【バイオ炭クレジット】コストのあれこれ
2023年10月11日、東京証券取引所においてカーボン・クレジット市場が開設され、売買がついにスタートしました。
10月20日時点で1万t-CO2の取引があり、参加者は200社を超えたそうです。
既に日本国内でもカーボンクレジットの売買は行われていましたが、ここから更にどの程度の企業や自治体の参画が増えてくるのか、森林や再エネなどの取り扱い項目が1日でどの程度取引されるのか、またどの程度の価格で取引されていくのか、といった動向が気になるところです。
カーボンクレジットの種類でいくと、最近ではバイオ炭や水田由来のメタンガス削減プロジェクトが注目を集めているように思います。
バイオ炭は既に一般社団法人 日本クルベジ協会が「バイオ炭J-クレジット取得プログラム」を開始しており、報道によると約5万円 / t-CO2で取引がされているようです。
取引価格だけで見ると、これまでのカーボンクレジット市場の中では高い部類に入るのではないかと思います。
ただ製炭の場合、販売側はそもそもクレジットの販売をスタートさせるまでの間にかなりの労力とコスト、時間をかけているという事実もあります。
そういった諸々のコストを踏まえると、一概に高いと言えないのかもしれません。
アメリカのNPO法人Verra(ベラ)は独自のカーボンクレジット市場でボランタリークレジットを取り扱っていますが、少し調べただけでも最低限、以下の項目で費用がかかってきます(日本国内で有名なJ-クレジットも項目自体はVerraと大きく変わらないのではないかと思います)。
➀ クレジット取引専用口座の開設費(500米ドル/アカウント)
➁ クレジット取引専用口座の維持費(500米ドル/アカウント・年間)
➂ プロジェクト登録申請・審査費用(2,500米ドル/プロジェクト)
(なお、プロジェクトが却下された場合やプロジェクト要請が拒否された場合でも返金はされないようです。。。)
④ 承認後のVCU発行税(0.20米ドル/VCU)
➄ 検証/確認機関への年間費(5,000米ドル/プログラム)
※2023年8月時点での費用
Verraは国際的な規格・標準化機関でありグリーンウォッシュにならないようにかなり厳しく審査をしている機関なので、どうしてもその分コストがかかってきてしまうのではないかと思いますが、利益を出すには、その分、多くのCO2排出量を削減する必要があります。逆にいうと、ロットをそろえることができない場合は厳しいな・・・。
と思いました。
ただ、Verraのように認証から販売までを一気通貫で行っている機関もあれば、認証のみ、販売のみを行っている機関もありますので、自組織の状況にあったオプションを組み合わせることが重要になってきます。
なので、クレジット事業を始める際には是非、クレジット機関の情報を色々と収集して、その中から選択して貰えたらと思います。
価格だけで見るのか、その認証機関の国際的な立ち位置も気にしながら選ぶのか、など優先順位も決めていく必要があります。
それこそバイオ炭しかクレジット販売しないよ、という企業はバイオ炭専門の認証機関であるEBC(European Biochar Certificate:欧州バイオ炭認証)に認証をお願いして、市場は任意の市場を選んでいくという方法もありえるかと思います。
※Carbon FutureというマーケットプレイスがEBC認証を受けたクレジットの売買を行っているようですが、EBC自体は汎用的な認証制度であるため、必ずしもCarbon Futureを通さなくても取引が可能になっているようです。
なので、クレジットを購入する側の負担にならないような金額で、かつ企業としても赤字にならないようなラインがどこなのかを考えながらそれぞれにとって良い形で売買が行われていくと良いなぁと思います。
何ともまとまりのない話になってしまいましたが、今回は主にバイオ炭関連のクレジット開始までの費用についてつらつらと書いてみました。
上記は、私が調べた範囲での認識ですので、もしかしたら間違っている/情報が遅れている(変更がされている)部分もあるかもしれません。
お気づきの点がございましたら、ご教示ください。
それでは、お付き合いいただきましてありがとうございました。