【タル空】別に、羨ましくなんか…
太郎丸を可愛がるタルタリヤを見て、太郎丸を羨ましがる空くんのお話です。
何となく以前書いたこちらのお話
https://note.com/famous_minnow879/n/n265ad7a844e2
の対になるような感じですが、このお話単体でも読めると思います。
参考資料
・【原神】OST selection 不羈奔放な客
タルタリヤが木漏茶屋にいるワンシーン
木漏茶屋にて。
ワンッ!
「おっ! 太郎丸、何かな??」
ナデナデ
ワフッ、ワンッ
ブンブンブン
「あはははっ! 俺がいることがそんなに嬉しいのかな??」
ナデナデ
ふわふわ、もこもことした尻尾を揺らして、元気な鳴き声を上げる太郎丸をタルタリヤは快活な笑い声を上げながら触れ合っていた。彼の左手で頭を撫でられている太郎丸は、余程嬉しいのか、尻尾をぶんぶんと揺らしている。
「………。」
ジィ…
そんなタルタリヤと太郎丸の様子を見ていて、普段の彼の大型犬を彷彿とさせる人懐っこさも相まって何だか太郎丸と似ているような気がして、空は微笑ましく見守っていた。
だが、その反面、仲睦まじそうな太郎丸とのやり取りに、ほんの少しだけ、本当に、ほんの少しだけ羨ましいような気持ちを抱きながら空は眺めていた。その気持ちが表れているのか、いつの間にか、じっとりと見るような目になっているような気がした。
(いつの間にか太郎丸と仲良くなったんだ………)
きっかけは、空が久々に木漏茶屋に寄ったことだ。
来てみると、太郎丸の他に先客としてタルタリヤが来ているのが視界に入り込んできた。
話を聞いてみると、以前、稲妻に寄った時に、この木漏茶屋に来たことがあったらしくそこで太郎丸と面識になったらしい。
(俺の方が、太郎丸と先に知り合ったのに…)
ピタッ
「? 空、どうしたの??」
クゥン?
ギクッ
「えっ?! べ、別に何でもないが??」
「そう?」
すっかり思考に没頭していた空は、言葉を発さないのを気にかけて太郎丸の頭を撫でる手を止めたタルタリヤと首を傾げる太郎丸に対して、慌てて返答する。
(こっちの気も知らないで…!!)
バッ
「こっちおいで〜、太郎丸〜。」
ワンッ!
タタッ
「あっ…。」
何だか指摘されたことが悔しくなってきた空は、両手を広げて太郎丸を呼んだ。それに反応した太郎丸は元気よく鳴いてから、空の方へ駆け寄った。
ギュッ
「俺の方が太郎丸と仲良いからな!」
クゥン?
名残惜しそうな声を上げるタルタリヤに、些かの罪悪感を覚えながら、太郎丸を抱き込んだ空は、(太郎丸が驚かないように)ややボリュームを下げて叫んだ。それに、太郎丸は首を傾げた。
クスッ
「そうだね。空の方が先に知り合ったんだし…。取っちゃったみたいでごめんね?」
ナデナデ
ナデナデ
一瞬、キョトンとした顔をした後に、笑みを溢したタルタリヤは、そう言いながら、空と太郎丸の頭を撫でる。
左手は、先程太郎丸を撫でた時と同じように。
そして、右手は、空の柔らかな金髪を優しく梳くようにしながら撫でている。
太郎丸、それに太郎丸を抱き込んだ空。
そのツーショットがとても愛らしく映ったからだ。
「なっ、撫でるなよ!!」
「え〜? だって、もふもふしていたら撫でたいでしょ〜??」
ニヤニヤ
「俺は動物じゃない!!」
ワフゥ…
急に撫でられたことに、抗議しながらもまんざらでも無さそうな空とますます笑みを深くするタルタリヤ、それに、タルタリヤの絶妙な力加減によって撫でられていることが気持ちいいのか、嬉しそうに顔を綻ばせる太郎丸の姿があったという。
-END-