【タル空】隠す強がり、包む温もり
タルタリヤとドラゴンスパインで釣りの約束をしていた空くんが、風邪を引いてしまいそれを見抜かれるお話です。
(釣り場近くのファデュイ精鋭達はタルタリヤの脅…指示で休暇中です) 短めです。
最近寒くなってきましたね…。それにちなんだ彼シャツならぬ彼上着?ネタです。
・空くんが熱によりボーッとしているので、ツン(対タルタリヤ)が控えめです
・そんな空くんに内心ドギマギしているタルタリヤが居ます
参考資料
・タルタリヤ キャラストーリー
・岩華聚餐 SDキャライラスト
※初出 2021年11月11日 pixiv
ドラゴンスパインにて。
かつてとある邪龍が命を落とした場所とされるこの極寒の大地は、その怨念が根付いてしまった影響なのか、一年中、止まない吹雪による寒空に彩られてしまっている。
そんな極寒の地ではあるが、多少なりとも生命が息づいている。空には鳥、陸には雪狐、そして川辺には魚がその生を謳歌している。出来ることが少ないドラゴンスパインで行える数少ない楽しみ、それは釣りである。
七神の1柱であり女皇様とも呼ばれる氷神が治める国、スネージナヤでは、凍った湖に穴を開けて釣りをする氷上釣りなるものがあるくらいだ。場所は違うが、幸いにもドラゴンスパインには湖面まで凍ってない場所が意外と多い為、釣りを楽しむことができるのだ。
そんな寒空の下を目的地に向かって歩くのは、異国の装いをした旅人の少年、空であった。銀世界に黒を基調とした旅人装束が映えて、どこに居るのかが一目で分かる。また、その金髪も色彩が少ない中でも色鮮やかに映えて、歩くたびに長い三つ編みが尻尾のように揺れている。
数日前、ドラゴンスパインのとある湖面にて、釣りが出来る場所を見つけたことをタルタリヤに話したことがあった。その話に目を輝かせたタルタリヤが、一緒に釣りをしよう、と提案をしてきたのだ。戦闘が趣味と化しているタルタリヤが他に興味を持つ数少ない趣味、それが釣りである。腕前を見せてあげるよ、と言われてしまえば、臨むところだ、とつい闘志が燃えてしまったのだ。だが…
(何だか…さっきよりボーッとするな……)
ふらふらとした足取りのせいか、左右にゆらゆらと三つ編みが揺れている。もし、ここに猫が居たら思わずじゃれついていてもおかしくないくらいの揺れっぷりだ。何故、そんなことになっているのか、それは約束をした後の空の行動に原因があった。
新たに出来た釣り場に夢中になって、長時間寒空の下で釣りをしていた上に、池に落ちてしまったのだ。寒さに震えながらもタルタリヤの腕前に負けないために練習しなければ、という意気込みもありそのまま身体を乾かさずに釣りを続行してしまったのだ。その影響が出たのか、どうやら風邪を引いたらしく熱を帯びているような気がする。それに、身体の節々が痛くて意識もふわふわとしている気さえしてきた。
(でも、約束、したからな…)
スネージナヤ風の指切りで交わした約束。それは、約束する際にいつも2人で行うものであった。
約束は守らなければ。
その意思だけで、身体の怠さをなんとか堪えていた。行ける、大丈夫だ、と自分に言い聞かせるようにしていた空は、ようやく目的地に辿り着いて待ち人へと声をかけた。
「タルタリヤ、待たせたな。」
パッ
「空! そんなに待ってないから、大丈…。」
ピタッ
手を振って笑顔を浮かべるのは、メッシュの入った柔らかな茶髪に存在感ある仮面、そして身につけたマフラーに似た装飾が木枯らしにさらわれて揺れている。右腰には水元素の神の目が鎮座しており寒空に僅かに漏れる陽光に反射して鈍く光っている。この青年こそが、約束をしたタルタリヤであった。だが、当の本人は空と目が合った瞬間、振っていた手をピタリと止めた。
「? どうしたんだ??」
「………。」
スタスタスタ
ピタッ
(な、何だ?)
