【タル空】その場所に君が駆け込んだ理由
海灯祭期間中に、タルタリヤを見つけた空くんがやり取りをするお話です。
前回のお話の続き的なお話です。
参考資料
・タルタリヤ チュートリアル動画
動画後半の走っていく空くんを見守るシーン
瑠璃亭を含めた連なる屋根にて。
スタッ
ザザッ!
「おっ、相棒! よく来てくれたね!!」
ヒラヒラ
ゼェ、ハァ
「おまっ……、何でこんな所にいるんだよ!?」
壁をよじ登った後に、素早い動きで屋根に身を翻してから息を整える空に対して、タルタリヤはこちらに向かって手を振りながら、のんびりとした声を出した。
「ん〜、気分で??」
「き、気分、って…。」
「まぁ、立っていても危ないから、座りなよ。」
ポンポン
「………少し休憩するだけだからな。」
「うん、いいよ。」
答えになっていないような答えに拍子抜けした空を気にした風もないタルタリヤは、自分の隣辺りの屋根瓦を叩いて、座るように促した。実際、息切れをするくらいには疲労を感じているので、空はその言葉に少しばかり甘えることにした。
スッ
フゥ…
(それにしても…)
「何でこんな危ない場所にいるんだよ?」
タルタリヤから、半分スペースを開けたところに腰を下ろした空は、ひと息つきながら尋ねた。
「そうかな? 俺にとっては何でもない場所だけど??
「はぐらかすなよ…。」
またしても、答えになっていないような答えを聞いて、空は呆れたように言葉を紡いだ。相変わらずの飄々としたタルタリヤの様子に、休憩しているはずなのに疲れが増すような錯覚さえしてきた。
「空はどうしたの??」
「パイモンとはぐれて…。」
今度はタルタリヤが尋ねてきたので、空は答えた。海灯祭の期間中、あちこちにある出店に目移りしていたパイモンにはぐれないように言葉をかけていたのだが、それも虚しくはぐれてしまったので、探していたのである。
クスッ
「やっぱりね…。」
「え? 何がやっぱりなんだ??」
「ううん、何でもないよ。」
途中、タルタリヤが意味深な言葉を紡いだので、問いかけるもののはぐらかされてしまった。何だか、今日は、一段とタルタリヤが答えない気がしてきて空は言葉を荒げる。
「というか、こんなところに居たら危ないだろ!?」
「…………え??」
タルタリヤを見つけた時に慌てた気持ちも相まって、空の声は大きなものになってしまう。その様子に拍子抜けしたのか、タルタリヤは気の抜けた返事をした。
「パイモンを探しているうちに、こんな高い場所にお前の姿が見えたから、心配で慌ててやってきたんだぞ!!」
空の言うように、危なっかしい場所にタルタリヤがいるので心配になって、こうして見に来たのだ。普段の彼の身のこなしを考えたら問題ないのであるが、空の位置から見ると、今にも足を崩してしまいそうに見えて危なっかしくてヒヤヒヤしたものだ。
「だから、あんまり高い位置に行くのは…。」
「ぷっ、あはははははは!! ははは!!」
「なっ?! 何笑ってるんだ!! こっちは心配してるんだぞ!?」
突然、盛大に笑い出したタルタリヤに、空は抗議の声を上げる。身を案じているのに、盛大に笑うなんて…、と思ったからだ。
「はは、は…。ごめんごめん。まさか、説教されるなんて思わなくてさ………。」
「……なんか、馬鹿にしていないか…??」
ジロッ…
「してないしてない。空は面白いな〜、って思っただけだよ。」
「やっぱり馬鹿にしてるだろ!?」
笑いすぎて出た涙を拭うタルタリヤの態度に納得がいかない空は睨みながら抗議する。だが、相も変わらずどこ吹く風、と言った態度に、ますます声を出してしまう。
「してないよ〜。心配してくれてありがとう。」
「…執行官が、足を滑らせて大怪我、なんて面目丸潰れだろ。」
プイッ
「これは1本取られたな…。」
少し皮肉混じりに言う空に、タルタリヤは口にした言葉とは裏腹に、あまり気にしていないように言葉を紡いだ。
「でも大丈夫。ここは俺のお気に入りの場所だから、そんなヘマはしないよ。」
「ここが…。なんでお気に入りなんだ…??」
「それはね………。」
ジッ…
(な、なんだ…?)
理由を問えば、何故だか、タルタリヤは見つめてくる。どことなく真剣みを帯びた深い青の瞳と困惑に揺れる琥珀の瞳が、しばし見つめ合った後…。
フッ
「ここから見える景色が好きだから、かな??」
どこか含み笑いをしたタルタリヤが、言葉を紡いだ。
「そうなのか…。確かに、眺めはいいけど…。」
疑問符をつけながら答えたタルタリヤに、半分納得がいかないながらも、眺めがいいことに納得した空は、半分は観察目的で、もう半分は景色を堪能する目的で一望するのだった。
(それに、この場所をますます気に入ったよ…)
空が眺めている一方で、タルタリヤはますますこの場所が気に入ったことに満足していた。
最初は、空を観察するのに適した場所だから。
次に、先程、空がタルタリヤを見つけてくれたから。
そして…
空と一緒に眺める景色が、いつも見ている時よりも煌めいて見えるから。
(もう少し眺めていようかな…)
そんなことを思いながら、見つめているうちに、後ろを振り返った空と目が合って、タルタリヤが微笑む一方で、驚きに琥珀色の瞳をまん丸に開いた後に、恥ずかしそうに目を逸らした空に、タルタリヤはますます笑みを深めた。
その後、その場所からパイモンを見つけた空が、勢いに任せて風の翼を展開して追いかけたので、タルタリヤは勿論のこと、パイモンも盛大に驚いたという。
-END-