建築家様、お疲れ様です
学院祭トーナメント終了から数日後のカーヴェの話です。
カーヴェ独自の超絶短めなお話です。
・後日談のような感じで書いたので、そこまでネタバレはないと思います。
・強いて言えば、イベントムービーの才識の冠争奪戦あたりの部分を参考にした箇所があります。
(歴代イベントムービーでも、1番好きなムービーです…!!←本音ダダ漏れ)
・教令院の学生達及びメラックの機能拡大解釈気味
参考資料
・テーマイベント 盛典と慧業
・ストーリームービー「栄冠」
アルハイゼンの自宅にて。
「つ、疲れた………。」
ドサッ
リビングにあるベッドを兼ね備えたような長いソファにカーヴェは倒れ込んだ。
只今スメールにて開催中の学院祭トーナメントにおいて、チャンピオンの称号を得ることができた影響もあってか、カーヴェは、スメールシティにて、一躍"時の人"となっているのだ。
ふぅ…
「だからって、あんなに押しかけなくてもいいじゃないか…。」
ため息混じりにカーヴェがそう言うのも無理はない。
元々のカーヴェ自身の知名度に加えて、トーナメントのチャンピオンになったから取材をさせて欲しい、と教令院内で作成されている学生新聞を作成している学生の為に、インタビューを受けたりしていたのだ。
特別評論員として、旅人である空やパイモンが、試合中に記録した写真の出来の良さから、学生達が興味を持ったことも理由のひとつである。
その他にも、街を歩くだけで、声を掛けられることもしばしばあった。中には、サインを求められたりもした。しかし、教令院に現在のカーヴェの居場所を知られることを避けたく、必然的に目立つことを良しとしないカーヴェにとっては、疲労も蓄積されていたことも相まって、かなりのストレスとなっていた。
そんな時には、断りをいれれば良いだけの話ではあるが、行き過ぎた思いやりの心を持つが故にお人好し気質であるカーヴェの性格上、それを拒むのは良くないと思って、受け答えなどを出来る限り対応したのだ(むしろ全てに答えられなかったことを気に病んでいるほどである)。
それも相まって、結果として、疲れてへとへととなってしまい、現在、こうしてソファに突っ伏している状態なのである。
(ただでさえ、気持ちの整理がついていないのに…)
学院祭全体を通して、様々な事実を知ったカーヴェは、あまりの忙しさにら気持ちの整理をつける余裕すら無かったことを改めて認識した。今日はもう何もせずにこのまま寝込んでしまいたいほどだ。
ピポッ?
クルッ
「あぁ、何でもないよ。メラックもお疲れ様。」
ピピッ、ポッ!!
そんな中、心配そうに声を掛けるメラックへと振り返って、何でもないようにカーヴェは声を掛けた。その声は、不思議と声が弾んでいた。メラックも、カーヴェが話しかけたことに、嬉しそうな声(と、電子音に似たこの音をカーヴェはそう捉えている)を出して、反応をした。
スクッ
「そういえば、地面を転がっていたよね? 今すぐにでもメンテナンスを…。」
スッ
最終試合の時、才識の冠をメラックのスキャンによって引き寄せて掴んだ瞬間に、何故か風が巻き起こって盛大に地面に転がり込んだのだ(尚、それが"笠っち"こと、放浪者が仕組んだことだということは、カーヴェは気付いていない)。その際、メラックも同様に転がり込んだのが見えた。
メンテナンスをしなければ、と思いながらも、ここ数日は出来ていなかったことを、今しがた思い出して、立ち上がったカーヴェは手を伸ばす。
だが…
ギョッ!
フォンッ!
スカッ
「えっ? メラック??」
何だか、目を丸くした(ように隙間から見える顔がそう見えた)メラックは、いきなり消えて、カーヴェの手から逃れる。当然、カーヴェの手はメラックに触れることなく宙を掴むことになった。
フォンッ
グイ、グイ
「わっ!? どうしたんだ、突然??!!」
そして、再び現れたかと思えば、何故かカーヴェの後ろに回り込んで、背中をぐいぐいと押してくる。驚いたのカーヴェはメラックに語りかけるのだが、依然として押してくる。
しかし、目の前にあるソファを見て、すぐに合点がいった。
「もしかして、僕に休め、と言いたいの??」
ニコッ
ピピポッ!
カーヴェの問いに、メラックは"それが言いたかった!"と言われんばかりに笑顔になって返事をした。どうやら、カーヴェが休むことを最優先事項としているようだ(つくづくまるで生きているように行動するメラックが不思議だと思うカーヴェである)。
「そこまで言うなら、分かったよ。」
スッ…
ピポッ!
フォ……ン………
パチン…
メラックに言われるまでとは、と考え直したカーヴェは、メンテナンスを明日にすることにして、ソファへと横になった。カーヴェの返事に満足したのか、メラックはひと声上げると、部屋のスイッチをスキャンした後に、明かりを消した。
(本当に………、器用だな…………)
スゥ…
その音を最後に、眠気に抗えずにすぐに寝息をたてるカーヴェは、次第に深い眠りにつくのだった。
翌朝。
目覚めたカーヴェは、見慣れた深緑色のコートが毛布のように掛けられていたのが、真っ先に視界に飛び込んだという。
-END-