【タル空】温風に包まれる
空くんの髪を乾かすタルタリヤのお話です。
テイワット大陸だと、髪を乾かすのにどんな方法を使うのか考えていたら思いついたお話です。
※弊ワット設定全開で、空くんはドライヤー代わりにあるアイテムで代用している設定です。
・さらに、空くんの長い金髪は、女子達が羨ましがって、たまにアレンジした三つ編みをされるほどいじられている設定です。
・アイテムの使用用途を完全自己解釈気味です。
参考資料
・ドライヤーがない時にどうやって髪を乾かしていたのか
http://materica-masuyama.info/archives/868
塵歌壺の邸宅にて。
「よし…。大体乾いたかな?」
スッ
「わざわざ悪いな…。」
「気にしないでよ。俺がやりたいだけだからさ。」
「そうか。」
そんなやり取りをするのは、メッシュの入った柔らかな茶髪の青年、タルタリヤと旅人の少年、空である。但し、今は、いつもは三つ編みに結んでいる長い金髪を下ろしており、改めてその髪の長さを存分に披露していた。
「むしろ俺がやってみたかったから、感謝したいくらいだよ!!」
ニコニコ
「そうかよ…。」
そうしていつも以上ににこやかに笑うタルタリヤに、空は呆れたように言葉を紡ぎながらも、内心満更でもない様子であった。
「しかし、驚いたよ…。」
「何がだ??」
「まさか、風捕りの瓶と烈火のオイルを応用した上で、風元素の微調整で髪を乾かしていたなんて…。」
「そうなのか?」
「君の発想力には、いつも驚かされるよ…。」
驚きの声を上げるタルタリヤに対して、空は不思議そうな表情を浮かべながら"それが何か?"と言わんばかりに言葉を紡いだ。
タルタリヤが驚くと同時に感心していたこと…。
それは、空が髪を乾かすのに利用していた方法である。
大前提として、テイワット大陸においては、髪を洗った後は、所謂自然乾燥が主流である。たまに、髪のケアとして、オイルを塗り込む人がいるくらいで、乾かすことに関してはそもそも行なっている人が少数派なくらいだ。
しかし、別の世界を旅しながら、"ドライヤー"を使用した経験がある空は別である。
一度でも楽なことを味わってしまうと、後には戻れない、とはよく言うが、空にとっては、それが"長い髪をドライヤーで乾かすこと"なのである。髪が長い分、自然乾燥をするには時間がかかり過ぎるし何より髪に水滴が残っていると、どうしても気になるのだ。
そこで、空が編み出したのが、風捕りの瓶と烈火のオイル、このふたつのアイテムを利用して、温風を生み出すことであった。
風捕りの瓶に、ほんの少し烈火のオイルを垂らして蓋を開ければ、温風が起こるのである。最初は、半信半疑であったが、無事に出来たことを喜んだものだ(まさか、西風騎士団も風捕りの瓶をこのように使うとは、想定外だろう)。
後は、風元素を纏った時に、微調整で髪を乾かせば完璧だ。風元素をコントロールする練習にもなるしまさに一石二鳥である。
そして、今まさに、空は髪を乾かそうとしていたタイミングであり、それにタルタリヤが鉢合わせしたのだ。すでに乾かし終わった空が、タオルで残った水滴を拭こうとしている時に、俺がやるよ、と申し出たのだ。
「大体、俺の髪なんて拭いてもそんなに面白くはないだろ?」
「そんなことないと思うけど…。」
(………やっぱり、無自覚なんだね…)
やり取りをしながら、空が、自身の持つ長い金髪の美しさや手入れに無頓着、というより興味がないことを知ったタルタリヤは内心ため息をついた。
三つ編みを解いた今の状態であれば、風が吹けばさらさらと流れるに違いないと確信するほどに、指通りがよく柔らかな色合いの金髪は、陽光を浴びれば、きらきらとした光の粒を生み出すほどに輝いている。
まさに、女子が羨むに違いないほど素晴らしい価値があるものだ、とタルタリヤですら感じるほどだ。
しかし、これほどまでに長く美しい金髪の持ち主である空は、そのことに関して全くの無頓着らしい。
(まぁ、それが空のいいところでもあるんだけどね…)
そう思いながら、タルタリヤがタオルを仕舞おうとすると…。
「何で、皆そんなにやりたがるんだよ…。」
ピク…
「皆………?」
そんな言葉が聞こえてきたので、タルタリヤは動きを止めて続きを待った。
「あぁ。俺の友達…、特に女子とかは、やたら俺の髪をアレンジしたがるんだよな…。」
「………。」
「あ、別に自慢でも何でもないからな! そもそも男の髪をいじるなんて…。」
説明をしていくうちに、黙っているタルタリヤの様子を見て、はたから見ると自分は女子に言い寄られている、とも取れるような発言をしていたことに、空は慌てて弁解しようとした。
何故なら、こういう話をすると、高確率で羨ましがれるのだ。しかし、空にとっては、単に仲間達、特に女子達が長い髪に夢中なだけである、という認識なのだ。
しかし、そんな空の予想に反して…
「…………しい。」
「え?」
「羨ましい限りだよ…!
空の髪をアレンジするだなんて!!」
タルタリヤはそう告げた。
「いや、そっちかよ!!」
そんなタルタリヤからの予想の斜め上過ぎる発言に、空は全力でツッコみを入れた。何故なら、完全に女子達の方を羨ましがっているからだ。
「それなら、俺もやってみようかな…。」
「なんでそうなる?!」
「ちなみに、その子達は、空の髪を下ろした状態でアレンジしたの…?
「? いや?? 三つ編みで出来る髪型のアレンジだから、そのままだけど……。」
パァッ
「そっか!!」
ニコニコニコニコ
(変なやつだな…)
神妙な面持ちで変わったことを聞いた後、満足したように笑みを浮かべるタルタリヤに、何のことだかさっぱり分からない空は、疑問符を浮かべるばかりであった。
「っと、髪にオイル塗るのを忘れていたよ。今から塗るね。」
スッ
「え、そこまでして貰うわけには…。」
「ちょっと痛んでいたから、ちゃんと髪もケアしないと駄目だよ?」
「う…、分かったよ。」
いつにも増して、圧を感じたので素直に従うことにする空であった。
スッ
スッ
(…………気持ちいいな…)
オイル塗るタルタリヤの手つきが気持ち良くて次第に眠る空であった。
(眠った、のかな…? じゃあ、今のうちに…)
スッ
空が眠ったことを確認したタルタリヤは、その金髪に、赤いベルベットの色合いをした自分のマフラーに似た装飾にそっくりのリボンを三つ編みにしながら巻いて、最後に結ぶのだった。
パチッ
(あれ、いつの間にか寝ていたんだ??)
「あ、起きた? 髪はいつも通りにしたよ??」
「あ、あぁ。ありがとう…。」
「どういたしまして。」
ニコニコ
(何だかいつも以上にご機嫌だな…)
目覚めた空に声をかけたタルタリヤは、満足そうに笑っている。その様子に、疑問符を浮かべながらも空はお礼を言うのだった。
(やっぱりよく似合っているな…)
三つ編みに編み込まれたリボンが揺れるのを見て、タルタリヤはますます微笑んだ。
その後、リボンに気付いた空が、タルタリヤに問いかけるのだが、笑いながらはぐらかすので、さらに詰め寄る姿が見られたという。
-END-