疑問符を浮かべる空をよそに、そばに近付いてきて立ち止まったタルタリヤは、先程浮かべていた笑顔も消えて何やら真剣な表情をして空を見つめている。その一方で、急に近付いてきたタルタリヤに空は驚きにたじろいだ。
(もしかして、約束の時間、過ぎてたかな…)
すると…
「……空。」
スッ
ふわっ
空が考え込んでいると、不意に右手を伸ばしてきたタルタリヤは、空の頰に触れてきた。何かを確かめるように手の甲で触れてから、今度は頰から顎のラインにかけて、添えるように触れてきた。
「?!!」
ビクッ
いきなり触れられたことに驚いて身体を揺らしながら、頰へと位置を変えた右手を一瞬だけ見る。そして、すぐにタルタリヤへと視線を戻せば、何やら神妙な面持ちで見つめてくる姿が写った。その深い青の瞳は、困惑に揺れる琥珀色の瞳を覗き込んでくる。
「タルタリヤ?! 何を…。」
「……じっとしてて。」
スッ
(!! ち、近っ…)
ぎゅっ
突然の行動に尚も疑問符を浮かべ続ける空は、戸惑いの言葉を溢した。だが、それには耳も貸さずに、さらにタルタリヤは近付いてきた。ただでさえ距離が近くなっているのに、これ以上近付いたらどうなってしまうのか。ますます驚いた空は反射的に目を閉じてしまう。
サッ
ピトッ
(? 何だか…)
そろ…
暗くなった視界の中でも感じるのは、前髪がそっと引っ張られるような感覚、それにおでこにほのかに当たる温かい感触だった。何をされているのか、気になってしまった空は、おそるおそる目を開けた。するとそこには…
「!!?」
(も、もっと近くなってる!!)
空のおでこに自らのおでこを当てているタルタリヤの姿が映った。反射的に仰反ろうとするが、いつの間にか腰に添えられていたタルタリヤの左手によりそれは遮られてしまった。
「やっぱり…。」
スルッ
「えっ?!」
何とか離れて貰おうと悪戦苦闘する空を尻目に、ひと言呟いたタルタリヤは離れて行った。思わぬ行動に目を見張る空に対して、少し離れたタルタリヤが少し眉を顰めてこちらを見つめていた。何やら不機嫌になっている、ような気がする。
「…空、風邪を引いてるでしょ。」
ギクッ
「えっ!!」
少しジト目で見るタルタリヤがそう告げれば、空は動揺に声を漏らした。何故なら、完全に図星であったからだ。
「そ、そんなことないぞ?!」
アセアセ
「そんなこと言って…。俺の目は誤魔化せないよ??」
何とか誤魔化そうとするが、焦りが出てしまってしどろもどろになってしまう。その態度が既に"風邪を引いています"と言っているようなものだが、ますます熱を増していく頭ではそこまで考える余裕が無かった。そんな空に、タルタリヤはさらに追求する。
「そ、それは…。」
「それに、おでこもめちゃくちゃ熱かったし。よくその状態で来れたね…。」
「!!!」
(もしかして、熱を測るために…?!)
カァァァ…
まさに正論であることに言い返せないでいると、先程、おでこ同士ををくっつけた行動の理由が分かった。どうやら熱を測るためだったらしい。だが、その意図が分かった安心感と何かされるのでは、と勘違いをしていたことに羞恥を感じて、空はさらに熱が上がるのを感じた。正確には、全体的に顔は熱いのだが、今度はさらに頰へと集中しているような気がするのだ。
「! 顔が真っ赤だよ?! 大丈夫!!??」
「だ、大丈夫だ! そんなことな…っ。」
グラッ
(あ、やばい…)
ぽすっ
「っと、ほら。フラフラじゃないか。」
「!!」
タルタリヤの指摘に、ますます誤魔化そうとする空だが、足元がおぼつかなくてふらついてしまった。その一瞬も見逃さずタルタリヤは空の腰に手を添えて支えた。
サッ
「さぁ、暖かい場所に行こう。」
「でも、釣りの約束は……。」
「それはまた今度ね。」
「…約束、守れなくてごめん。」
ニコッ
「大丈夫だよ。それに、約束を破ったうちに入らないし。」
そのまま空の体勢を整えて、立ち上がらせたタルタリヤはそう提案した。だが、尚も食い下がる空に対して、優しい言葉をかけた。そんな彼に申し訳なさを感じて、空が謝ればいつもより爽やかな笑顔で言葉を紡いだ。
「それより今は、身体のことを気にしなきゃ。…ちょっと待ってて。」
サッ
「??」
(何だ??)
