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【龍馬学園アニメ講座】ゲスト特別授業Vol.3★色彩設計のお仕事編~

こんにちは。スタジオエイトカラーズです。

2025年1月17日、今回の特別授業では、色彩設計をされている【のぼりはるこ】(以下、のぼり)さんが登場です!

昔と今で、色の数、塗り方は無限に広がりました。
アニメの色はどうやって決めて、どんなふうに塗っているのか。

制作されるアニメには、連載しているマンガをアニメ化することは珍しくありませんが『マンガの色』を『アニメの色』にしていく、その技はどういったものなのでしょうか。

この機会に、色彩設計について触れてみてください。


★のぼりさんってどんな人?


これまで数々のアニメ制作において、色彩設計や色指定検査を担当されてきました。
2007年、色彩設計・色指定検査・版権仕上げをメインとする【株式会社 緋和(ひより)】を設立。
そして、現在放送されている多数のアニメで、色彩設計を担当されています。

株式会社 緋和 ロゴ

アニメの仕事以外でも、のぼりさんの仕事内容は多岐にわたり、《FM西東京ラジオ》では、のぼりさんがパーソナリティを務める『ハルケンらぢお~どんぶらこ~』も放送中です。

ハルケンらぢお~どんぶらこ~

★色彩設計のお仕事とは?


アニメでの着彩は、キャラの個性や感情を表すなど、重要な役割を果たします。
アニメ制作において、色を決定するのは監督です。では、色彩設計の役割はどのようなものなのでしょうか。

例えば、監督が「ここを白で塗って欲しい」と言われた場合、その白はどんな白でしょうか。
白にも種類があり、涼しい印象の白、暖かみを感じる白と、いろんな白があります。そして、その雰囲気は、印象を強める白か、ふわりと優しく仕上がる白か。塗り方も様々です。
色彩設計は、監督と具体的な着彩について何度も話し合い決定しています。
しかし、監督がアニメの全ての色を決めているわけではないそうです。
主人公が身に着ける装飾や小物、パジャマの色や、モブと呼ばれるキャラの服装の色、部屋の中の本やぬいぐるみの色など、細かな部分は色彩設計が考えることもあるそうです。

色を見せながら選択している様子

★マンガの色を、アニメの色へ。


デジタルが普及していない『セルの時代』では、『セル』と呼ばれる透明な用紙に描かれた絵の裏に、500色の中から色を選択し、1枚1枚、色を塗っていたそうです。
デジタルが普及して以降、作業効率は上がったようですが、今の色は『無限』にあると言います。
では、その無限の色からは、どうやって色を決めているのでしょうか。

龍馬学園の生徒さんはマンガ学科。将来、マンガ家になりたい生徒さんの中には、自分の作品をアニメにしたいと考える方もいます。
マンガの世界の色を、アニメの世界で表現するのは簡単なことではないそうです。
原作者が考える色のイメージと、アニメで考える色のイメージは異なり、アニメは『キャラを色で区別しなければいけない』といいます。
アニメのグッズに、キャラのイメージカラーがありますが、そうした商品にも色は深く関わっています。
「マンガ家は自分の世界を作れるけれど、アニメは商業でなければいけない。沢山の人のオーダーに応えていかなければならない。」
作品の世界観を大切にするために、作品と向き合い、監督と折り合いをつけていくことが重要なのだと話してくれました。

夜へと『色変え』の作業をする様子

監督から指定された色で塗っていく過程で、その色が世界観に合わなくなることがあるそうです。
そんなときは『色を背景に合わせる』ことで、作品の世界観を活かせるのだそう。
アニメの世界に存在する色。色彩設計では『色変え』という作業が必要です。
天気、時間帯、 居場所、キャラの心情。シーンによって色を変え、コントラストを変え、彩度を変え。色の塩梅は、色彩設計が決める重要な役割です。

