ありがとう、偉大で素敵な占星術師様

モナ、誕生日おめでとう!!(書いた当時)
その記念を込めてのSSです。

金リンゴ群島の休暇中、モナがスカラマシュの正体を見破って助けられた時のことについて空くんが改めてお礼を言う話です。

・モナの占星術に関する考え方、参考にしながらも半分は自己解釈
・その他諸々自己解釈100%超え気味

参考資料
・モナ キャラストーリー及び伝説任務
・帰らぬ熄星 スカラマシュ関連
・華やぐ紫苑の庭 雷電五箇伝関連
・サマータイムオデッセイ

※初出 2022年8月31日 pixiv


金リンゴ群島、ハラハラ島にて。

占星術師たるモナの心情をかたどったこの場所は、幻想的な星空を始めとした星々をモチーフした箇所が至る所に散りばめられてい。随所随所に星を煌めかせているその様は、まるで流星群として流れてきた星達が、何らかの要因でひっくり返した瓶から出てきた金平糖のように島全体を彩っている。

そんなハラハラ島の剥き出しになった塔にて、長い金髪にした旅人の少年、空と隣にいるとんがり帽子の合間から出たツインテールが特徴的な占星術師の少女、モナは話し込んでいた。

「なるほど…。稲妻でそんなことがあったんですね。」

「そうだったんだよ。」

「まさか、あのスカラマシュが関わっているとは…。」

空の話を聞き終わったモナは、神妙な顔つきで胸元辺りで軽く腕を組んで考え込むような仕草をした。

空が話したこと。

それは容彩祭で知った"散兵"、スカラマシュが過去の稲妻で行った所業のことであった。

当時、雷電五箇伝を絶えさせようと暗躍した彼の行い…。それは、関わっていた者達の子孫にあたる万葉や社奉行たる綾華、綾人にまで影響を及ぼしていたことを知った。同時に、それほどまでにスカラマシュの実力は計り知れないものだと知らしめた。

レーナルトの命ノ星座に関わる騒動で彼に出くわした時から、危険な人物であることを読み取っていたモナであるが、きちんと占ったわけではないので、詳細は今しがた空から聞いたことで改めて知ったのだ。

だが、モナには疑問が残る。それは…、

「ですが、そんな重要な話を私に話していいんですか??」

今回同行している万葉の家系に関わる…、それもかなり深い部分に関わるとても重要なことを、自分に話していいのか、ということであった。スカラマシュには多少なりとも因縁があるとはいえ、万葉とはまだ知り合って間もない。だからこそ、そんな重要な話を聞いてもいいのか、と話を聞いている間に多少なりとも後ろめたさを感じていた。

だが、そんなモナの不安を取り去るように、大丈夫!と空は告げた。

「容彩祭の後に、万葉は勿論、綾華と綾人にも許可は取ってるから!!」

「そう、なんですか…。」

どうやら、前もって許可は取っていたらしい。それも、容彩祭でスカラマシュのことを聞いた直後だという。わざわざそこまでして、自分に知らせるのは、何か意図があるのだろうか。

「それに…、ありがとう。モナ。」

「な、何ですか?? いきなり…。」

長年の占星術師の経験からモナが勘繰っていると、突然、空が礼を告げた。あまりにも急に言われたものなので、モナは素っ頓狂な声を挙げてしまう。自分は何かお礼を言われるようなことをしたのだろうか。

困惑するモナを置いて、空はさらに話し続ける。その表情は、先程、礼を告げた時のようにとても穏やかなものだ。

「だって、あの時モナが動いてくれなかったら、今こうして話せていなかったと思うんだ…。」

「え…?」

「多分、フィッシュルも、そう思っているはずだよ。」

空が言っているのは、件のレーナルトの命ノ星座に関わる騒動の時のことだ。

親しげにこちらへ歩いてくるスカラマシュから良からぬ気配を感じ取ったモナは、正体を知らない空とフィッシュルの手を引いて、その場から退散したのだ。

「あれは、咄嗟に出た行動なだけで…。」

「うん。モナにとっては何ともないことだろうけど、それでも、どうしても伝えたかったんだ。」

ますます困惑するモナは言葉を紡ぐが、空は気にせずに優しく微笑みながら言葉を紡いだ。

空の言っていることは、心からの言葉だった。モナからすれば、何てことはないことだろう。だが、容彩祭で、スカラマシュの話を聞いてから、ずっとモナにお礼を伝えたいと思っていたのだ。

もし、あの時、モナが機転を利かせなければ、空は勿論のこと、フィッシュルだってここにはいなかっただろう。

それは、もしかしたら、あの時以降、空がこれから訪れるはずだった場所やこれから出会うはずだった人達…。モナがいなければ、もしかしたら、それは叶わないものになっていたのかもしれないのだ。

そう考えると、ますますモナにお礼を言いたくなった。だが、機会がなかなか合わずにいたところに、今回の休暇のことを聞いて、密かに機会を伺っていたのだ。

「人の未来を守るなんて、モナは、本当に"偉大"な占星術師だと、俺は思ってる。」

「!!」

「だから、改めて…、

ありがとう、モナ。」

「………。」

空が改めて言った礼の言葉に、モナは驚きに目を見開いた後、放心して無言になってしまった。

(これは、心からの感謝の言葉です…)

空から聞いたお礼の言葉…。

それが嘘偽りがない本心からの言葉だと、占星術師たる直感で感じ取ったモナは、胸にじんわりと広がる暖かさに困惑していた。何故なら…

占星術師となった日から、ここまでは感謝されたことは、恐らく初めてのことだったからだ。

占星術師となってからは、星に見放されてしまわぬよう自分自身は勿論のこと、占星術による結果を求めてきた者達にも、正直に、嘘をつかずに、占い結果を伝えてきた。

自らが導き出した結論を否定するのは、占星術を冒涜するのと同じことだ。その為には、修行の一環として質素な生活を送ることも苦ではなかった。

だが、内心では、どこか虚しさを感じていたことも事実である。

求めてきたことに正直に応えただけなのに、何故怒るのだろうか?

