「その50分」に愛を込めて
ここ2週間、感想を書こう書こうと思い続け、
悶々としすぎてなかなか纏まりませんでした…
(生徒講評委員とかもしたこと無いし…)
それくらい「その50分」は色々なことを考えさせられた作品でした。
これはよしだあきひろ先生、城東高校演劇の皆さんへのラブレターです…(あまりにもメンヘラで粘着質な……)
少し長いかもしれませんが……
読んで下さると嬉しい限りです!!!!!!
では本題に。
僕は「その50分」観劇までに
よしだあきひろ先生作品は
「21人いる!」を昨年の青春舞台で、
「非線形ゴミ捨て・ベータ版」を配信で、
「スパゲッティ・フィケーション」
「意外とゆっくり飛んでいる」を脚本で、
観たり読んだりしてきました。
その中で総じて感じてきたのが
「物語全体に漂う不条理感」です。
初めてよしだ先生作品に触れた時、
「これがリアルタイムな不条理劇かぁ〜
(一回観ただけじゃ理解しきらないし〜)」
と足りない頭でぼんやり思ってたんですけど。
なんならちょっと前まで。
でも今回の最優秀賞作品「その50分」を観て、
「本当にそんな言葉で片付けていいのか…」
と思うようになりました。
生で観てるわけじゃ無いけど、
「このまま客席で傍観してていいのか…」と。
ただただ不安になっちゃった。
もはや恐ろしい。
そんな今作品でした。
では、細かく。
あ、未鑑賞かつ今後見る機会が無いかもしれない人のために荒いあらすじを。
城東高校「その50分」
何故か客席を通して舞台に上がる生徒、アイリンの挨拶で幕が上がる。授業をサボって遅れて学校に来たみたい。授業が始まり、後半は体育祭と文化祭準備で教室から廊下に生徒が出てくる。
話は進み、教室内の体育祭派閥と廊下の文化祭派閥の対立が深まる。廊下で勉強を教えてた女子生徒はまるで文化祭派閥のデマゴーグ、体育祭派閥のリーダーがダンスの指導をする姿はまるで軍隊。ようやく教室は奪い返されるが、その一部始終アイリンの声は何故だかみんなに届かない。
そして50分の授業が終わる。
集会のために廊下に出た生徒は、アイリンの制止もあえなく、持っていた風船が破裂して皆死んでしまう…
その後、アイリンの独白で彼女の空想だったことが分かる。どっちの派閥も居心地が悪かった彼女はふと授業をサボった。
そしてなんとなく遅れて学校に行くと、クラスメイトたちが廊下で死んでいる。
そんな凄惨な状況下、アイリンは「もし私が1時間早く学校に行っていたら」とエンドレスなイメージの世界に入り込む。
最後はメタ的なアクションが入り、また彼女は独りぼっちになり、幕は閉じる。
ふと、以前アメリカの高校で起こった銃乱射事件の事を思い出しました。
あのニュースを聞いて、
「日本は銃社会じゃ無くてよかったね」と言う人がいるならそれは思い違いも甚だしいなと。
この情勢下、いつ誰がアイリンと同じ目に遭ってもおかしくない。
日本に近い話題だと台湾有事の危険性、人為的なものでなければ南海トラフなどが挙げられると思う。
不審者が入ってきて〜、なんていう事もあり得ないことはない。
頭では、文字では分かっているけど、
僕たちは人が死ぬところを想像できない。
アイリンが空想を通して50分間を体験するように、僕らも日々テレビやネットを通して、
銃殺された軍人
爆撃された建物の瓦礫に挟まれた子供
通り魔が所持していた出刃包丁の長さ
不発弾の爆発が2分前だったら…
そんな惨状をただの言葉の羅列として飲み込む。
クラスメイトたちは風船の破裂という、ある意味ファンシーな死を遂げる。
アイリンはそれ以上の死を思い浮かべる事ができないのかもしれない。
生徒の1人が騒いだ「ガザ地区のニュース」と相応なくらい、あっけなくあまりに浮世離れした方法で死んだのだ。
「その50分」は僕たち観客に、
希望や未来を提示する物語だと勝手に思っています。
確かにほぼクラスメイトが死んでるだなんてバッドエンドに程近いのかもしれないけど。
でも結局、この60分間でアイリンは
50分間の現実と
10分間の
「で、君はどうするの?」っていう投げかけをしてくれたと思えて仕方ないんです。
「想像し、創造し続ける力の大切さ」。
前作からこれっぽいテーマが根底にあったように思えました。
つまりは演劇そのもの。
彼女の空想を飛び出したクラスメイトは、
「ルール違反でもいいよ!生きてたら!」
という叫びを残して去ってゆく。
不条理は時に全てを許して包み込む希望になるのだと確信しました。
嗚咽しながらも教室に向かうアイリン。
もうそこには希望の光しかない。
ここまで駄文散文を書き連ねて、結局何を言いたいんだかぐちゃぐちゃになってしまいました…
でもこれだけは伝えさせてください。
この作品を生み出して下さったよしだあきひろ先生、この作品を成り立たせてくれた城東高校演劇部の皆さん、本当にありがとうございます。
部員の皆さんの素晴らしい演技で鮮やかに映えたあの群像は、普段の日常ではただのノイズ。
そのノイズが聞こえるうちが幸福であると、
改めて感じ、
ため息をつき、
また歩き出す活力になる作品でした。
「その50分」、
大好き!!!!!!!!!!!!!!!!