神子様、こんなことまで出来るのですか?

八重神子実装&雷電将軍復刻記念(書いた当時)、そして素晴らしきアニメPVを見て思いついたネタです。

アニメPVでは、八重神子はやたらカメラ目線だけど、他のキャラは日常を切り取ったように見えたので、もしかして、八重神子が作ったのでは…?と妄想が膨らみましたw←

・割と長め…?
・アニメPV、もとい映像は八重神子が写真機の応用で作った設定です
・空くん達が見ているのは、鳥居の道を歩く八重神子から、振り返る八重神子のシーンまで。つまり、最初のmiHoYo様の字幕と最後のVer.2.5のキービジュアル以外の部分です。
・撮影過程捏造
・八重神子が作ることになった経緯、PVのシーンなどに自己解釈あり
・PVのシーンの描写不足感が否めないです…←
・ちょっとメタ気味…??←
・八重神子と雷電将軍の口調迷子気味
・八重神子の能力捏造気味

※若干天下人の章第一幕ネタあり
(出来ればクリア後に読むことを推奨します。クリア前に読んでも責任は取りませんので、ご了承ください)

参考資料
・原神 ストーリーPV
・天下人の章 第一幕
・八重神子の実戦動画のモーション

※初出 2022年2月6日 pixiv


「それで、見せたいものって何だ? 八重神子。」

「まぁ。そう急くでない、童よ。」

鳴神大社にて。

おみくじを引いていた空は、後ろから呼ぶ声を聞いて振り返った。そこには、薄桜色の髪にそれと同化するように大きな狐耳を持つ巫女服を纏った八重神子が立っていた。こっちに来てくれ、と手招きされるままに八重神子専用の社の中へと入った。

「汝にこれを見てもらいたくてのう。」
スッ

「これは、写真機?」

八重神子が取り出したのは、写真機だった。空もよく使うので見慣れた物だ。

「うむ。前に影と花見坂に行った時に、写真を撮ったじゃろう? それで影の話を聞いているうちに、妾も興味を持ってな。」

「そうだったのか…。」

確かにそのようなことがあった。紆余曲折を経て、影と共に花見坂を見て回ることになった時に、写真のことについてパイモンと共に影に教えたのだ。あの時の不思議そうに写真を見つめる影の姿は印象に残っている。

「しかし、ただの写真機ではないぞ。何せこれは、映像が見れるのじゃ。」

「映像?」

八重神子の言葉に、空は驚きの言葉を上げた。写真機はそんなこともできるのだろうか、と考えていると、顔に出ていたのか、八重神子は微笑んで説明をした。

「汝が前にたたら砂の件に携わった時にいた外国の者が居たじゃろう? 」

「もしかして、グザヴィエのこと?」

「そうじゃその者じゃ。その者から少し技術を学んで、妾なりに作ってみたのじゃ。」

映像、たたら砂、それに八重神子の言葉から、空はグザヴィエの名前を出した。その空の言葉に、ご名答!と言わんばかりに八重神子は説明した。

「へぇ! 凄いな。」

「ふふ。褒めるのは見てからじゃぞ?」
スッ

「どれどれ…。」

あまりの器用さに、留雲借風真君を連想しながらも、八重神子に急かされるままに写真機を覗き込んだ。

空が覗き込むと、流れてきたのは…。

映像は、鳴神大社に続く鳥居の道を歩く八重神子から始まる。

楓の樹々が連なる場所で手合わせする空と万葉。
神里屋敷に佇む綾華と綾人。
水面に映る空とパイモンを見つめる心海。

鳴神大社の御守りが揺れてから場面は一転。

稲妻城で重々しく佇む雷電将軍。
不意に開いた扉と、それを見つめる雷電将軍の瞳には、挑もうとする空の姿が映し出される。

そして、場所は鳴神大社へ移動して風が吹くと同時にこちらへ振り返る八重神子が微笑みかけて終わる。

「…どうだったかな? 影。」

場所は移動して、一心浄土にて。

ここら、雷電将軍、改め、影が"永遠"を追求する為に作り出した空間である。以前、八重神子から借りた通行証を再度借りて稲妻城へ来た空は、影の許可があれば、この空間に入ることが出来る。

「これは…。前に撮ってもらった写真とはまた別の不思議な気持ちになりますね…。」

「良かった。八重神子も喜ぶと思うよ。」

感想以上にそれを物語る影の表情を見て、空も笑顔を浮かべた。

「わざわざご足労頂いてすいません。神子も自分で作ったのですから、自分で届ければいいのですが…。」

「大丈夫だ。」

八重神子の悪戯っぽい笑顔が頭に浮かんでいるのか、影はやや困ったように頭を横に振った。その際に、長い三つ編みにまとめた紫紺に薄紫色のメッシュが入った髪が揺れた。その様子に、空は気にしていないことを伝えた。

しかし、影の言うことも最もだ。何せ映像を見終わって、いいな! これ!!と空が感想を口にした瞬間、そうか、汝が言うのであれば安心じゃ、と言ってそのまま写真を影の元へ届けてくれ、と頼まれたのだ。

困惑する空を他所に頼んだぞ、と通行証を手渡された。だが、空も映像のことで気になることがあった。何せカメラ目線が多い八重神子以外は、空も含めて、まるで個人の日常を切り取ったかのように自然に作り込まれている部分が多かったのだ。