いい結果ばかり気にして、悪い結果には見ないふりをするのは何故だろうか?

そんなことをしては、星に見放されてしまうのに…。

だが、いくら事実を伝えても、相手が認めないのでは意味がない。こちらが学問として真剣に取り組んでいるのに対して、程度はあれど、求めてきた相手は娯楽のように思っている節があった。

だからこそ、自分自身は誰よりも占星術に対して、正直にならなければならない。そう、モナは自分自身に誓った。

それが、占星術を志す者として当然のことだと言い聞かせながら…。

(それを、あなたは、いとも簡単に…)

だからこそモナは困惑していた。彼女が無意識に求めていたこと、それは、占星術に関することで感謝されることだ。

それをさらりと成し遂げた空に、モナは何とも言えない感情を感じ取っていた。

「? モナ??」

ハッ
「そ、そうでしょう!! 私は天才ですから、当然のことです!!」

黙り込んでしまったモナを心配した空は、心配そうに尋ねた。それに、モナは慌てて常套句を口にして得意げに答えた。

モナが自身で"天才"というのも、占星術師の修行の一環である。占星術に関してであれば、誰よりも優れている、そう誰かが言う以上に、自分が"天才だ"と言うことでより占星術の教えに従おうとするモナの敬意の表れでもある。

しかし、自分で自分を優れている、と振る舞うのは少なからず周囲に疎まれる要因になる。だが、モナはそれに屈せず"事実ですから"という振る舞いをすることで、跳ね除けてきた。

だが…

「うん。モナは凄いよ!!」

「そうでしょうそうでしょう! も、もっと褒めてくれてもいいんです、よ…。」

「モナ凄い! 偉い!! 大天才!!!」

空の曇りなき瞳による賞賛の言葉は、今のモナにとっては、少々くすぐったい。それを跳ね除けようと、もっと言ってもいいよ?と催促するように言っても普通の人であれば呆れるところだ。だが、空は迷いなくどんどん褒めちぎる。

あまりにも褒められるので、モナは次第に…

「……〜〜っ! も、もう!! 分かりましたから…!!」
ガバッ

賞賛の言葉に耐えきれなくなったモナは、帽子のつばを引っ張って顔を隠してしまう。気休めにしかならないが、少しでも空の顔を遮る為である。

(………この気持ちは認めます)

占星術、強いては星々に対して正直でいる姿勢を貫いてきたモナであるが、この時ばかりは強く祈りを込めた。それは…

(ですが………、

どうか、今だけは隠すことを許してください…)

モナの欲しかった言葉を告げた空への嬉しさと同時に湧き上がるむず痒さ。

それに、心地よさを感じている自身の気持ち。

そして、それらの気持ちを認めながらも、何とか悟らせないようにして隠していること。

帽子を引っ張りながら、今この瞬間だけは、隠すことに許しを乞うように、星々へ強く祈るモナであった。

(顔を出すまで、様子見しよう…)

一瞬、モナの突然の行動に戸惑って手を伸ばしかける空だが、耳が真っ赤なのが丸見えであった。今回の冒険で発見した彼女の照れ隠しの癖である。そんな彼女の気持ちを考慮して手を降ろすのだった。

その後、帽子に隠れてしまったモナが顔を出すまで星空を見上げる空であった。

-END-


あとがき

モナに感謝を伝える気持ちで書きました!!

"帰らぬ熄星"で、何食わぬ顔で来たスカラマシュの正体に気づいたモナが、機転を効かせなかったら…。そう思うと鳥肌が立ちますし、何より感謝の気持ちが抑えきれなかったです…!!

本当は、容彩祭で雷電五箇伝についての話を聞いてからなんとなく思いついていたのですが、なかなかタイミングが掴めずにいました…。

そこで金リンゴ群島のイベントストーリーを読んでここだ!と思って、筆が走っていました!!

モナは、その優れた占星術で以って、(恐らく全キャラ最速で)空くんをこの世界の人間ではないと見抜き、尚且つ協力してくれる、という寄り添ってくれるキャラです。

尚且つ、星をテーマ、イメージに据えている原神の世界観の代表的キャラとも言える、と個人的に思っているので、ある意味で原神を体現しているキャラだと解釈しています。

改めてモナのプロフィールや今回のイベントストーリーを振り返ると、占星術師となった日から、嘘をつけなくなり、自身が天才であり偉大であることも真実であるから、淀みなく伝えています。

しかし、いくら事実でも、優れていることを堂々と言うのは、少なからず疎まれてしまうこともあると思います。モナは、これも占星術師には必要なことだから…、とそうしたことも跳ね除けながら修行をしていたのだと思います。

だからこそ裏表のない真実を告げる人が必要なのではないか、と思い今回のお話を思いつきました!!

あと、あまりにも褒められすぎて、表面に出さないようにしながら照れちゃうモナが可愛すぎたので書いていて楽しかったです!!

…というか、稲妻編後のスカラマシュが、船の下を蠢く大きな魚の影のように、ゆらり、ゆらりと水面下で着々と準備を進めてる感が怖いんですけど、今後はどうなっていくのか、また、空くんは勿論のこと、モナとの因縁もどうなるのか目が離せないですね!

長くなりましたが、ここまで読んで頂きありがとうございます!

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