【タル空】星々に願いを
塵歌壺に澄凝の星光を使って命ノ星座を描く空くんと、それに疑問を投げかけるタルタリヤのお話です。
・命ノ星座に関して自己解釈あり
参考資料
・調度品 澄凝の星光
塵歌壺の邸宅にて。
「よし…、こんな感じかな??」
床に調度品である澄凝の星光、それを何かの法則に沿って並べていた空は、満足そうな様子でひと息ついた。
最近、塵歌壺の調度品集めや自分なりに調度品の位置決めを行うことに没頭している。
その中で特に目をつけたのが、この澄凝の星光である。
2度目の金リンゴ群島での冒険を終えた記念品として貰った調度品の設計図の中にあったもののひとつである澄凝の星光を何かしらで使ってみたい。
そう思って考えついたのが、命ノ星座を、邸宅内に形作ることであった。
試しに、空自身、このテイワット大陸にて顕現できている(どういう理屈なのかは、未だに空自身にも分からない)星座である旅人座を模ってみたら、思いの外上手くいった。そして、今は、試しにもうひとつ並べてみた命ノ星座の形に満足しているのである。
(角度、位置、数…、問題ないな)
「よしっ。それじゃ、次を…。」
そうして、顔を上げてみるまで気付かなかった。
しゃがみ込んで、夢中になって黙々と作業する空を見つめている人物に…。
「やあ、相棒。随分楽しそうだね??」
声を掛けてきたのは、こちらに手を振るタルタリヤであった。
スクッ
「タルタリヤっ!? えっ、いつからそこに?!」
スッ
「ついさっきだよ? 声も掛けたけど、集中して気付かなかったよ??」
「そうだったのか…。」
驚きに声を上げながら立ち上がる空に、つられるようにタルタリヤも立ち上がった。彼が言ったことに、自分がどれだけ作業に夢中だっだかを知った。どうやら相当やり込んでいたらしい。
「鼻歌も歌ってたよ??」
「そうなのか?!」
バッ
「うん。モンド調の軽やかな感じの歌。ずっと聞いていたかったな〜。」
(全然気付かなかった…)
スッ…
タルタリヤの言葉に、空は思わず鼻先と口元を両手で覆った。作業しているうちに楽しくなってきて無意識のうちにやっていたらしい。自分の集中度合に驚愕しながら両手を離した。
「ところで、そんなに楽しそうに何をやっていたの??」
ギクッ
「た、ただの調度品の位置決めだが??」
「ふぅん? わざわざランプを床に?? しかも、何だか、規則性があるみたいだけど…。」
(まさか、気付いているのか…?)
タルタリヤの問いに、動揺しながら何ともないように答える。だが、タルタリヤは納得していないのか、ますます疑問を投げかけてくる。それに、動揺しながらも、空は思わず理由を述べそうにならないように注意した。
何故なら、タルタリヤにカマをかけられている可能性も捨てきれないからだ。何せそのことに関しては、タルタリヤはその駆け引きのプロフェッショナルと言ってもいいほどであるし、実際、幾度も罠に嵌まったと言っても過言ではないのだ。
ピーン!
(! そうだ!!)
「家の中でも暗くなったりするから、上から見下ろした時に、星空みたいにしたいと思ったんだ。」
「! へぇ…!! 面白い発想だね…!!」
「見ていたら思い付いたんだよ。」
(何とかなったか…?)
空が告げることに、驚きに目を見開いてから感心したようにタルタリヤは声を上げた。その納得してくれた様子に、これ以上追求されない気配を悟った空は、内心安堵した。
「でも、そんなに使ったら、数が足りないんじゃない??」
「あぁ、ちょうど今作った分で、在庫切れなんだ。だから作ってくる。」
クルッ
「うん。行ってらっしゃい。」
ピタッ
クルッ
「固定されてるけど、くれぐれも触るなよ?? 引っかかったりしたら危ないからな!!」
調度品を作るために向かおうとする空を見送るタルタリヤであるが、何かを思い出したように止まって振り向いた空は、そう告げた。
「大丈夫だよ〜。空は気遣い屋さんだな〜。」
「なっ、違う!! 位置がズレると困るからだ!! じゃあな!!」
クルッ
スタスタスタ
ガチャッ
「行ってらっしゃ〜い。」
そうして、タルタリヤに見送られながら、空は扉を開いた。
バタン
(何とかバレずに済んだ…!!)
フゥ…
扉を閉めた空は安堵のため息を吐いた。何せタルタリヤにバレては困るからだ。
空が密かに作っていたもの…
それは、タルタリヤの命ノ星座たる"空鯨座"であるからだ。
どういう訳だか、仲間達の命ノ星座を確認することができる空は、仲間のことを思い浮かべると同時にイメージできる命ノ星座を確認することができるのだ。
澄凝の星光で命ノ星座を模るアイディアもそこから浮かび上がったのだ。しかし、まだ、試行錯誤の連続で、自分以外の命ノ星座で、仲間達の命ノ星座を作るのは、今しがた作っていたタルタリヤの"空鯨座"が初めてである。
だが…
(バレたら、いくらなんでも恥ずかしすぎる…!!)
そう。
まさに、それが空が隠したがる理由である。
無意識とはいえタルタリヤの命ノ星座を思い浮かべながら澄凝の星光を並べていた、なんて知られようものなら、笑みをそれはもういつも以上に深くしたタルタリヤに、からかわれるに違いなかったからだ。
(まぁ、流石に分からないだろ…)
問いかけられた時は焦ったものだが、何とか誤魔化しきれた、と空は安堵している。それに、幸いにも、説明したことだって、嘘ではないからだ。
(次は誰のを作ってみようかな…?)
そう思いながら、澄凝の星光を作る為にマルの元へ行く空であった。
クスッ
「随分と可愛いことをするね、空。」
一方で、タルタリヤは微笑んでいた。
(俺が気付かないと思った??)
「まぁ、必死なようだから、あまり言わないでおこうかな。」
どこか意味深なことを言ってますます笑みを深くする。
それは、空が話したことに対して、愛らしさを感じたことに対しての笑みか。
それとも、空が行っていることに対して、その目的を見抜いた上での笑みか。
その心情は彼のみぞ知るのである。
-END-