もしかして、これは所謂、盗撮というものなのでは…、と懸念した空は、ところでいつ撮ったんだ?と尋ねれば、妾にかかればこのくらい造作もないぞ?と指で作った狐をコンコン、と言わんばかりに2回振りながら、八重神子は答えになっているようでなっていない答えを悪びれた様子も無く言うのだった。その様子に、空はそれ以上何も聞けなかった。

(まぁ、言わぬが花、とも言うし…)

「ところで、この映像はどうするのですか??」

「そういえば、八重神子が、映っている人達とか、もしかしたら稲妻の人達に向けて見せたい、って言っていたような…。」

「え?」

(って伝言を頼まれたから、実際はどうかは分からないけど…)

そうじゃ、伝言もいいかの?と言った八重神子の言葉をそのまま言ったのだが、影は困惑気味な声を発して、固まってしまった。それは、以前、花見坂に連れ出した時の表情そっくりだ。

「…この映像は、神子と旅人さん、それに私しか見ていないのですよね?」

「え? あぁ、そうだけど…。」

「そうですか…。」

暫く固まっていた影は、空に尋ねた。そして、その答えを聞いて暫く考え込んだ末に…。

「…これは、私が預かります。神子にもそう伝えてくれますか??」

「え、あ、あぁ、分かった。」

心なしか険しい表情の影の迫力に押されて、空は承諾した。一瞬、脳裏に八重神子が浮かんだが、影が言うことであれば受け入れてくれるだろう。

コトッ
「改めて、ありがとうございます。」

「気にしないでくれ。じゃあな。」
スタスタ
(八重神子に伝えよう)

「ええ。また来てくださいね。」
ヒラヒラ

写真機をそばに置きながら、影は改めて空にお礼を言った。それに返答しながら、八重神子への報告を考えながら空は歩き出した。そして、影は手を振りながら、空を見送った。

(前に来た時に妙なことをするとは思いましたが、まさか、これを作っていたなんて…!!)

完全に空の姿が見えなくなったところで、影は頭を抱えた。

実は、映像の後半から既視感を感じていたのだ。しかし、最後に八重神子が振り返りながら笑ったところでその正体が分かった。それは、以前、稲妻城に訪れた八重神子が空に変身して現れたことがあった時の映像だと気付いたからだ。"将軍"を通して見ても、かなり驚いたことが鮮明に蘇ってきた。

旅人さんが、何故わざわざ?
しかも何か神妙な面持ち、これは何があったのでは??

そう身構えていると、暫くして変身を解いた八重神子が久々に変化してみたが、なかなかよいものじゃろう?とカラカラと笑っていたのが、まさかこうなるとは思いもしなかった。

しかも…

(あれが、他の人にも見られるなんて…)

思い出すとやるせない気持ちが顔を出してくる。映像を見ると、まだ眞が居た時の映像もほんの一瞬だけ映っていた。恐らくこれも八重神子の能力によって映像に組み込まれたものだろう。

空は、眞の姿を知らない為、あまり深くは聞いて来なかった。しかし、他の人が見れば、影、もとい雷電将軍と似たあの女性は誰だ?と興味を持たれる可能性がある。それは、避けたい事態だ。仮にそうなってしまえば、以前のように"将軍"の機能を一時的に停止して、所謂"答え兼ねます"状態にしてしまいかねない。

(ですが…)
チラッ

頭を抱えていた手を離して、そばに置かれた写真機を手に取って見つめる。作られた経緯はともかく出来は素晴らしいものだ。それは、つい最近、写真の存在を知った影でもそう思うほどに…。

「…もう一回見たくなってきましたね。」

まだやるせない気持ちがあるが、それ以上に好奇心が勝った。その誘惑に勝てずに、影は再度見ようと座り込んだ。その前に、と近くにあった団子牛乳をひと口飲むのであった。

「さて、そろそろ影もあれを見ている頃合いかの?」

神櫻の前にて佇む八重神子は、ぽつりと呟いた。そよ風に攫われてひらり、ひらりと舞う桜の花びらと戯れながら、今ごろ映像を見ているであろう影の姿を思い浮かべて微笑んだ。

(ああでも言わないと、あやつはあれを受け取らぬからのう…)

空に頼んだ伝言は、影が写真機を受け取って貰う為の詭弁だ。最近は、以前、空と出かけた際に気に入った団子牛乳を買う為に、時折花見坂に行くとはいえまだまだ最近の稲妻のことで知らないことは多い筈だ。

"永遠"とは"停止"ではない。

空の活躍により気付かされたこと。それによって、また新たに"永遠"への道を模索している影には今の稲妻を知る必要がある。そう考えた八重神子は、今回のことを思いついたのだ。

(まあ、途中楽しくなってほんの少し"悪戯"も入れたが、それもまた一興じゃ)
クスクス

記憶の中の映像を投影させる、なかなかに骨が折れることではあったが、影の反応を想像すれば苦はない。むしろ嬉々としてやっだことを思い出して八重神子は微笑んだ。

ザァッ

「…さて、童の報告を聞くことするかの。」

一際強い風が、神櫻の花びらと八重神子の髪をさらうように吹いた。それが、空が鳴神大社に戻って来た合図のように思ったので、振り返って歩いて行った。

-END-

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