」

「構うな。」
フッ

「そっかぁ…。残念だな……。」
プルプルプル

空の言葉にも頑なな意志を示しながら、和璞鳶をしまった。少し落ち込んだ様子の空の手元が次第に震え始める。空は自身の扱える片手剣以外の武器も数分なら持てる。だが、時間が近付くとこのように震え出すのだ(どういう原理なのかは、空にも正確には分かっていない)。

「用はそれだけか? なら、もう行くぞ…。」
ブォンッ

魈は颯爽と去ろうとする。だが…

「これ、鍾離先生が使ってた武器なんだけどな…。」

ヴォンッ

「…それを早く言え。」
パシッ

「流石の敏捷性〜。」

去り際に放たれた空の言葉を聞いて、直ぐ様戻って来て、魈は護摩の杖を受け取った。

夜叉の名は「敏捷」を意味する。

以前、魈が言っていた言葉を思い出して、その言葉に違わぬ敏捷性の高さに感動すると共に、受け取ってくれた嬉しさも相まって空はひと言添えながら微笑んだ。

ブンッ
スチャッ

武器のなじみ具合とリーチの長さ、それによる間合いをどう取るのかを確認しているのか、何度か武器を振り回している。

「どうかな?」

パシッ
「悪くない。しかし…。」

「しかし?」

「…しかし、鍾離様が使っていた物を我が使ってもいいのだろうか…。」

「大丈夫だよ。鍾離先生も魈が強くなるなら喜んでくれるよ!」

「…そうか。」
フッ

(…良かったね、魈)

空の声で、それを一旦止めた魈は、少し不安そうに言葉を紡いだ。それを和らげるように声をかければ、ほんの少し口角を上げてひと言添えた。きっと脳裏に鍾離を思い浮かべているのだろう。柔らかい笑みがそれを物語っていた。

しかし、それを言えば、魈はきっと"笑ってない"と直ぐに真顔に戻る気がしそうなので、空はあえて言わなかった。そうしていると…

ヒョコッ
「それでも、と言うなら、私のと交換…。」
スチャッ

どこからともなく護摩の杖を片手に胡桃が現れた。心なしかにんまりとした笑顔を浮かべている。

そんな胡桃に対して…

スッ
「いらん。」
ズバッ

「断り方も敏捷〜!!」
スッ

魈は途端に笑みを潜めると同時に、一刀両断するように断った。その返答に納得いかない様子ながらも、胡桃は渋々武器をしまった。

「胡桃! いつの間に…。」

「なんか面白そうな話をしてるな〜、って思ってさ〜。」
えへへ〜

「…もう行くぞ。」

突然現れた胡桃とそのノリについていけない気配を察知したのか、魈は去ろうとする。

「あっ! 待って、魈!! 杏仁豆腐作ったから食べようよ!!」

ピタッ
「………もう少しだけなら居てやる。」
クルッ

"杏仁豆腐"の単語と必死に止める空、その様子に暫し考えた魈は、踵を返して戻ってきた。

「良かった〜。折角だから、胡桃もどう??」

「やった〜!! 食べる食べる〜!!」

フゥ…
(騒がしいな…)

胡桃も参加することに、内心呆れながらも、魈のその口元は僅かに微笑んでいた。

その後、3人で杏仁豆腐を食べて過ごしたのだという。

-END-

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