タルタリヤは声をかけてから、少し離れた場所に置いていた荷物に素早く駆け寄った。疑問符を浮かべる空だが、そうしてる間に彼は戻ってきた。
サッ
ドサッ
「お待たせ。さあ、これを着て。」
スッ、バサッ
「わっ。」
荷物を足元に置いたタルタリヤは、そこから上着を取り出して空へとかけた。しかし、身に纏うマフラーに似た装飾を見て一瞬動きを止めた後に、背中側へ手を回して上着をかけた。ご丁寧なことに両手にちゃんと袖を通すところまでやってくれた。
「…これでよしっ。それから…、ほら、ちゃんとマフラーも巻いてね?」
するっ
ぐるぐる
「むぐっ。」
満足したように声を漏らしたタルタリヤは、今度はいつも身につけているマフラーに似た装飾をもう少し防寒用にしたものなのか、もこもこした素材のそれを空の首に巻きつけた。しかし、巻かれる際に、口元に少しかかるところまで覆われてしまったので、くぐもった声を出した。
「ぷはっ。…準備万端だな。」
「万が一を考えてね。」
少しズラして息を吐いた空がそう告げれば、タルタリヤは笑いながらそう答えた。鏡がないので正確には分からないが、きっと今の自分は、大きい上着に着られている状態、かつ自分の身に付けていたマフラーに似た装飾も重なって、二重にマフラーが巻かれているような状態になっているのだろう。
(やっぱりでかいな…、ん??)
身長差と体格差によりぶかぶかの上着を着たことで指先しか見えない袖口を見て、空は客観的に見た自分の姿を想像した。そうして何とも言えない気持ちになりながらも、上着のデザインに既視感を覚えてタルタリヤに尋ねた。
「この服って、もしかして…。」
「ああ、これ? 前に瑠璃亭で働いた時の服だよ。何枚か貰ったからね。」
「そうだったのか…。」
予想通りの回答に、納得した空は再度袖を見つめた。以前、月逐い祭の期間中に瑠璃亭の手伝いをした時の服装だったようだ。タルタリヤのいつも身に纏う服装に璃月の意匠を持つその服は、着ていると何だか不思議な気持ちにさせた。
「良かったらあげようか??」
「何でだよ…。そもそもサイズが合ってないだろ……。」
「う〜ん、じゃあ、俺からのお下がり、ってことで!!」
「………それも、いいかもな…。」
「へっ?!」
「??」
キョトン
「!!」
からかい口調のタルタリヤの言葉に、空は珍しく同意した。てっきり抗議の声が返ってくると踏んでいたので、まさかの返しに驚きに目を丸くしてタルタリヤは素っ頓狂な声を上げた。だが、首を傾げながらこちらを見上げてくる空の様子に、今度はタルタリヤが思わずふらついてしまうような感覚を覚えた。
普段よりも素直で棘の少ない柔らかな言葉を紡ぐ唇。
上目遣いで見つめる潤んだ琥珀色の瞳。
ますます熱が上がってきているのか林檎のように赤い頰。
そして、サイズの合わない自分の上着を着ていて、ますます強調された華奢な身体。
(これは、想像以上、だな…)
くしゅっ!
