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不登校の連鎖
兄弟が不登校児でも、頑張って学校に行っている人もいるだろう。
しかし、家庭内の環境が他の兄弟に与える少なくない影響を無視することはできるのだろうか?
家庭内不和
私の家は、無関心な父親と過干渉気味な母親というこれまた典型的な不登校児家庭の要素を持っていた。
そして、私よりもずっと先に不登校になって部屋に籠もりきりの兄がいた。
家の中は、いつも見えない緊張感に包まれていた。
兄の存在を友達や周囲の人に相談できず、学校で兄弟の話題になったり兄と同学年の知り合いに会うと、何か聞かれるのではないかと内心怯え、何故か私が後ろめたい気持ちになった。
学校では上手く馴染めなくて、家でも心が休まらないので、「居場所」が欲しいと切実に思っていた。
誰かに自分だけを見てほしかった。
「あんたまで行かなくなるの?」
寝ても気力が回復せず学校に行くのが辛くなっても、死んだようにただ家と学校を往復する毎日を繰り返していた。
それでもしんどさが積み重なり、たまに休んだりした。
その時は「開放感」に満ち溢れたが、夜には明日のことを考えて眠れなくなり、次の日学校に行く心理的ハードルが高くなっていった。
自分がいてもいなくても学校は回っている、クラスで休んだ分を見せてもらう人がいない、自分は忘れ去られてる、と休んだことによる罪悪感に延々と悩み込んだ。
私が環境に流されやすい性質なのも相まって、「学校に行かない」という選択肢を身近で知ってしまった後で、それでも頑張って学校に行くという道を選ぶことができなかった。
こうして、不登校は連鎖してしまったのだった。
あのときしてほしかったこと
自分だけは絶対に学校に行かなきゃ、と思っていたのにどうしてこうなってしまったんだろうか。
兄が引きこもってしばらくしたとき、母親は私と兄を会話させれば何かが変わると考えたのか、私から話しかけるように頼み込んだ。
しかし、それが私を精神的に追い詰めた。
いつの間にか兄は、昔知っていた頃の姿ではなく得体のしれない何かになっていたため、とても会話ができるような状態ではなかった。
それに、何が地雷になるのかすらも分からなかったし、良好な仲では決してなかった。
私は、なんとかその役割を背負い込もうとした。
だがそれは上手くいかず、眠っていた兄に対する辛かった思い出を蘇らせ、ただ私を苦しめただけだった。
私は家のしがらみから逃れたかったが、家に縛られてしまい、結局は居心地の悪い家に引きこもることになってしまったのだった。