【タル空】彼がその場所を気に入っている理由
海灯祭期間中のタルタリヤと空くんのお話です。
参考資料
・タルタリヤ チュートリアル動画
動画後半の走っていく空くんを見守るシーン
璃月港にて。
タルタリヤは、とある場所に留まって海灯祭仕様の煌びやかに彩られた街並みを観察していた。
それは…
瑠璃亭の屋根である。
より正確に言えば、北国銀行へ通じる通路やその側にある屏風がある休憩場所がよく見える屋根が連なる場所である。
不思議なことに、タルタリヤにとってこの場所は、璃月港の中でも特に落ち着く場所のひとつになっているのである。
(ここなら、街並みをよく観察できるからね…)
埠頭付近に通じる道と大通りが見渡せるこの位置は、海灯祭中の期間ということもあって、賑わう人々をよく見ることができる。
それに、意外にも誰にも見つからず心地いい空気を堪能できる。だからこうして右膝を折り曲げて、左脚は投げ出す、という半分あぐらをかくような姿勢でくつろげるのだ。
まさに、タルタリヤにとって落ち着けるお気に入りの場所になっている。
それに、タルタリヤが気に入っている明確な理由としては、もうひとつある。
それは…
(……って、あれは…?)
ふと、視界を下に向ければ、キョロキョロと辺りを見渡す黒を基調とした異国の服装を纏う少年の姿が目に映った。首を横に降る度に、三つ編みにした長い金髪がしっぽのように揺れて、陽光を受けて煌めいていた。
まさに、今しがたタルタリヤが思い浮かべていた旅人の少年、空である。
(空…、何してるんだろう…?)
よく見ると、パイモンの姿がない。おおかた、あちこちにある海灯祭でしか見られない出店に目移りしている間に、空からはぐれたのだろう。食べ物のことになると目を輝かせるあの不思議な生き物のことを考えれば、想像に難くない。
(こっちに気付くかな…)
そんな空の様子を見ながら、タルタリヤは続けてジッと観察する。それは、送仙儀式の為にあちこちを駆け回る空を観察していた時を彷彿とさせた。
あの時は、岩王帝君に関する調査を含めた任務を受けていた為に、対して気にしてはいなかった。この場所に来ていたのも、走り回る空を観察できるのに適した場所として、来ていたに過ぎなかった。
だが、懸命な空の姿をよく観察できるのに適していると知って以来、タルタリヤにとって、ここがお気に入りの場所となっているのだ。
(そんなすぐには気付かないかな…)
折り曲げた右膝に、右手を乗せて頬杖をつきながらタルタリヤは息を吐く。そう簡単に見つからない場所に、流石の空でも見つけて気付いてくれるとは思わなかったし、半信半疑だったからだ。
だが…、
タルタリヤの願いに応えるかのように、ゆっくりと、空がこちらに…、それも、上の方へと向かって振り向くのが見えた。
(えっ………)
ドクッ
一瞬、本当に気付いたのかと驚いたタルタリヤであったが、相変わらずキョロキョロしている空を見て、すぐに、気のせいか、と自分が勘違いをしていた、と思う、とこれであった。
しかし…
その瞬間、今度こそ、空の大きな琥珀色の瞳が、こちらを、タルタリヤの深い青の瞳を見据えた。
琥珀と深い青。
両の瞳が重なり合った後に。
1秒、
2秒、
3秒。
その瞬間、驚いた表情になった空が駆け出していく。どうやら、本当にこちらに気付いて向かってくるようだ。旅人として、街の地理を把握し切っている空は、すぐにタルタリヤがどこに居るのかに気付いて、向かってくるらしい。
「はははっ。空、やっぱり君は最高だよ…!!」
気付いてくれたこと。
目が合ったこと。
そして、真っ先に向かって来ていること。
空の起こす全ての行動が嬉しくて、笑みを溢すタルタリヤであった。
-END-