思わず守ってあげたくなってしまう、そんな気持ちを抱いてしまいそうになる空の様子に、無意識のうちに見惚れていたらしい。だが、空が両腕で鼻先を抑えてくしゃみをしたことで我に返った。
「あ、ごめん! そろそろ行こうか。」
パシッ
ズボッ
「……うん。」
(うん、って…! くしゃみといい、返事といい…ズルいよ、空…)
慌てたタルタリヤは空の左手を取って、ズボンのポケットに共に手を差し込んだ。その時の返事にも胸の高鳴りを感じると同時に、いつもより素直な空の破壊力に眩暈を覚えた。何故なら…
(守ってあげたくなるじゃないか…)
先程抱いていた庇護欲と同時に愛おしさをますます強く感じて取ってしまったからだ。兄としての性なのか、甘えられることにとことん弱いタルタリヤは、嬉しくてついニヤけてしまいそうになる。だが、空が弱っているのに、そんな不謹慎なことをしているのは駄目だ、と自戒を込めたタルタリヤは、それを悟られないように、空の手を掴む手とは反対の左手で、口元を隠すように覆った。
(やっぱり、大きいな…)
タルタリヤが葛藤している一方で、ますます高くなっているであろう熱にボーッとした様子の空は、掴まれた手の温もりに安堵しながら、それとは反対の右手の袖口で服の大きさを再確認していた。
空の身に着けている独特な形の手袋により若干肘部分が盛り上がっているが、それでも大きい。先程は、埋められない身長差と体格差による大きな服に複雑な気持ちを抱いていた。何せ袖口だけでなく肩部分まで余ってしまっている。それに、下も空の太ももの半ばまで覆われており半ばワンピースのようになってしまっている(ワンピースを着たことがあるわけではないが、何となくそう思ったのだ)。
だが…
スッ
(大きくて、あったかい…)
指先しか出ていない右手を口元に持ってきた空は、その温かさに、そして巻かれたマフラーの温かさに、無意識にほわりとはにかんだ。
(だからその表情、反則だって…)
空が温かさに喜びを噛み締めている一方で、普段よりふわふわとした様子と今しがた行われた空の行動に、様子を見ようと歩きながら振り返ったタルタリヤが、ますます身悶えていたことを空は知らないだろう。
後日、体調がすっかり良くなった空と共に改めて氷上釣りを楽しむタルタリヤの姿が見られたという。
-END-
あとがき
念願の彼シャツネタが書けて大満足です…!!
普段のタルタリヤの服装だと、袖まくっている感じだから、着ても彼シャツに…なるのかな?と思っていたのですが、スイパラコラボのSDキャライラストを見てこれだ!!と閃きました_φ(・_・
スイパラコラボのSDキャライラストに大感謝です!!!←
釣りシステムが実装されてから、タルタリヤは真っ先に喜びそうだなぁ、というのと、ただでさえドラゴンスパインでは風邪引きそうな格好をしている空くんが、釣りしたり池に落ちたりしたらマジで風邪引きそうだな…、ということからもこのお話を思いつきました。
多分、タルタリヤはスネージナヤ出身だから寒さに強いと思います。また、キャラストーリーを読んで、昔から家族を看病していたのかもしれない…と妄想が浮かびました。だから、体調が悪そうなのもひと目見たら分かりそうだな…となりました。あと、お兄ちゃんだから、弟妹の看病におでこで測っていそうだな、とも思ったので、取り入れました。
余談ですが、ドラゴンスパインの実装当初は、空くんをはじめ寒そうな格好をしているキャラにはコートみたいなアイテムが実装されるかと思っていました。あまりにも寒そうなので…!!
ここまで読んでくださりありがとうございました! 次ページにおまけも用意したので、読んで頂けると嬉しいです!→
おまけ①
塵歌壺の部屋で休む空くん
結局上着を貰って使っている
塵歌壺の寝室にて。
「ちゃんと暖まってる?」
「熱はどう?」
「何か欲しいものがあれば言いなよ?」
「…随分、手慣れているな。」
ベッドに腰掛ける空に甲斐甲斐しく世話をするタルタリヤは、テキパキとした動作で身の回りを動き回っている(その足元は、マルお手製のスリッパを履いている)。
「親父が頭痛持ちだし弟や妹が風邪を引いた時もこうしたからね。」
「そうだったのか…。」
そんなタルタリヤに、疑問を漏らせば彼の家族についてチラリと触れられた。以前会った彼の弟のテウセルを思い出しながら、その風景がありありと浮かぶようだった。
