【タル空】もこもこを纏う
ドラゴンスパインに樹氷を見に来たタルタリヤと空くんのお話です。
・ドラゴンスパインの気候など完全自己解釈
・樹氷の知識あやふやです(おい)
・タルタリヤの家庭事情を大幅に捏造気味
参考資料
・旅の写真に閃きを 緑葉編
タルタリヤと宵宮の会話シーン
ドラゴンスパインにて。
「け、結構冷え込んでいるな…。」
ブルブル
「樹氷が出来るくらい、ってなると相当冷え込むからね〜。」
いつも以上に冷え込むドラゴンスパインに身体を震わせる空とそんな寒さをものともしないタルタリヤ、2人がやり取りをしていた。
今日は、1年を通しても極寒の地であるドラゴンスパインでも、見ることが珍しいとされる樹氷を見に来たのだ。
しかし、いくつかの条件下が整った上で、尚且つ、いつもよりも冷え込んだ気温によって見ることができる樹氷、それをいつもの探索している時と同じような感覚で来てしまったことに、空は後悔しつつあった。
(もっと着込んでくれば良かったな…)
震える身体で、そう思っていると…
ふわっ
(え?)
「すごく震えているけど、大丈夫?」
身体が温かさに包み込まれると同時に、タルタリヤが声をかけてくれた。
(温かい…)
「ケープコートなんだけど、良かったら使ってよ。」
「あ、ありがとう…。」
ニコッ
「どういたしまして。寒さに震えている子はほっとけないからさ。」
タルタリヤが言うように、全体に包まれながら、特に胸元辺りにかけて二重になっている構造からケープコートをかけてくれたことが分かった。真っ白なケープコートによる温かさに安堵の息を吐いた空がお礼を言えば、お返しの言葉をもらった。
「ほら、頭までちゃんと被って?」
スッ
ポフッ
「わっ、ここまでするか…?」
フードを被せられたことに驚いた空は、嬉しい気持ちになりながらも疑問符を投げかけた。
「だって、寒さで耳が真っ赤だったよ?」
「!!」
バッ
「だから、ちゃんと被ってね。」
「…分かった。」
タルタリヤの言葉に、反射的に耳を隠した空は、そこまで真っ赤な耳をしていたことに加えて、続けられた言葉に対して、まるで、自分が少々聞き分けの悪い幼い子どものように感じて、恥ずかしくなって顔を伏せてしまうのだった。
(それにしても、よく似合っているな〜)
恥ずかしいのか、顔を伏せた空を見ながら、タルタリヤは達成感に満ちていた。
彼の真の狙い…。
それは、うさ耳付きのフードのケープコートを空に被せることだった。
時折届く故郷の家族からの荷物の中に、誤って混ざっていた妹のトーニャのケープコート…。
しばらく預かることになって、途方に暮れていた時に、ドラゴンスパインで樹氷を見に行かないか、と空から誘いを受けてから、あることを閃いたのだ。
折角の機会だから、空に着せてから被せてみよう、と…。
預かることにはなっているものの身長が伸びるのが早いトーニャのことなので、恐らくタルタリヤが送る時にはサイズが合わなくなっているだろう、と言う考えに至ったのだ。
(空、めちゃくちゃ似合ってるな…)
そして、案の定、いや、想像していた以上に、可愛らしく、そして、似合いすぎることに、タルタリヤは込み上げそうになる笑いを堪える。
「?? どうしたんだよ??」
「うん? なんでもないよ。」
「そうか…。」
首を傾げると同時に、フードのうさ耳が揺れる。
その様子が、注意深く辺りを見回す子うさぎのようで、タルタリヤはますます笑みを深くする。そんな彼の真意に、温かさに包まれている空は見抜けなかった。
その後、樹氷をひとしきり堪能した後、ふと湖面に映る姿を見た空は、タルタリヤの笑みの意味を理解して猛抗議したという。
-END-