詩 「翳らない部屋」

息を吐く、黒い雲ができる
球体は楕円になって
あらぬ方へと飛んでいっちゃって

洋梨みたいだと笑ったよ
少女からテディベアを奪う鉄風
あれに皮をむかれてしまう、と 

宙のあかぎれ 強き光を投げる
ばたつかせても前にすすまない
足は絡まり互いの悪口を言い出して

「あれはUFOか?」
指したゆびが折れまがり
こもれびの安寧はいつも一瞬で

あたたかな土曜午後の訃報
惰性で口に突っ込んだたらこパスタ
喉に引っかかり水で流す
結構簡単にしんでしまうよ

窓にセロファン、赤に断たれる肌
寝取った日 夜の長いことよ
君がたてがみを揺らして文字をむさぼる

扉がひらくそこには誰もいなくて
閉めるするとまた開いてまたいなくて
ペットをなでる手が充血して
嗚呼、もう程近い





☆本作、日本現代詩人会の詩投稿欄にて、浜江順子さんに入選作として選んでいただきました。誠にありがとうございます。

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