「熱はまだありそう?」
スッ…
コツン
「!! だ、大丈夫だ、けど…。」
スッ
「…うん、だいぶ良いみたいだね。」
そんな空の元へ素早く駆け寄ったタルタリヤは、流れるような動きで、自分と空の前髪を持ち上げておでこ同士を合わせて熱を測った。急に近くなった距離に驚きながら空が答えれば、納得したように離れた。
「それ、癖なのか?」
「え?? 」
「何か、おでこで熱を測っているから…。」
「あぁ、そのことか…。弟や妹にやる癖で、つい。」
「そうか…。」
(タルタリヤらしいな…)
空が疑問を投げかければ、弟妹が多い彼らしい答えが返ってきた。それに微笑ましい気持ちになっていれば、先程の驚いた気持ちが塗り替えられていくようで知らず空は微笑んだ。
「そういえば、上着…、結局貰ってよかったのか?」
そして、いつも嵌めている手甲を外して、代わりに袖を通した上着が視界に入った(ちなみにいつも身につけているマフラーに似た装飾をハンガーにかけて、上着と共にタルタリヤからのマフラーも首元に巻いている)ので、尋ねた。
「うん。元々あげるつもりだったし。それに…。」
「それに??」
クスッ
「何だか、着られてる感じの空がレアだからね。いつまでも見ていたくなるよ。」
「なっ?! 何恥ずかしいこと言ってるんだ!!」
「あはは。本当のことなのに〜。」
「全く…。」
笑いながらからかい口調で言うタルタリヤを窘めながら、再度袖口を見つめた。確かに、これでは着られているというのも間違いではないだろう。もっと正確に言えば、タルタリヤに後ろから抱きしめられているような…
「!!」
ボフッ
(お、俺は何を考えてるんだ…?!)
そこまで想像した空は、何だかいけないことを考えてしまったみたいで羞恥で瞬時に顔を赤く染めた。文字通り顔から火が出そうな勢いで、だ。
「空?! 大丈夫??!」
「大丈夫だ…。」
「それならいいんだけど…。」
驚いたタルタリヤは尋ねるが、何でもない風を装った空に、半ば納得した形でそれ以上は聞かないでいてくれた。
(何だかますます顔が熱くなってきたような…)
ピトッ
まだ訝しむタルタリヤの視線から逃れるように、または熱くなった頰を隠すように、袖口から指先しか出ていない両手を両頬に当てた。
「!!」
「? どうしたんだ??」
バッ
「いや、何でもないよ…。」
「そうか…?」
その瞬間、タルタリヤは目を見開いた。それに気付いた空は尋ねるが、手で顔を押さえたタルタリヤが、答えながらも向こうを向いてしまった。まるで、先程と逆のやりとりをしている2人である。
(その仕草は反則だよ、空…!!)
疑問符を浮かべる空を尻目に、無意識にやったであろう仕草に胸を高鳴らせて、空と同じくらい顔を赤く染めたタルタリヤが悶絶していた。
-END-
おまけ②
後日、ドラゴンスパインにて。
パシャッ
「よし! もう1匹釣れた!!」
「わぁ、また釣れたな!!」
体調が全快した空は、タルタリヤと共に魚を釣っていた。
「何かコツがあるのか??」
「コツかぁ…。強いていうなら、"見極め"かな。」
「見極めか…。俺にはまだ難しそうだな。」
今しがた5匹目を釣り上げたタルタリヤにそう尋ねれば、なかなかに玄人な回答が返ってきたので、若干落ち込んだ。やはり一朝一夕でできるものではない、ということだろうか。
「君ならすぐ出来るさ。それに…。」
「それに?」
「俺、狙った獲物は逃さない主義なんだ。」
ニヤッ
「!!」
いつもよりも意味ありげに笑うタルタリヤは、意味深な言葉を放ちながら、流し目で空を眺めた。
「手に入れにくい獲物ほど攻略し甲斐があるからね。」
「それって、どういう…。」
パッ
「さぁ? 何だろうね??」
「な、はぐらかすのか?!」
「あははは! ほら、大声出すと魚が逃げるよ?」
「誰のせい…って、ああ!! 逃げた!!」
疑問符を浮かべる空が尋ねようとするが、いつもの笑顔に戻ったタルタリヤはのらりくらりとかわした。それに抗議すれば、大声に驚いたように魚が逃げてしまった。
「ほら、ちゃんと見てないと…、
俺が捕まえちゃうよ??」
それは果たして魚のことだろうか?
それとも空のことだろうか?
真意はタルタリヤだけが知ることでありそれを見抜く術を空は持ち合わせていなかった。
-END-