★塗りを実践!監督と作る色塗りの楽しさ

実演中の様子

原稿に色を付ける前に、まずは線の漏れがないかチェックします。
この『穴を塞ぐ』作業が、地味でも大事な作業です。

そして、塗るときはまず『影から』塗っていくのだそう。
塗り残しがないかどうかは『セル』を黒くして確認しています。

30分放送のアニメ(アニメ自体は20分)で、3,000枚~6,000枚。
多ければ12,000枚ほど描かれた絵を、1枚1枚、きっちり塗らなければアニメは完成しません。
この着彩作業を『仕上げ』と呼びますが、外部委託により、海外に流して彩色を済ませている会社は多く存在します。
早い人は、1枚を3分で塗ってしまうのだとか。
株式会社緋和では、みんなで塗っているのだそうですよ。

塗りには色の『トレス線(基準色、影色、ハイライトなどの区切り線)』と『実線(輪郭線など、仕上がりが黒い線)』があり、アニメは、この実線の色で印象が変わってくるのだそうです。

授業前半は、エイトカラーズで制作した『アニクリ祭』に登場する主人公を塗っていただきました。
そして次は、生徒さんが監督になって色を指定してもらい、その通りにのぼりさんが塗っていく中で、色の偏りや相性など、監督と一緒に話し合って色を変えていく実践作業が行われました。
主人公の雰囲気が、なんともかわいい女子高生に変身し、性格も180度変わった印象になり、大変面白い授業となりました。

生徒さん(監督)による色指定、着彩の実践

★生徒さんからの職業質問アンケート


授業後半は、生徒さんからの質問に答えていただきました。

生徒さんの中には、どんな色を選択すればいいのか悩む方がいます。
色を学ぶことによって、悩まず色を選択し、塗ることができるのではないかと期待がありました。
しかしのぼりさんは、色彩設計を知識として学ぶのは良い事だが、免許がないとできないことはなく、それが全てではない。と伝えます。
「色はあまり学ばなくていい。自分の個性を大切にして良い。」
「色は個性を出すお仕事なのだから、絶対に守らなければいけないものはない。」
「個性が育たなければ、いいものは作れない」
「自分がいいと思ったものがベスト、 自己主張を大切に。」と。

教室の中央で生徒さんの質問に答えるのぼりさん

★のぼりさんの代表作、『かくしごと』


のぼりさんは学生時代、毎日デッサンを描いていたといいます。
色は、どちらかと言えば苦手だったそうです。

あるとき、監督から連絡をもらい、のぼりさんはアニメ『かくしごと』の色彩設計に抜擢されます。
アニメ業界は人との繋がりによって仕事を任されることがあるそうですが、数々の作品に携わり、作業をこなしていくうちに、『かくしごと』の監督が、色彩設計にのぼりさんを選定したそうです。
「いいものつくって頑張っていれば、見つけてくれることもある。」
「逃げないこと、諦めないこと、 根性論。やり遂げることが大事!」
と、熱く語ってくれました。
1カット1カットをつくる楽しさ。濁った色も綺麗なんだと。塗りの楽しさも交えて、沢山のことを話してくれました。

授業中の風景

★生徒さんの未来に向けて


最後に、のぼりさんから生徒さんに向けてメッセージをいただきました。

『もの』をたくさん見てください。 遊んでください。
ライブや舞台を見たり、山や海に行って自然に触れることを、とにかく経験してください。 すべてが力になります。
自分の机の上で完結しないで。 パソコンの画面越しに見る映像と、実際に見たものは違うから。
感動を与えられる人にならなきゃいけない。 当たり前のようにそこに存在している、空の色さえ、いつも違っている。
なんとなく撮った写真を見たとき、これは高知の空だな。と思うことが大事だから。
今の世の中には、学校に通っていても夢がわからない子もいる。
絵を描きたいと思って、目標を持って学校に来ていることは素晴らしいこと。遊びながら成長して、夢があって、やりたいことがあることは、幸せなことです。
突き進んでください!

アニメ講座で着彩に使用した機材


いかがでしたでしょうか。のぼりさんのエールが溢れていましたね。
アニメの世界って、本当に深いなと気づかされます。

のぼりさん、生徒のみなさん、お疲れ様でした!

今後のエイトカラーズの活躍にも、どうぞご期待ください。

本記事を読んでくださり、ありがとうございました。



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